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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第57話 大山夫妻

 奏が球技大会で活躍していた頃、涼は天音と2人で映画をまったりと観ていた。


「お兄ちゃん、この映画面白いね」

「ああ、まさか展開がこうなるとはな。びっくりだったよ」

「それに、やっぱりお兄ちゃんのうちのテレビと音響の効果もあるよ」

「天音に喜んでもらえて嬉しいよ」


 そう言って、涼は天音の頭を撫でる。

天音は嬉しそうに目を細める。

幸せそうなその顔はとても可愛らしい。


「えへへ」

(やっぱり、天音は奏の妹なだけあって可愛いな)


 ピロリーン。

涼のスマホがなる。


「お兄ちゃん、スマホなってるよ」

「ああ悪い、ちょっと出るな。学校からみたいだ」

「うん、映画止めとくね」


 涼がスマホを操作して、電話に出る。


「はい、羽山です。あ、笠井先生ですか? はい。はい。え? そうなんですか。いいですよ。今からですか? 2時間後ですね。分かりました。お待ちしています。はい、失礼します」


 電話が終わりスマホを切る。

それと同時に涼はフーッとため息をついた。


「どうしたの? お兄ちゃん」

「うん、担任の先生からの電話だったんだけどね、大山の両親が謝りに来たいそうなんだ」

「え? ここにくるの?」

「うん、ここの住所を教える許可を先生が求めてきてね、OKしたから、2時間後にくるよ」

「3時くらいか」

「そうだね。天音は大山の両親とは交流があるんだよね」

「うん、小さい頃から色々面倒見てもらったから」

「そうか、それならこの状況では会いにくいだろうから、俺の部屋にいるか、もしくはもう帰る?」

「それはダメだよ。お兄ちゃんをみなきゃいけないんだし」

「そうは言っても会いにくくないか?」

「ううん、大丈夫。きちんと私がお兄ちゃんの様子を見ているって言うし、いざとなったら、あいつがしたことを言ってやるから」

「そうか」

「それで、あいつもくるの?」

「いや、なんだか自分が悪いっていうのを認めていないようで、ゴネているらしい」

「何それ? 本当に最低」

「だから、とりあえずご両親がいち早く謝りに来るってことだよ」

「親だけで来るって言うのもね」

「うん、ちょっと微妙だな。でも、親がいい人たちだって言うのはわかる気がするけど」

「うん、両親はいい人だと思うよ」

「そっか……ま、2時間後の話だから、映画の残り観ちゃおうか」

「そうだね」

「すっかりお昼過ぎたけど、ピザでも取ろうかね」

「賛成! って、またピザばかり食べてたら、お姉ちゃんに怒られるんじゃない?」

「う、でも、まあ今は怪我人だし……」

「都合の悪い時だけ怪我人っぽくなっててウケる」

「そんなこと言うなら、いいよー、俺だけでピザ食べるから」

「あ、お兄ちゃん冗談です。私も食べる」

「そうだな、2人で食べよう」

「うん」


 涼たちはピザを注文してから、映画の続きを観た。


 それから、2時間が経ちインターホンが鳴った。


「はい」

『大山と申します』

「あ、今開けますので待っててくださいね」


 程なくして、涼が家のドアを開ける。


「こんにちは」

「羽山涼君ですか? 私、大山賢治の父の大山賢介と申します。

こちらは妻の香奈美です」

「初めまして、香奈美です」

「羽山涼です。立ち話もなんですから、上がってください」

「それでは失礼します」


 賢介は40代前半くらいで七三分けにしているイケメンサラリーマン風。

香奈美も40代前半くらいのロングヘアの美しい女性だ。


 涼は、2人にスリッパを履くように促し、リビングに案内する。


「それではこちらにお座りください」

「はい……あれ、天音ちゃん?」

「はい、天音です。おじさん、おばさん、こんにちは」

「こんにちは。どうして、ここに?」

「私は涼お兄ちゃんが頭を打ったから、経過観察するために今日一日一緒にいるの」


 大山夫妻は天音の「涼お兄ちゃん」と言うところに疑問を浮かべたような顔をしたが、とりあえずそれは置いておいてソファーに座った。


「おじさん、おばさん、コーヒーでいい?」

「いや、お構いなく」

「涼お兄ちゃんが美味しいコーヒー入れといてくれたんだよ。私は美味しさはよくわからないけど」

「ああ、それならいただこうかな」


 天音がコーヒーカップに砂糖とミルクをつけて持ってきた。

涼にはマグカップでブラックコーヒーだ。


「ありがとう、天音」

「どういたしまして」


 天音と涼のやりとりを見ていた大山夫妻はフッと笑顔になり言った。


「2人は仲がいいんだね」

「うん、お兄ちゃんと私は仲良いよ」

「そうなんだ、良かったね」

「うん」


 大山夫妻は周りを見回してから口を開く。


「できたらご両親にもお話をさせていただきたいんですけど、ご在宅ですか?」

「あ、いえ両親共に亡くなっているので、この家には私1人ですよ」

「そうだったんですね。それは悪いことを聞きました」

「いえ、大丈夫です」

「……それでは、本題に入らせていただきますね」


 大山夫妻は一呼吸おいて喋り出した。


「今回のこと、一部始終を学校から伺いました。

うちの愚息がとんでもないことをしてしまい、申し訳ありませんでした」

「申し訳ありませんでした」


 大山夫妻はその場で頭を下げた。

涼はそれを見ると、ゆっくり口を開く。


「頭をお上げください」


 2人が頭を上げるのを見てから、再び口を開く。


「学校の授業中での出来事であるので、お二人に謝っていただくことではないですよ。

今のところ経過観察中ではありますけど、大事には至っていませんし。

まあ、気持ちとしては大山君には謝ってもらいたいと思いますけど」


 その言葉を聞くと、大山夫妻は気まずそうな顔になり、


「賢治は3日の謹慎を学校に申しつけられているのですが、学校には謝罪のために家を出ることは許されているんです。

ただ、申し上げにくいのですが、本人が謝罪に来たがらないもので、やむなく保護者の私たちだけで来たのです。

その件も含めて、親として大変申し訳なく思っております。

後ほど、必ず謝罪させますので、今日のところは私たち親の謝罪だけでお許しください」

「そうなんですね。以前から彼とは多少因縁めいたものがあったので、頭を下げたくないのかもしれませんね」

「お聞きしにくいのですが、何があったか教えていただいてもいいですか?

本人に聞いてもはぐらかしてしまって、よくわからないのです」


 そういうと、涼は難しい顔で唸ってしまう。


「うーん、僕の口から言うべきかどうか」

「いいにくいことですか?」

「話すには僕の一存ではって感じなんですね。話してもいいか聞かなくてはならない人がいるので」

「そうなんですか?」


 大山夫妻と涼が難しい顔になって悩んでいると、天音があっけらかんと声を上げた。


「じゃあ、私が話そうか。だいたい話は知ってるし、私が言うなら納得してもらえると思うし」


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