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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第60話 奏への謝罪

「この度は、本当に申し訳なかった」


 大山夫妻は、その場で深く頭を下げた。

いきなりのことに奏がびっくりして、涼と天音の方を見る。

奏は大山夫妻が涼に謝罪をしにきているのだと思った。

それがなぜか急に自分に謝罪をしているから状況が理解できなかった。


「あの、賢介さん、香奈美さん、どうしたんですか?」


 なぜそうなったかわかっている天音が口を出す。


「おじさん、おばさん。お姉ちゃんがなんで謝罪されているのか分からなくて混乱しているよ」


 すると、夫妻は頭を上げる。


「ああ、そうだったね。急に謝られても困るね」

「奏ちゃん、私たち、賢治があなたにしたことを聞いたの」


 そこでようやく奏は合点がいった。


「そうだったんですか」


 賢介と香奈美は顔を見合わせてから、香奈美が口を開く。


「こういってはなんなんだけど、賢治と奏ちゃんが付き合い始めたって聞いて、本当に嬉しかったの。

私たちから見ても、2人は姉弟のようだったから、なかなか付き合うことはないだろうとは思ってたのよ。

付き合い始めた頃は、奏ちゃんがお姉さんのままなのは見ていてわかったから、ちょっと心配はしていたの。

でも、だんだん奏ちゃんが賢治のことが好きになってきているのを感じて、とても安心したわ。

最近は本当に好いてくれていたんでしょ?」

「はい、本気で好きになっていました」

「そうよね。側から見てもはっきりとわかるくらいだったから。

それなのに、ごめんなさい。二股なんかしてあなたを傷つけてしまったわ」

「謝らないでください。私が傷つけられたのは賢介さんでも香奈美さんでもないんですから」


 賢介が続けた。


「それでもだよ、奏ちゃん。娘のように思っていた君に賢治は大変なことをしたんだ。

親として、本当に申し訳なく思っている。すまなかった」


 そこで、また2人が頭を下げた。

それを見ていた奏だったが、呆れたようにどこか慈しむかのようにため息を吐いた。


「もう、2人とも。賢治が誰かと別れるたびにそんな謝罪なんかしていたら身が持ちませんよ。

付き合うことも、別れることも、それでトラブルになることも当事者同士のことなんですから。

それで気にされていたらこちらも困りますよ。

いい加減頭を上げてください」


 2人は頭を上げた。


「でもね、頭を下げたのは奏ちゃんだからっていうのもあるのよ」

「わかりました。謝罪は受け取りますから、もうやめてくださいね」

「ええ、分かったわ」

「それと、」


 奏が見惚れるような笑顔で続ける。


「お二人のことは、私も第二のお父さんとお母さんだと思ってましたよ」


 その言葉を聞いて、大山夫妻の目から熱いものが流れ出した。


「ありがとう。奏ちゃん」

「ありがとうね」


 奏は2人の元により、2人をそっと抱きしめた。


「お父さん、お母さん、今まで、ありがとうございました」

「う、うう」

「奏ちゃ、ん」


 しばらく、3人が抱きしめあっていた。

その光景を見て涼は思う。


(こんないい両親なのに、大山は自分勝手な行動ばかりして、本当に何考えてんだ)


