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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第29話 お風呂

 涼の自宅の浴室

涼の家の湯船は、大人が2人で入ってもまだ余裕があるくらい広々としている。

その湯船で2人の少女がリラックスしていた。


「はぁー、気持ちいい」

「本当にねー」

「それにしても広いねー、浴室」

「いいよねー」

「それにシャワーも良かった。私オーバーヘッドシャワーって初めてだった」

「私もこの前初めて使った。いいよね」

「うん。奏はまだ涼君と話し始めて1週間経ってないんだよね」

「うん、そうだね」

「それにしては馴染んでるよね。涼君にもこの家にも」

「それは、涼君の人柄かな」

「いい人だよねー」

「本当にね」

「びっくりするくらいのイケメンだったね。目の前でヘッドバンドつけたのに、誰だか一瞬わからなかったよ」

「私も、助けてくれた時、オールバックにしてたから、全然涼君って気づかなくてさ。 

助けてもらったのに、これから何をされるんだろうって警戒しちゃった」

「無理ないよね、あれじゃあ。 私ね、実を言うとすごくドキドキしちゃったの。

見続けてるとやばそう」

「ダメだよ」

「そう言うけどさ、奏は涼君とどうなりたいの?」

「どうって、今はよくわからない。賢治のこともあるし」

「あんな、浮気男のことが忘れられないの?」

「うーん、悲しい気持ちになることはかなり減ってきたんだけど、長いこと一緒にいたから、喪失感みたいなものはやっぱりあるかな」

「奏、そんなこと言ってる間に、私が涼君を好きになったら、涼君に告白しちゃうかもよ」

「え?」

「だって、涼君って、こう言ってはなんだけど、もうすでに家は持ってて、スポーツ万能だし、成績も結構いいんでしょ。

その上に絵に描いたようなイケメンで守ってくれる強さと優しさを持ってるなんて、もう王子様じゃん」

「王子様って」

「私じゃなくても、涼君がイケメンだって知れ渡ったら、さっきも言ってたけど、好きになる子なんて掃いて捨てるくらい出てくるはずよ」

「そうかも」

「だから、早くはっきりさせた方がいいかもよ。今のところ奏が一番涼君に信頼されているポジションにいるんだから。」

「うん」

「私だって、涼君が好きになったら、奏に遠慮しないよ」

「まどか……」


 奏はまどかの隣にいる涼を想像して、ちくりと胸が痛んだ。

(なんでだろう。涼君は私にとって友達のはず。それにまだ話すようになって1週間も経ってないのにおかしいよ)


「まあ、今はまだ応援できるから、安心して」

「でもね、賢治に気持ちが残っているうちに言い寄るなんて涼君に悪いと思うの。

私の気持ちも、まだ友達という感じしかないと思うし」

「まあ、それはあるかもね。だから、賢治君のことは早く整理した方がいいよ」

「分かった」

「それにしても、涼君はこの広い家に1人で生活しているのか」

「そうだね」

「寂しくないのかな」

「それは、あるだろうね。だから、できるだけ顔を出せたらなって思ってるんだ。

私なんかで、変わるかどうかわからないけど」

「奏が来てくれて喜ばない男子はいないよ」

「涼君はそんなんじゃないでしょ」

「奏がシャワー浴びてる時ドキドキしてたって言ってたじゃない」

「言ってたけど、それは女子だったらみんなじゃない?」

「さあ、それはどうかな。私は奏だから余計にそう感じているんだと思うけど」

「そうなのかな」

「今度ご飯でも作りに来てあげれば?」

「それはもう約束してる」

「ほうほう、なんだかんだ言って、やることやってますなあ」

「涼君は食生活がめちゃくちゃだからね。何か手伝ってあげたいと思うんだけど」

「弁当作ってあげれば? 賢治君には作ってあげてたでしょ」

「弁当は、間違いなく早いと思うよ」

「いいんじゃない? 他の女子にアピールできるじゃない」

「でも、それは恥ずかしい。でも、涼君の食事が気になってるから、それもありかもな」

「カロリーバーだけだからね」

「そうなのよ。あれは見ていて我慢できなくなる」

「涼君はお金に困っているわけじゃないんだよね」

「そこは、聞けてないんだ。困っている様子は見えないけど。いつも奢ってくれるし」

「じゃあ、面倒なだけなのかな?」

「食に興味をなくしていたとは言ってたけど」

「そうか、何かきっかけが必要なのかもね」

「きっかけ?」

「うん、それこそ奏がご飯作りに来たり、お弁当作ってあげたりとか。

まあ、私が作ってあげてもいいんだけど」


 まどかがニヤリとして言う。


「なんか冗談に聞こえないからやめて」

「冗談じゃないかもよ」

「もう。そろそろ上がろう。涼君を待たせてるよ」

「はーい」

(まどかはどれくらい涼君に気があるんだろう。まだそんなにないとは思うんだけど、そのうち気持ちが強くなるのかな?)


 服を着てリビングに戻ると、涼が本を読んでいた。


「あ、それ、この間私が紹介した本ね」

「ああ、そうだよ。なかなか面白いね」

「そうでしょ。主人公が熱いよね」

「うん、それとヒロインの剣姫も可愛い」

「うん、可愛いね。読んだら感想よろしくね」

「ああ、分かった」

「それとさ、これってアニメ化されているんだ。今度5期がやるんだよ」

「そんなにやってるんだ。」

「うん、今度一緒にみようよ。サブスクで観れるから」

「ああ、いいね。じゃあ、今度土曜日に奏のうちに行く前にうちで見てから行く? 奏のうちは17時からだろ」

「そうね、じゃあ、その日は私も準備したいから、15時くらいまではいられるかな。

先に戻ればいいから」

「分かった、楽しみだな。」


 まどかが口を挟む。

「いいなー2人で盛り上がっちゃって」

「まどかも来るか?」

「残念ながら部活があるんだ」

「そうか、それは残念だな。まどかは短距離だっけ?

「そう、100メートル」

「選手で入ってるのか?」

「うん、一応入ってるけどこの間県予選で負けちゃったから、関東大会は出れないんだ。」

「そうなんだ、でもまだ1年生だもんな。これからだろ?」

「うん。ところで、今日一緒に運動して感じたけど、涼君は本当に部活やらないの?

なんか、勿体無い気がするよ」

「今のところはいいかなって思ってる。家でトレーニングできるし。

と、言っても奏とバスケやって、今日は3人でクライミングやって、みんなでやるのも楽しいなって思ってるけどな」

「そっか、気が向けばやればいいと思うよ」

「そうだな、ありがとう」


 満面の笑みで涼が返すと、まどかが恥ずかしくなって、顔を逸らす。


「そ、そんなお礼言われることじゃないよ」


 涼が時計を見る。


「みんな、夕飯はどうするんだ? 良かったらピザでもとるけど」


まどかが反射的に喜び、奏は自宅に確認を取ると言った。


「やった! 嬉しい」

「ちょっとうちに連絡して聞いてみるね」



 その後、許可が出たので3人でピザやサイドメニューを注文して、会話をしながら平らげたのだった。


(ワイワイやりながら食べるのがこんなに楽しいなんて。ピザを提案してよかったな)


 涼にとって楽しい放課後になった。


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