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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第69話 奏の依存 ※賢治視点

 付き合い始めてからというもの、奏は本当に俺のことを好きになる努力をしてくれているようだった。


 毎朝、迎えにきてくれたり、制服の乱れを直してくれたり、寝癖を直してくれたり、忘れ物の確認をされたり、ハンカチティッシュを持ってるか聞かれたり、爪は伸びていないかなど身だしなみをチェックされたり、友達とはうまくいっているか聞かれたり、テスト勉強はできてるか聞かれたり、勉強を教えてくれたり、志望校の相談に乗ってくれたり……思えば、ほとんど、弟の扱いだった。


 それでも、俺は嬉しかった。奏が前向きにこの関係を考えてくれているんだと思って。


 そして、手を繋いで学校に行くことは俺にとって、至福のひとときだったが、奏にとっても恋人として意識するいいきっかけにはなったようだった。

 

 デートの時には腕を組んで歩いたり、ハグもした。

奏は俺のことがかなり好きになってきたんだと思う。


 奏の母親の初音さんは最初の頃、俺たちのことを微笑ましく見ているだけだったけど、ある日真剣な顔で言われた。


「賢治くん、奏と仲良くしてくれてありがとうね。奏は本当に賢治くんが好きみたい。これからもよろしくね」


 初音さんに認められたと思った。あの時は本当に嬉しかった。


 妹の天音も「賢治お兄ちゃん」と甘えてくれる。本当の可愛い妹みたいだ。

進さんとも釣りを教えてもらったりと仲がいい。


 奏とも奏の家族とも順調な付き合いができていた。

不満を言うとしたら、奏はいまだになんでも俺よりできて、奏を守ってあげるタイミングがないことだ。

それ以外はとても満足のいく毎日だった。


 そんな日が、続いたある日、俺の部屋で奏に相談された。


「賢治、私バスケの強豪の栄春高校に誘われているんだけど」

「奏はどうしたいんだ?」

「私は行きたいかなって思ってる。 賢治と離れるのは寂しいけど、うちも近いし会うことはできるから」

「行かないで、俺と大嶺に入ってくれないか?」

「え?」

「違う高校なんかに行ったら、きっと奏は他の男に言い寄られるし、それじゃあ奏を守れない。

俺は奏を守りたいんだ。

それに俺も、せっかくの高校生活を奏と違う高校なんて耐えられない」

「でも……」

「奏は俺と別れていいのか?」

「ううん、賢治のことは好きなの。でも違う高校に行ってもその気持ちは変わらないよ」

「いや、それでも絶対に他の男は言い寄ってくるはずだ。

そんなのは本当に嫌なんだ。

俺は、奏を守りたいんだ。

だから、大嶺高校に決めてくれ」

「賢治……」

「俺と、一緒の高校に行ってほしいんだ。な、奏、いいだろう」

「……ちょっと考えさせてもらっていい?」

「ああ、また明日話し合おう」

「うん」


 そして、翌日になった。


「奏、昨日の話だけど、答えを聞かせてくれ」


 そうは言っても、奏が栄春高校を選んでも、説得する気でいた。

奏と離れるなんてありえないから。


「うん、私、大嶺高校にする」

「いいのか?」

「うん、私も賢治と離れたくないし、大嶺高校でもバスケはできるから」

「そうか、奏。よく決めてくれたな」


 この瞬間、俺はえもしれぬ快感に見舞われた。

あの奏が、自分の考えを曲げて自分に従ってくれたのだ。

これなら自分の言うことはなんでも聞いてくれるだろう。

俺は自分が強くなったのだと悟った。

これからは、奏は俺が守るんだと思った。


「奏、楽しい高校生活を送らせると約束するよ」

「うん、よろしくね、賢治」


 素直に頷く奏に俺はゾクゾクした。

今までは奏の考えを正しいものだと従ってきたが、これからは俺が奏に言うことを聞かせられるんだ。


 それからと言うもの、奏を誘導して、俺の我を通すのが楽しくなった。

出かける先も学校に行く時間も寝る時間さえも、奏が俺と違うことを言うのを許さないことにした。


 奏は完全に俺の言いなりになった。

俺が本当に好きなんだろう。言うことを聞かない時は別れをちょっと、ちらつかせるだけで、俺の言うことに従った。

こう言うのを依存というのだと思った。


 これは俺にとって、とても嬉しいものだ。

何せ、俺はずっと奏に守られていて、奏の言うことさえ守っていれば安全だと思っていたのだから。


 奏だけが世界だった俺にとっては、奏を支配できたのは万能感を得たと言っても過言ではなかった。


 この心地いい気分は高校に入っても続いた。

入学式後に俺の部屋に奏が来た時のことだ。


「賢治、部活は何部に入るの?」

「バスケ部だな」

「私もバスケ部に入るつもり」

「ちょっと待て、奏」

「え?」

「2人とも部活をやってしまったら、休みの日が被らなかったら、遊べないじゃないか」

「うん、そうだけど、それは仕方ないかな」

「いや、俺は部活入るから、奏は入らなければ、俺の部活が休みの日に遊べるぞ」

「でも、そうすると、私部活に入れないけど」

「その分、家で勉強できていいじゃないか」

「でも私、バスケやりたいよ」

「じゃあ、奏は俺と別れたいのか?」

「なんでそうなるの?」

「部活に入って、会えなくなるとうまく行かなくなって、別れてしまうってことあるだろ」

「あるかもだけど」

「奏は俺と別れていいのか?」

「嫌だけど」

「じゃあ、部活入るのやめてくれ」

「でも、だからって私だけ部活入らないのはおかしいよ。学校だって賢治に言われて変えたんだよ。

大嶺でもバスケできるからって変えたの忘れたの? 部活くらいやらせてよ」


 さすがに奏も反論してきた。

しかし、こんな反論許していてはいけない。

奏は幼馴染で彼氏の俺の言うことを聞くのが当然なんだから。


「はあ、じゃあ俺と別れてもいいのか? 幼馴染で彼氏の俺とそんなに別れたいなんて思わなかったけど」

「別れたくないよ。でも」

「俺だって、別れたくないよ。だから、部活に入らないで、俺の部活の休みの日を待っていてくれよ」

「……」

「そうすれば、休みの日は奏が望むように付き合ってあげるからさ。きっと楽しいよ。

それに……」

「……」

「俺たちがこれ以上言い合う必要もなくなるだろ。

俺たちがこんなことで言い合っているなんておかしいじゃないか。

こんなにお互い好き合ってるんだからさ」

「賢治……」

「な、部活なんかやらないでくれ」

「……分かった。私部活やめとくよ」

「分かってくれて嬉しいよ奏」


 これで、また奏は俺の言うことを聞いてくれるようになった。

この瞬間は相変わらずゾクゾクする。


「ねえ、賢治」

「なんだ?」

「代わりと言ってはなんなんだけど、私たちクラス別になっちゃったでしょう。

だから、せめてお昼は一緒に食べたいなって思ってるの。どうかな?」

「もちろんいいよ」

「良かった! じゃあさ、これからは私がお弁当作っていくね」

「本当か? 奏の手作り弁当なんて嬉しいよ」

「私、頑張るね!」


 その後、親に奏が弁当を作ってくれるってことを言ったら、食費は出すからそれを奏に渡すように言われた。

それは、奏の善意に水をさすから、渡さないでおくことにしたのだった。

それでいいだろう。

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