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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第63話 バックハグ?

 すっかり明るくなり、奏は目を覚ます。

が、体が動かない。しかし、昨日のように涼は目の前にいない。

すぐに後ろから涼に抱きつかれているのに気づく。


 腕は体の後ろから、体の前に回されていて、体の後ろ側には涼が密着している。

しかもくの字に曲がっている奏の体にピッタリと足の先まで涼がくっついているのだ。


(あ、恥ずかしいけど、すごくいい。これもバックハグっていうのかな。守られている感じが昨日より強い)


 奏は涼の腕に手を添えて、この状況を堪能する。


(涼君は寝てるんだよね。まだしばらく起きないでね。すごく幸せ)


 10分ほど経つと、涼が目を覚ます気配がした。

涼は、寝ぼけた状態だったが、次第に覚醒していくと、自分が何をしているか気づく。


「!?」


 離れようとする涼。しかし、すかさず奏が腕を押さえて動きを止めさせる。

涼は小声で声をかける。


「奏?」

「このままで……」

「あ、ああ」


 涼は頷く。

が、涼に寝起きならではの苦難が訪れる。

男の生理現象が起きてしまったのだ。


(や、やばい、あたっちゃう。変態だと思われる)


 涼が腰を引いて少し距離を空け得ようとすると、奏が追いかけるようにして密着してきた。

(かなでー!)

(もう、密着してて気持ちいいんだから離れないで欲しいよ……。あれ? なんか固い? もしかして、これって)


 奏が耳まで赤くなる。

その様子を感じ取った涼は、感づかれたと悟った。


(バレたー。どうしよう、変態だと思われる。でも、くっついてると、気持ちいい。

いやいやダメだろう。そんな考え)

(どうしよう、なんかすごいあたってるところ熱いんだけど。ドキドキしちゃう)


 小声で奏に話しかける。


「ごめん、奏。離れようか。本当にごめん」


 申し訳なさそうな声で、涼が言う。


(このまま離れちゃうと、涼君が恥かいちゃう。それに私はこのままでいい)

「大丈夫だよ、涼君。このままでいて。お願い」

「え、いいの?」

(どう言うことだ? 気づいてるんだよな?)

「うん。このままで」

「わ、わかった」

(奏がいいって言うんだったら、このままでいさせてもらおう。正直嬉しい)


 しばらくの間、奏は幸せを味わい、涼は天国にいる気分だった。

しかし、幸せも天国もいつまでもは続かない。

涼と奏は完全に2人の世界にいたが、このベッドにはもう1人いたのだ。


 天音は目を覚ます。

涼のいる方とは反対側に天音は向いていた。


(いつの間にか、寝返り打ってたんだ。お兄ちゃんに抱きついちゃおうかな)


 寝返りを打って、反対側を向くと、涼は奏の方を向いていた。


(あれ、お兄ちゃん、あっち向いているんだ)


 天音は、起こさないようにそーっと頭を上げる。

と、そこには涼が奏を抱きしめている姿があった。

それも2人とも起きて、意識的にしている。

カーっと、頭に血が上った天音は、勢いよく布団を剥ぎ取った。


「ちょっと、お兄ちゃんとお姉ちゃん、何やってんのよ!」


 びっくりして、顔だけこちらを向く涼と奏。言葉が出ないでいる。

布団から出て顕になった涼と奏の全身は、足の先までピッタリとくっついていた。

それを見た、天音はさらに叫ぶ。


「もう、もう、何してんのー」



 リビングに移動した涼と奏は不機嫌になっている天音を宥めていた。


「ごめんな、天音」

「天音、ごめんなさい」

「フン」


 そっぽをむいて、天音は取り合わない。

涼はまるで浮気がバレた亭主のように狼狽えている。


「お父さんとお母さんに言ってやるんだから」

「天音、それは待って」

「そ、それは……」


 奏と涼は焦る。

しばらく天音が口を聞かないで沈黙する。

やがて何かを思いついたのか、天音は涼の方を向き口をひらく。


「じゃあ、同じことをやって」

「え?」

「私もお姉ちゃんみたいにゴロゴロして後ろから抱きしめて!」

「へ?」

「あ、天音。それはどうかと思うの」

「お姉ちゃんはよくて私はダメなの?」

「そ、そんなことはないけど」

(だって、涼君とあの体勢になるってことは涼君のあれも……)


 奏は、焦った。なんとしても阻止したいが、その材料がない。

奏はそれ以上続けられなかった。


「じゃあ、いいよね。お兄ちゃん」


 涼はチラッと、奏を見る。

奏が小さく顔を振って拒否しろと伝えてくる。


「いや、天音。それはやめとかないか?」

「何? お父さんとお母さんに言って欲しいんだ」

「いや、なんでもない」

(すまん、奏)


 奏が、ガックリと肩を落としている。

天音が明るい顔に変わる。


「お姉ちゃん、朝ごはんはお姉ちゃんに任せちゃっていい?」

「いいけど」

「その間、ここでお兄ちゃんとゴロゴロしてるね」

「え? ここで」

「このソファー大きいから大丈夫だよ」

「大丈夫だとは思うけど」

「さ、お兄ちゃんはそこで横になって」

「あ、ああ」


 天音は涼を横にして、その前に涼にすっぽり埋まるように体を潜らせた。


「えっと、お姉ちゃんは体をこう曲げていたからこうか。

お兄ちゃんは私の前に腕を持ってきて、足の先の方まで体を密着させてね」


 奏は、諦めてキッチンに向かった。


(くっつくのは本当にまずいんだけど、天音は許してくれそうにないしな。仕方ない)


 涼も諦めて天音に体を密着させて、腕を天音の前に回して抱きしめた。

涼は再び快感を味わった。


(あー、本音言うと気持ちいいな。天音も)

(これって、すごくいい。お兄ちゃんに包まれてるみたい)


「お兄ちゃん」

「何?」

「これ、すっごくいいね」

「そうだな」

「またやってね」

「いや、今回だけだよ」

「1回やっても2回やっても同じだよ」

「そうは言うけどな」


 と、そこで涼が恐れていたことが起こった。

再び元気になってしまったのだ。


(ああ、もう勘弁してくれ俺。こんな風にならない体ならいいのに。天音にバレたら絶対嫌われる。意地でも当たらないようにしないと)


 涼はわざと身じろぎさせて、一部だけ天音から離した。

涼が自然に動いた甲斐あって、天音は離れたことに気づいていない。


(良かった、多分天音にバレていない。このままの状態をキープしないと)

(お兄ちゃん、なんかすごい緊張してる感じが伝わってくる。私で興奮してるのかな。嬉しいかも。私も安心するし、すごいドキドキする)


 しばらくこの状態を天音は堪能し、涼は気持ちいいが必死にこらえた。


(でも、なんで私、あんなに怒ったんだろう。別に私が怒る筋合いってないよね)


 天音が怒ったのは、ただ単にやきもちを焼いただけなのだが、初恋の経験がまだない天音にはわからないことだった。

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