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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第33話 食後のひと時

 食事が終わり片付けも終わり、一家と涼での団欒中。

テーブルには紅茶がのっている。

食事中には聞けなかったことを涼に聞いたり、逆に聞かれたりしている。


「羽山さんは部活とかやってないんですか?」

「やってないよ。中学時代もバスケ部に入ったけど、数ヶ月で辞めちゃったし」

「どうして辞めちゃったの?」

「部活に入った頃、ちょうどお父さんが亡くなってね。

お母さんが塞ぎ込んでいたから、放っておくことができなくて、辞めてうちにいるようにしたんだ」

「ごめんなさい、嫌なこと聞いて」


天音が謝る。


「いや、いいよ。隠したいわけでもないしね」


初音が口を開く。


「じゃあ、今はお母さんと2人で暮らしてるの?」

「実は入学式の日に病気で亡くなって、つい先日49日があったんですよ。

だから、今は一人暮らしです」

「まあ、そうだったのね。辛かったわね」

「49日までは正直辛かったんです。何もやる気がしなくて。

学校でも誰とも口をきいていなかったので、友達もいませんでしたし。

学校に行ってたのだって、母に学校には行くように言われていたから、惰性で行っていたんです。

自分だけがなんでこんな目に遭ってるんだろうって、ずっと思っていたんです。

両親が亡くなってるのに、自分だけ楽しむ気も全くありませんでしたし。


 でも49日になって急に気持ちが軽くなって、1人だって色々挑戦してもいいじゃないかって思えたんです。」

「親戚はいなかったの?」

「母の妹で僕の叔母にあたる人が一緒に暮らさないかって、言ってくれてるんですけど、家から出る気力もなかったので、保留してもらっています」

「本当に苦しかったわね。いつでもウチを頼ってね」

「ありがとうございます。お言葉に甘える時があるかもしれません」

「ええ、甘えてね」


 今度は天音が不思議そうに言った。


「入学式の頃にお母様が亡くなってて、羽山さんも塞ぎ込んでいたんでしょう。

今はそれほどたっていないのに、気丈に振る舞ってて強いですね。」

「うん、さっきもちょっと言ったけど、49日までは本当に酷い状態だったんだけどね。

49日になる少し前くらいかな。

どんどん気が軽くなってきて、49日法要で完全に切り替わってね。

これからは前向きに生きようって思えたんだ。

多分だけど、49日は遺族のためにあって、遺族が亡くなった人に対しての気持ちを整理するための時間が49日かかるってことなんじゃないかなって、思うんだ。」

「へー、そんなことがあるんですね」

「それに、49日にはいいことがあったしね」

「どんなことですか?」

「法要が終わって、1人で街を歩いてたんだけど、そうしたら酷いナンパにあっている奏にあった」

「ああ、その日だったんですね。」

「うん、喪服のまま間に入ったんだよ」


 笑いながら、涼が語る。

奏は頬を染めながら補足する。


「あの時は賢治に振られてて、涙を流しながら歩いていたんだけど、我慢できなくなって、座り込んで泣いちゃったの。

そうしたら、ナンパにつけ込まれちゃって」


 天音が憤慨する。


「本当にあの人ひどいよね。お姉ちゃんをそこまで追い詰めてさあ。

今考えても腹が立つ」


「まあ、僕にとっては奏と話すきっかけになったことだからね。

奏は災難だったけど、僕にとっては何か引き合わされたような気がするよ」

「でも、私も引き合わされたような気はするよ。

だって、あの時どっちに歩いているのかもわからない状態だったんだもん。

涼君に助けられた時、初めて自分のいる場所に気づいたの。

なんか導かれたのかなって感じ」


 初音も嬉しそうにいう。


「本当にそうねえ。奏を助けてくれた人が、49日を終えたばかりの人だったなんて、何かあるって考えちゃうわね」


 それから、初音が話を変える。


「涼君、広いお家に住んでるって聞いたんだけど」

「そうですね、6LDKありますので、一人暮らしにはちょっと大きいですね」

「お掃除とか大変なんじゃないの?」

「週に2〜3回、家事代行の人に来てもらってるので、掃除は任せてます」

「そうなのね。食事はどうしているの?」

「母が、体調を崩し始めてから、僕が料理していたので一応できますが、亡くなってから、食に興味がなくなってしまって、全然作らないで、本当に毎日適当だったんです。