 ようやく落ち着いて、3人は離れた。

3人とも目が赤くなっている。


「ありがとうね。奏ちゃん」

「こちらこそありがとうございます。心配してくれたんでしょう?」

「それは心配だったわよ」

「でも、私は大丈夫です」


 ちらっと涼を見てから言い直す。


「いえ、大丈夫になりました」


 それを見た香奈美は合点がいったように頷いた。


「そうなのね。良かったわね」

「はい、おかげさまで」


 奏が、花が咲いたような笑顔になった。

それを見た香奈美は見惚れて言う。


「それにしてもうちの賢治は逃した魚が大きいと自覚してるのかしら」

「全くその通りだな」


 そんな、2人の言葉に奏は少し意地悪な笑顔で言う。


「ふふふ、自覚してくれたら、少しは気が晴れます」

「そうだね」

「そうね」


 そこで、香奈美が思い出したように言う。


「奏ちゃん、ずっとお弁当作ってくれてたでしょ」

「はい」

「賢治から、お金は受け取ってたかしら」

「いえ、全然」

「まあ、私は奏ちゃんに渡しなさいってお金を渡してたのよ。そんな話も聞いてない?」

「はい、聞いてません」

「なんてことなの? 帰ったら問い詰めることが増えたわ」

「あ、でもお弁当の費用のことだったら気にしないでください。

私が好きでやっていたことですから」

「奏ちゃんはそう言ってくれるけど、奏ちゃんの好意を利用して、お小遣い稼ぎをしていたって言うことなのよ。

今回のようなことが起こったのも、そう言う姿勢が一因とも言えるだろうし、今後のためにも許したらいけないと思うの」

「そう言われると、そうかもしれませんね。

私が幼馴染の彼女として、賢治をだらしなくさせてしまっていたのかもしれません」

「奏ちゃんは何も悪くないわ。愛情を注いでくれただけだもの。

問題なのはそれを利用しようっていう根性よ」


 黙って聞いていた涼は奏の意見にも香奈美の意見にも賛成だった。

賢治は奏たちに甘え切っていて、さらに舐め切っているところがある。

奏が甘やかしていたのが、賢治の元々のだらしなさを増長させる一因であったと思うし、優しさを利己的に利用しようとする賢治の自制のできていない曲がった根性が引き起こしたとも言えると思った。

が、涼は余計な口を挟まないようにした。


「とにかく、お弁当代は後できちんと計算して、お家の方に持っていくわね」

「そう言うことでしたら、はい、よろしくお願いします」

「ええ、後で賢治の小遣いから差っ引くわね。いい気味でしょ」

「ふふ、そうですね。少しは反省してくれたらいいですね」

「今まで作ってくれて本当にありがとうね」

「いえ、そう言っていただけたら嬉しいです」


 その後、しばらく話した後、大山夫妻は紙袋から箱を出して口を開いた。


「羽山君、お詫びの印というわけでもないのだけど、こちらを受け取ってくれないだろうか」

「これはご丁寧に。遠慮なくいただきます」


 包装は有名な洋菓子店の焼き菓子だった。


「今後、何か症状が出た時のために連絡先の交換をしてもらえるかしら」

「はい」


 涼と香奈美がWine IDを交換する。


「症状で何か出てきた時はもちろん全力で対応させてください。

それと、1人暮らしで困ったことなどがあった時も連絡いただけたら、お手伝いしますから。

あと、うちの息子がまた絡んできた時も教えてもらえたら助かります」

「はい、ありがとうございます」

「それと、賢治には改めて謝罪させます」

「あー、それなんですけど、謝罪はしてもらいたいとは思うんですけど、あんまりにも親子間の関係に影響があるようなら無理しなくていいですよ。彼は多分いまでも僕に悪感情を持っているので、謝罪は難しいかもしれません」

