第30話 見た目
奏とまどかが涼のうちに来てから数日。
その間に学校では相変わらず奏に告白が来ていた。
当然のように断っていたが、それでも告白の数は減らない。
涼は奏とまどかと昼食をとり、毎度のように奏にカロリーバーを指摘されている。
休み時間になると、毎回ではないが奏が涼の席まで来ていた。
その度に、男子達からやっかみの目で見られているが、涼は気にしていない。
気にして、友人との時間を犠牲にしてしまう方が嫌だからだ。
その他の学校生活は変わりなく送られていた。
変化があったことは、毎日のように奏が涼のうちに遊びに来ていた。
一緒にトレーニングをして、たまに食事を摂り、その時は勉強も一緒にやって、帰りは涼が送っていくという生活が送られていた。
それから、やってきた金曜日。
登校すると、奏はまだきていなかった。
席に着くと、男子生徒3人が涼のもとにやってきた。
(珍しいこともあるもんだな。確か木村と他2人は別クラスか)
「羽山、ちょっといいか」
「ん? 何?」
「いや、俺たちよく遊んでんだけどさ、今度一緒に遊ばないか?」
「誘ってくれるの?」
涼がそういうと、3人が嬉しそうな顔になった。
「ああ、もちろんいいよ。今日なんかどうだ? カラオケとか行こうよ」
「今日か……ところで木村はわかるんだけど2人はなんて名前?」
「ああ、俺は4組の佐藤」
「俺も4組の橋本」
「羽山。よろしく」
「「よろしく」」
挨拶が終わったところで、再び木村が喋り出す。
「それで、どうだ? 今日の放課後」
「今日はもう約束入ってるから無理かな」
「栗山さんか? それなら連れてきてくれよ」
「古賀さんも連れてきてくれない?」
「いいだろ」
急に、鼻息が荒くなる2人
(は? もしかして奏とまどかが目当て?)
「いや、男同士で遊ぶんじゃなかったのかよ」
「女子がいた方が楽しいだろ」
「そうだよ、栗山さんだったら尚更いいじゃないか」
「連れてきてくれよ。もし、羽山がダメなら、栗山さんと古賀さんだけでもいいぞ」
完全に黒だった。奏とまどか狙いが確定した。
(考えてみたら、俺なんかが普通に誘われるわけないよな。
この見た目だし。
それはそうと、こいつらどうしようかな)
「悪いんだけど、遊びに行く時は奏もまどかも連れて行かないぞ」
「え? なんでだよ。いいじゃないか、連れてきてくれよ」
「連れて来ないんじゃ、お前誘った意味ない……あ」
(言っちゃってるよ。面倒臭いなこいつら)
「俺を誘った意味ないか。そうなんだろうな。
だけど、俺にとってはなんの得もないぞ」
「俺たちのグループに入れてやるぞ。いつも1人だろ」
「別にいいよ、今は奏と仲良いし。それに、女目当てで近づいてくるやつと仲良くなりたいと思うか?」
「お前、調子づいてんなよ」
「3人いて調子づいてんのは、どっちだ。自分で誘う勇気もないくせに、八つ当たりかよ。
みっともねえな」
「てめ「涼君おはよう」!?」
全員が声のする方を見ると、そこに奏とまどかが立っていた。
「どうしたの?」
「ああ、この3人が俺を遊びに誘ってもいいぞって言ってきたんだ」
3人が気まずそうな顔をする。
一方奏は嬉しそうに笑う。
「本当? 涼君を誘うなんて3人ともお目が高いわね」
「本当ね。この涼君を誘うなんて」
「2人とも、なんか地味に傷つく」
「それで、行くんでしょ? もしかして今日とか?」
「いや、俺が遊ぶのは奏とまどかが行くことが条件らしい。だから、断ったらキレてきた」
その途端、奏とまどかの目が冷たくなった。
3人を睨みつけている。
「つまり3人は涼君をダシに私たちを誘い出そうとしているってこと?」
「涼君を誘いたいわけじゃなかったんだ」
「1人は同じクラスの木村君だけど、他の人は?」
「4組の佐藤と橋本」
それを聞くと、奏は3人の方を向き、冷たい顔で言い放つ。
「私の大切な友達を馬鹿にするのやめてもらえる?
木村君と佐藤君と橋本君、今後業務連絡以外で話しかけて来ないでね」
「私もそれでお願い。馬鹿にするのもいい加減にしてね。
ほら、4組の人はもう帰ったら。木村君も席に戻って」
呆然とする3人をまどかが追い払った。
「ああ、2人ともありがとう。」
「いいよいいよ。なんか私のせいな気もするし」
「そうそう」
「奏もまどかも悪くないよ。利用しようとしてくる奴が悪いんだよ。
っていうか、あんな奴もいるんだな。」
それから、予鈴がなって奏とまどかは席に戻った。
昼休みになって、涼と奏とまどかの3人は屋上で昼食をとっていた。
奏が忿懣やるかたない様子で言う。
「それにしても、朝の3人は失礼だったね」
「まあ、俺のこの見た目は舐められやすいし、人を惹きつけるとは言えないからな」
「それはあるかもね。もう、諦めて整えれば?」
「そうだな、なんかきっかけになる行事とかないかな。なんか何もない時に突然変えたくない」
「涼君気にしないでしょ、そういうの」
「うーん、周囲の目は気にならないけど、変えてしまうのはなんとなく寂しい気がするんだよね。
ずっと、こうだったから。
だから、過去と決別してやるぞっていうタイミングが欲しいというか?」
「難しく考えすぎなんじゃない」
「それはあるんだけど……なんかなぁ」
「珍しく歯切れ悪いよ」
そこで、奏が思いついたように言う。
「それならさ、球技大会なんかどう?」
「球技大会?」
「そう、球技するなら、どっちみちヘッドバンドするしメガネは外すよね。
だから、前日に髪の毛を切って整えて、メガネを外すの」
「そっか球技大会か。気持ちを変えるのに、ちょうどいいかもしれないな」
「そうだね、球技大会は涼君を見てみんな度肝を抜くよ」
「そこまではならないでしょ」
「「なるよ」」
(まったく、涼君は。でも本音言うと隠しておきたかったけどね。もう仕方ないよね)
奏は周りの女子達が騒ぐところを想像すると、胸がちくりと痛むのだった。
奏の思いとよそにまどかが楽しそうに話している。
「それで涼君、美容室とかあてあるの?」
「いや、行ったことないな」
「じゃあ、奏と私が行っている美容室を紹介しようか?」
「ああ、じゃあ頼むよ」
「じゃあ、20日の金曜日から球技大会だから、19日の木曜日の放課後だね。
4時半くらいにしようか」
「ああ、それくらいでいいかな」
「当日は奏も付き添いで行く?」
「いや、悪いよ。1人で行けるよ」
「私行く。絶対よ」
「そ、そう。じゃあ、お願いしようかな」
「奏が行くと。私も行きたいけど、部活があるかな。残念だけど私は学校で見ることになるな」
まどかが残念そうに言う。
「まどか、そんなに落ち込まなくても大したものじゃないぞ」
「大したものだよ。バスケで見た時から、ずっと髪切ったとこ見たかったんだよ。
やっぱり、1日くらい休んでもいいかな」
「いやいや、休むなよ」
「うー」
そう言ったやりとりをして、昼休みは過ぎていった。
(髪切ってメガネ外したら、色々変わるのかな?)
涼は、自分の前髪をいじりながら1人考えていた。




