第27話 イケメンすぎるよー
放課後
奏とまどかが涼の席までやってくる。
「涼君、お疲れさま」
「涼君、お疲れ」
「奏にまどか、お疲れ」
いまだに恨めしそうな視線を向けてくる男子がいるが、涼は相手をしたって仕方ないと考えているので無視をする。
「これからうちだろ?」
「うん、まどかも私もうちに行って荷物とってきたいから、涼くんち集合でいいかな」
「まどかは奏のうちが近いのか?」
「中学が同じだったからね、割と近いよ」
「そうか、それならそんなに時間はかからなそうだな。
俺もまっすぐ帰って待ってるよ」
「うん、そうしてもらえると助かる」
すると、教室の出入り口の付近から声が聞こえる。
「栗山さんいるかな」
奏は、ちょっと困った顔で、そちらに行く。
「はい、なんでしょうか?」
「お、栗山さん、ちょっと話があるんだけど、これから屋上に来てもらっていいかな」
2人のやりとりを見ている涼とまどか。
「やっぱり奏はモテるんだな」
「そうだよ、奏はすごくモテるんだよ。
あの人の上履き3年の色みたいね」
「学年も超えてモテてるんだ」
「そうね。今までは賢治くんと付き合ってたから、たまにしか言われなかったけどね。
今は別れてて、しかもそれが噂になってるから、このチャンスにって感じで大変よね」
そう話しているうちに、奏が戻ってきた。
「どうだったの?」
「うん、これから用事があるからって断ってきた」
「それで?」
「また来るって。何度来ても断るのにね」
「そうね。じゃあ、気を取り直していこうか」
「うん、涼君途中までみんなで帰ろう」
「ああ、そうしよう」
涼の自宅
ピンポーン
「はーい」
「涼君お待たせ」
「涼君、よろしくね」
「うん、とりあえず上がって」
「「はーい」」
「って、玄関ひろっ!」
「ねー。私もびっくりしたよ」
リビングに行くと、またまどかが驚きの声をあげた。
「テレビでか。なにこれバーカウンター? ソファーもめちゃめちゃ高そう」
初めて見る涼の自宅に興奮するまどか。
「涼君、お父さんとお母さんに挨拶させてもらってもいいかな?」
「え? 挨拶」
「奏、そんなに無理しなくていいよ」
「ううん、ここに来るときは挨拶するって決めてるの」
「そっか、わかった。じゃあ、いこうか」
挨拶という言葉に緊張するまどか
案内された和室には、仏壇と座布団だけが置かれていた。
「挨拶って……」
「そう、うちのお父さんとお母さんはもう亡くなっているんだ」
「そう、なんだ」
「奏、今火をつけるよ」
「私がやるね」
「じゃあ、うん、よろしく」
奏が火をつけて、線香をつけて手を合わせている。
終わった奏が火を消そうとすると、
「私もいいかな」
と、言ってまどかが仏壇の前に出る。
まどかが手を合わせるのを終えると、火を消し戻ってくる。
みんなでリビングに戻る。
「さあ、今日はクライミングだったね。って言ってもボルダリングだから気軽にできるよ」
「おお、楽しみ」
「その前にコーヒーでも飲む?
運動前にコーヒーを飲むと脂肪燃焼効果とか運動効率も上げられるとかあるらしいよ」
「そっかあ、私コーヒーはちょっと。ミルクとか入れてもいいの?」
「いいと思うよ」
「じゃあ、ミルク入りにしてもらっていい?」
「わかった」
「まどかは?」
「私もミルク入りで」
「はいよ」
涼はコーヒーメーカーでコーヒーを作る。
コーヒーがはいったら、3人で談笑しながら、コーヒーを飲む。
「それにしても見た目通り座り心地のいいソファーだね」
「本当にいいよね」
「お父さんがリビングにいる時はゆっくりくつろぎたいって、人だったからね」
「テレビも大きいのは、お父さんが欲しがったの?」
「いや、テレビは最初は85インチの普通のやつだったんだけどね」
「85インチは普通って言わないよ」
「まどか、涼君に普通を求めるのは諦めなさい」
「ひどい言われようだな。まあでも、お母さんが病気で家にいる時間が長くなったから、旅行好きのお母さんに、せめて美しい景色がテレビで見れるように今の110インチにしたんだ。
これ以上の大きさは流石にうちに合わないからね。だからこのサイズ」
「そうなんだ。なんかごめんね」
「いや、いいんだよ」
「さ、そろそろ、庭に行こうか」
「うん」
3人で庭に出ると、当たり前だが驚くのはまどか。
「すごーい。バスケットのハーフコートが本当にある。
あっちは野球のバッティングネットってやつかな。
あっちは、なんだろう。
とにかくなんでもできるね」
「今度まどかもバスケやろうよ。小学生の時やってたんでしょ」
「うん、って言っても奏とじゃ実力がね」
「楽しかったらいいんじゃない?」
「そうだね」
3人は軽く準備運動をしてから、ランニングに行った。
帰ってきて、毎日走っている涼と陸上部のまどかは平気だったが、
奏はバスケットコートで、仰向けに倒れる。
「だめ、もう。2人とも速すぎ」
「奏はブランクが長いもんね」
「ほら奏、スポドリ」
「ありがとう涼君」
「まどかも」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「涼くんは速いね。帰宅部とは思えないよ」
「だって、毎日トレーニングは欠かせないからね」
「どんなことやってるの?」
「5キロ走って、シャトルランをこのコートでやって、自重トレーニングやって、
懸垂とか鋼鉄棒を使ったトレーニング一通りやって、バスケのシュート練習と
ドリブル練習とバッティング練習サッカーのシュート練習ドリブル練習
空手の鍛錬とクライミングとかかな。他にも色々あるけど、その日によって
違うよ」
「なんで、そんなにやってるわけ?」
「親父の教えで、いろんな基礎練をやっておけば、体が操りやすくなるっていうのがあって、それに従って、ずっとやってきたから」
「部活は入る気ないの?」
「うーん、うちお母さんが入学式の日に亡くなったんだ。
それで、なんだかんだやってるうちに部活入るって時期でもなくなっちゃってね」
「あ、そうかごめんね」
「ううん、いいよ。それに今は奏が色々一緒にやってくれるから。
それだけで楽しいんだ」
「私も楽しいよ、涼君」
「そう言ってくれるとうれしいよ奏」
「それじゃ、息も整ってきたみたいだし、ボルダリング始めようか。
……そうだ忘れてた。走る前にとるはずだったんだけどな」
涼は、メガネを外し、ヘッドバンドをつけた。
その瞬間、まどかが固まった。
「どうしたの、まどか?」
「な……イ……ン」
「どうした、まどか」
「なに、このイケメン」
まどかが絶叫した。
悟った顔で奏が微笑んだ
「ね、涼くんはイケメンだって言ったでしょ」
まだ納得できなそうに、まどかが叫ぶ。
「イケメンすぎるよー」




