第71話 名前がわからない
月曜日。
涼はいつもと同じように登校の準備をした。
いつもと違うことといえば、髪型をセットして、間違えてかけた伊達メガネを外したことくらいだ。
(伊達メガネはもういらないな)
校門をくぐると、注目された。
球技大会の朝も注目されたがそれ以上に注目されている。
(うーん見られてるな。やっぱり倒れたからかな。脳震盪だもんな)
何事か口々に話しているようだが、残念ながら聞こえてこない。
仕方ないから、足早に教室に向かう涼だった。
教室に入ると、教室全体がざわついた。
(ここでもか。でも仕方ないかな。脳震盪効果だ)
席に行くと、奏がやってきた。
「おはよう涼君」
「おはよう奏。週末はありがとうな。本当に助かった」
「いいんだよそんなこと。それよりもすごい注目でしょ」
「ああ、脳震盪起こしたやつって、腫れ物みたいに見られるのかな」
「? 何言ってるの? まあ、脳震盪もあるかもしれないけど、一番の原因は涼君のイケメン具合と球技大会の活躍だよ」
「へ、そうなのか? 俺はてっきり、可哀想なやつを見る目だと思ってた」
「あのさあ、鏡見てる?」
「鏡は見てるよ。俺、まあまあイケてるよね」
「まあまあってレベルじゃないでしょ。後、この間の活躍は理解してる?」
「うん、俺バスケ結構上手いって分かったよ。奏のおかげだな。ありがとう」
「ふふ、どういたしまして。いや、そうじゃなくて、この間の活躍は結構ってレベルじゃなかったでしょ」
「そうか、客観的に見ると、そんなに良かったんだな。流石に試合に集中していたから、周りの目はわからなかったし、それに途中退場だったし、次の日は休みだったし……」
涼の言葉が尻すぼみに小さくなる。
なんだか、自分が情けなくなってきた。
「あ、割と気にしてたんだね。ごめんね」
「いや、俺の不甲斐なさもあるから」
「涼君は悪くないでしょ。気にしちゃダメ」
「そうか、慰めてくれてありがとう、奏」
すると、まどかがやって来た。
「おはよう、色男くん」
「まどか。そう言う意味不明なことを言う口はこの口か」
涼がまどかの頬を親指と人差し指で挟みこむ。
「ゔぁー、ずどっぶ、ずどっぶ」
手を離すと、まどかが文句を言ってくる。
「ひどいよ涼君」
「変なこと言うからだ」
「ん? 別に変なことじゃないでしょ。涼君のされてる注目ってほとんど女子でしょ」
「あれ、そういえば女子が多い気がするな」
「だから色男で間違ってないじゃない」
「なんで女子ばかりなんだ?」
「それは涼君が球技大会の時カッコよかったからでしょ」
「そっか、なんか照れんな」
「そんなこと言ってる余裕ないかもね」
「え? なんで?」
「まあ、それは言わないでおくよ。ところで、なんで奏は難しい顔してんの?」
「あれ、どうした? 奏」
「だって涼君、まどかにだけやってたじゃない。口を挟むやつ。
私にはそんな気安いことしないのに」
「か、奏……あんなことされたいのか……」
「なんか、変態を見るような目してない? やめてよ」
「冗談だよ。奏にはもっと気安いだろ。昨日とか」
「あ……、そうだね」
「え? 昨日何があったの? ずるい、教えて」
涼と奏が目を逸らすと、まどかがぐいっと近づいて追求してくる。
そのタイミングで声をかけられた。
「ねえ、羽山くん」
「何?」
渡りに船とばかりにそちらを向くと、女子が3人並んでいた。
しかし、涼は名前を知らなかった。
女子と話をする機会など皆無だったから仕方ない。
「羽山くん、ぶつけた頭大丈夫?」
「ああ、1週間くらいは運動をするなってことだけど、大丈夫だよ。ありがとう」
奏とまどか以外の女子に声をかけられて、若干テンションが上がって、満面の笑みで返す。
それを見た女子3人は顔を赤らめた。
1人が続ける。
「あ、あの、栗山さんと羽山くんは付き合ってるの?」
「付き合ってないよ」
「そうなんだ」
「古賀さんとは?」
「? 付き合ってないよ」
質問の意図がまるで分かっていない涼は不思議そうな顔で返す。
今まで、女性と接したことがなかったから、男女の機微に疎いのだ。
3人組の女子は嬉しそうな顔をする。
それを見て、涼も顔を綻ばせる。
女子達はさらに喜ぶ。
(何やってんのよ。涼君のばか!)
(なんなの涼君は天然のタラシなの?)
奏とまどかが涼を見てヤキモキする。
女子3人組の1人が言う。
「今まで、あまり話さなかったけど、これからはお友達になってくれないかな」
(この子達の名前がわからないのにどうしよう)
3人が期待を込めた目で見てくる。
「いいよ。よろしくね」
「「「きゃー」」」
「よろしくね羽山くん」
「お願いね羽山くん」
「羽山くん、またね」
「ああ、うん。またね」
奏とまどかがジト目で涼を見る。
「あのさ、奏」
「何?」
「あの3人の名前教えて」
「はぁー、知らない。本人達に聞けば」
「そんな……まどか?」
「右に同じく」
「2人とも、ひどくない?」
「何言ってんの?」
「このタラシ!」
「えー」
涼はガックリするのだった。
しかし、クラスメイトの名前を覚えていない涼は、やはり自業自得と言える。
「私たちも戻ろう、まどか」
「そうね、奏。じゃあね涼君」
「またね、涼君」
「はい、また後で」
(なんで、2人とも怒ってるんだろう?)
奏とまどかは睨みながらさっていったが、涼にはなんのことか全くわからないのだから、無駄だろう。
そうこうしているうちに担任が入ってきた。
いつも読んでいただいてありがとうございます。
色々と賛否をいただきそうな、涼と奏の関係についてお話しさせていただきます。
この作品のタイトルの 〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜と、書いてあるように気がついたら2人が離れられない関係になっていた。と言うのがテーマになっています。ですので、付き合っているかどうかはこの物語では重要ではありません。もちろん、付き合っていないうちに性交渉をしてしまうとかそう言うわけではありません。
この作品のプロットは割と先までできていますが、実は付き合うかどうかまで入れていません。その時の状況ですぐに付き合うかもしれないし、付き合わないかもしれないのです。作者の私もいつ付き合うかはわかりません。(この先も本人たちは付き合うことを意識したりはしていますが……)どうなっていくか私自身が楽しみにして進めています。そのためすぐに付き合った方がいいと言うお言葉に応えられるかどうかわかりません。現在の流れ的に可能性は薄いですが、付き合わない事もあるかもしれません。その点ご容赦ください。
ですので、以上のことでもご不快にならなければ、是非この先もお付き合いください。
まあ、そうは言っても、ブックマークも大したことのない弱小作品ですから、偉そうなこと言えないんですけどね。涼と奏の物語をこれからも楽しんでくれれば嬉しいなぁ。