「申し訳ない。その時は連絡しますので」

「まあ、その時はこちらも大山君自身は許さないままと言うことはご理解ください」

「それは理解しています」

「はい、とりあえずここでのこの話は手打ちということで」

「ありがとう。最後に、仏壇があるなら、ご挨拶させてもらっていいかな。

ご両親にもお詫びはさせてもらいたい」

「はい、ありがとうございます。こちらです」


 大山夫妻は両親の仏壇へ挨拶をした後、帰って行った。


「ふーっ、やっぱり気を張ってたせいか疲れたな」

「お兄ちゃん、そうだったんだ。普通に見えたけど」

「いや、文句言う気もない相手に謝罪されるのも居心地が悪いよ」

「まあそうだよね。あの2人は善人だしね」

「そうだな。で、どうしたんだ、奏? 黙ってしまって」

「うん、あの2人は私も好きだったから、これから付き合いがなくなると思うと、なんか寂しいなって思って」

「大山と別れたからって、無理にあの2人と会わないってこともないんじゃないか?」

「そうかな?」

「別に大山がいないところにでもあの2人に来てもらって、話したりすればいいんだし。

まあ……」


少しためを作って涼がいう。


「大山を含めて両方の家族での行事とかやっちゃうのは、流石に違うと思うけどな」


天音も同意する。


「それはダメね。今年のバーベキューは中止よ。

って、あれ、お姉ちゃんはもしかして今年もバーベキューしたかったの?」


 天音は奏の表情が微妙な色だったのを見て言う。


「うーん、別れた時は、バーベキューも実は期待してたんだ。また近づけるかもって。

でも、今それをすると、ダメなのは分かってる。

それに、大山くんを男性として好きって言う気持ちは無くなってるから。

何よりも、今は涼君にきちんと謝ってもらいたいよ」

「確かにお兄ちゃんに謝ってもらいたいよね」

「俺も、本人からは謝ってもらいたいけど、あんまりのぞみはないと思うな」

「そうなの? 涼君」

「ああ。あいつ俺に敵対心強いし、思い込みも強いみたいだからな」

「そうかも」

「そういえば、俺にバスケで負けたら、奏に近づかないって言ってたけど、守るかな?」

「さっきそんなこと言ってたね。でも、お兄ちゃんのこと舐めてそうだしね。あいつ。

お姉ちゃんはもう近づいて来ないってことになったらどう?」

「うん、そうしてもらえるとありがたいかな」


 その後、雑談をしていたら、夕方になった。

奏が時計を見て言った。


「夕飯の買い物に行こうかな」

「ああ、そんな時間か……って、今日も作ってくれるのか、奏」

「もちろん、今日も作るし、泊まっていくよ」

「今日も泊まるの?」

「当たり前よ。観察期間は24時間から48時間くらいは見たほうがいいって言ってたもん。

涼君は一人暮らしだから、当然48時間必要よ」

「そうか、ありがとうな」

「ちなみに私も泊まっていくよ」

「天音もなの?」

「うん、だめ?」


 天音が上目遣いで聞いてくる。

あまりの可愛さにドギマギする涼。


(ずるいな。それは断れないじゃないか)


「でも、初音さんはなんて言ってるんだ?」

「涼君の家ならいいって。どっちみち、お姉ちゃんも泊まってるんだから問題ないって」

「問題ないかな?」

「問題ないの」

「そうか」


 奏が立ち上がる。


「天音、順番に涼君の見張りしよう。まず私が買い物行くからその間涼君を見てて。

帰ってきたら、順番にお風呂に入ろうね。それで、ご飯の準備の時はまた涼君を見ててね」

「分かった、お姉ちゃん」

「あの、思うんだけど」

「何? 涼君」

「あまりにも過保護じゃないかと思うんだけど」

「そんなことないよ。目を離した時に何かあったら嫌なの。昨日言ったよね、涼君」


 涼の頭に昨晩の奏の悲しそうな顔が思い浮かぶ。

途端に申し訳なくなる。

恥ずかしがっている場合ではない。


「そうだった。全面的に従います」

「よろしい」

「じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「お姉ちゃん、行ってらっしゃい」


 涼と天音は奏が買い物に行ってる間、まったりと過ごすのだった。

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― 新着の感想 ―
賢治くん研究者の第一人者(自称)の私からすると、賢治くんのこれまでの行動は第三話の砂場から続く小学校時代の出来事が原因ではなかろうか 砂場のガキや小学校のいじめっ子達を見て力やカースト上位ならどんな横…
残念ながら賢治くんは逃がした魚の大きさを自覚する以前に、逃がした自覚すらない異常者なので…
風呂の予定まで決めたところか 涼君のベッド、3人くらい一緒に寝れそうだなー(チラッ)
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