ピザとかコンビニ弁当とかって感じで。それが今でも続いているって感じですね」

「まあ、それじゃあ、やっぱりまた食べに来てね」

「ありがとうございます。今日の食事は本当に美味しくて、それに久々に家族での食事をできた感じがして嬉しかったです」

「そう言ってもらえると、作ってる私も嬉しいわ」


 そこで、進が気になっていることを聞いてきた。


「今、涼君はどうやって生活しているのかな? 経済的な面で」

「父は投資家だったんで、その資産がありますのでそれで。

具体的に言うと、大きめのアパートを何棟か持っているので、そちらの家賃収入の一部を生活費に充てていますね。

 僕も、父に倣ってアパートをいくつか買ったんですよ」

「そうなんだ、学生投資家だね。いいじゃないか」

「ええ、父のおかげです」

「じゃあ、このまま投資家としてやっていくのかい?」

「投資はこれから不動産だけでなくて、株式とか暗号通貨とか広げていこうとは思っています。

でも、管理の時間はそれほど取られないようにしているのが、父から教わった、私の方法です。

ですから時間は結構余ってしまいます。

だから、給料の多少は関係なくやってみたいことがあれば、挑戦したいなって思っています。

もっともまだ、何も決まっていませんけどね」

「まあ、まだ高校一年生だもんね。ゆっくり考えればいいよ。

それにしても、そう言う面でも君は恵まれているね。

普通は、やりたいことがあっても、お金の面で挑戦ができなくなってしまうけど、給料なくても生活できるんだもんね。

本当に好きなことができるね」

「はい、だから必ずしも就職でなくてもいいと思っているんです。

趣味のようなものから、仕事レベルにしていくとか、通常ではバイトしないとやっていけないようなことなんかでもいいかと

思ってます」


 話を聞いていた天音が、奏に囁く。


「お姉ちゃん、羽山さんが超優良物件なんですけど。

イケメンで家を持ってて将来お金に困ることがなくて、とても優しいなんて、私、立候補したいんだけど」

「う、うん。思った以上にすごいわね。でも立候補はダメよ」

「えー、ダメなの」


 と、コソコソと話していたのだが、初音がぶち壊した。


「まあ、涼君って、超優良物件ねえ。将来うちの子と一緒にならない?

奏か天音どっちかどう? どっちもでもいいわよ」

「へ!?」

「「お、お母さん」」

「あら、いいじゃない。涼君に何の不満があるの」

「いや、不満とかは何もないけど……」

「私は今日会ったばかりだし……」

「なら、いいじゃない。どう涼君」

「え、えっと」

「こら、初音。流石に涼君が困ってるだろう」

「ふふふ、からかいすぎちゃったわね」

(からかってたのか。初音さん、恐るべし)


 それから、学校のことなども話していると、涼の家の庭についての話になった。


「羽山さんちの庭にはバスケットのハーフコートがあるって聞いたんですけど」

「うん、あるよ。最近は奏が来て一緒に1on1とかやってる。

それと、クライミングウォールとか色々あるよ」

「いいなあ、お姉ちゃんずるい」

「ずるいってなによ」

「私に隠れて羽山さんのところに行ってたんでしょ」

「別に隠れてないし、あなたが涼君にあったのは今日が初めてでしょ」

「まあ、そうなんだけどさ」

「天音ちゃんも良かったら今度来る?」

「いいんですか?」

「ああ、天音ちゃんなら歓迎だよ」

「やったー」

(涼君と2人の時間だったのにな)


 人知れず奏は残念がるのだった。


「羽山さん、私、明日部活休みなんですけど」

「それじゃあ、明日にしようか。奏はどうする?」

「私ももちろんいくわ」

「羽山さんの家って、大きいテレビもあるんですよね」

「ああ、あるよ。今日は奏もみてたよ。ね、奏」

「うん、すごい迫力だった」

「へー、いいな。私も見せてもらっていいですか?」

「いいよ、何か運動したら、その後見ようか?」

「はい」

「ただ、俺たち勉強もするから勉強道具も持ってきてね」

「はーい」

「そうだ、涼君。明日のお昼は私が作ろうか」

「いいの?」

「うん、作りたい」

「じゃあ、お願いしようかな」

「決まりね」

「じゃあ、明日10時くらいにうちにしようか。動きやすい格好と、汗かくと思うから着替え持ってきてね」

「わかった」

「わかりました」


 楽しそうに翌日の予定を立てている様子を、進と初音は目を細めて見守っているのだった。

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