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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第53話 起きたくない

 奏と涼が同じベッドで寝ている夜の深夜。

奏は目が覚める。

いまだに繋がれている手からは、涼の体温が伝わってきて、涼に何事もないのは感じた。

が、念の為、上半身を起こして、涼の顔を覗き込む。

呼吸も規則正しいようだし問題はないだろう。


 ほっと、安心して元に戻ろうかと思ったが、薄明かりの中で見える涼の唇に目がいく。

途端に思い出す、夕方に膝枕をしていた時のこと。


(私、あの時キスしようとしたのよね。

ちょうど、天音が来たからしなかったけど、今だったら邪魔が入らない)


 じっと涼の顔を見つめる奏。


(だめ、寝ている時に唇を奪うなんて。

そもそも、涼君が好きなのか自分でもわからないのにこんなことするなんて)


 もとの位置に戻る奏。

だが、涼が気になって仕方がない。

寝返りを何回かしたが、まだ気になる。


(そうだ、抱きついていたら、涼君の状態もわかるしいいかな)


 一緒のベッドにいることで、普段では考えないような大胆な事を考える奏。

涼の肩の部分に顔を寄せ、片腕を涼の胴に回し、足を絡める。


(涼君、あったかい。それに落ち着く)

「おやすみ、涼君」


 奏は、安心したのかすぐに眠りに誘われた。


 奏が寝てから数時間後。


「う……ん」


 いつもと違う感覚に涼は目覚めた。


(あったかいな……それに柔らかい)


 薄明かりの中確認すると、奏が自分に抱きついていた。


(奏? ああ、抱きついてくれたんだ。嬉しいな)


 半分寝ぼけている涼は、素直に受け入れた。


(じゃあ、俺も)


 涼が、奏の頭の下に自分の腕を入れ、もう片方の腕で腰の辺りに手を回し、足を絡めた。

奏の柔らかい感触が伝わってきて、涼は至福の気分を味わう。


(ああ、奏、気持ちいい)


 涼はそのまま寝てしまった。

2人は完全に抱き合った状態で寝ていることになったが、気にせずに寝ていた。



 さらに数時間後。


 明るくなってきて、普段早起きの奏は意識が覚醒しつつあった。

しかし、身動きがとれなかった。


(あ、あれ、体が動かない)


 目を開けた奏は涼と自分が抱きあっていることに気づいた。


「え? 涼君?」


 そこまで声を出して、思い出した。

昨晩、一緒のベッドで寝たこと。半分寝ぼけた状態で涼に自分から抱きついたこと。

そこまで考えて、なぜここまで抱き合った状態なのか疑問に思った。


(えっと、私が抱きついた時は腕枕はなかったし、涼君から抱きつかれても無かったから、あの後涼君が抱きついてきたのかな。

それで、抱き合っている状態に?)


 そこまで考えて、奏の顔が赤くなる。


(どうしよう。抜け出した方がいいのかな?)


 そう考えると、抜け出すのが惜しく感じる。


(涼君からも抱きついてくれてんのは間違いないし、このままでしばらくいようかな)


 奏はそう開き直って、今の状況を楽しむことにした。


(涼君に守られてるみたい。安心する)


 しばらく奏が涼の胸に頭を擦り付けたりして堪能していると、涼が起きる気配がした。


 奏が顔を上げると、目を開けた涼と目があった。

奏は真っ赤な顔をして涼の目を見つめる。

涼は意識がはっきりしてきて、ようやくどういう状況か把握して、驚いた顔をする。


「りょ、涼君、これはね」

(ああ、昨晩俺抱きついたんだったな)

「奏、嫌だった?」

「へ、いや……じゃないけど」

「そっか、それならしばらくこの状態でもいいかな?」

「え、しばらく? う、うん」

「ありがとう。奏が気持ちよくて」


 奏がさらに顔を赤くする。

それを見て、涼も顔を赤くした。


「ご、ごめん、気持ち悪かったか?」

「う、ううん、大丈夫よ。気持ち悪いなんてないから」

「じゃ、じゃあ、もう少しこのままで」

「うん」


 しばらく、無言で抱き合っていた2人だったが、涼が口をひらく。


「こうしてると、落ち着く」

「私も落ち着く」

「それなら良かった」

「そろそろ起きる時間だね」

「ああ、奏は今日球技大会参加するんだもんな」

「うん、昨日まどかに聞いたら、女子も勝ったみたいだったから、3回戦からは参加しないと」

「そうか。俺は医者に止められてるからな。せめて、奏の応援に行ければいいんだけど」

「ダメよ、学校に行くにしても体動かしちゃうじゃない。天音がくるから、今日は大人しくしてて」

「ああ、分かった。そうするよ」

「ああ、もう。起きないと」

「俺も下に降りるよ」

「じゃあ、涼君から起きて」

「うん、分かった」


 そう言いながらも涼は起き上がらない。


「涼君?」

「いや、なんか名残惜しくて」

「仕方ないなー」

「じゃあ、奏が起きて」

「いいわよ」


 と、言いつつも奏は一向に起きない。


「奏?」

「うん、起きようとしてるんだけど、なんだか動けなくて」

「はは、俺と同じだな。

「ふふ、そうね」

「じゃあ、2人一緒に起きようか」

「それがいいね。じゃあ、せーのでいきましょ」

「「せーの」」

「「……」」


 全く動く気配がない。


「なんで涼君起きないの?」

「それは奏もだよ」

「これじゃあ、朝ごはん食べてる時間がなくなっちゃうよ」

「ええい、仕方ない。こうだ」


 涼が布団を両手両足で持ち上げて、ベッドの外に放り投げた。

途端に2人の体は朝の空気にさらされた。

6月なので大して寒くはないのだが、2人は大袈裟に騒ぎ出す。


「きゃー」

「おお、さみー」

「ふふふ」

「ははは」


2人はお互いの顔を見て笑う。

そして、2人同時に言った。


「「起きよ」」


 ようやく起きることができた2人は洗面所に向かって行きながら考える。


(今後、こうやって奏と布団に入ることってあるのかな。もしかしたら最初で最後なのかもな)

(涼君と一緒に寝るって、とても心地よかったけど、もうこういうことってないのかな)


 2人はそれぞれ、一抹の寂しさを感じているのだった。




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― 新着の感想 ―
自然な形でラブコメに突入したが、予想以上に展開が進んでしまった(添い寝より先に進むとは…)
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