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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第21話 賢治との遭遇  

「奏、こんな時間まで何してたんだ」


 賢治が不審そうな顔で立っている。


 奏と涼は、不意の遭遇にびっくりして言葉を出せないでいた。


「こんな時間まで何してたんだ」


 もう一度賢治がいう。

ようやく立ち直った、奏が口を開く。


「涼君のうちに遊びに行ってたのよ」

「涼?」

「羽山涼君」

 

 奏が涼を紹介する


「どうも」

「ああ、この間俺と奏が話してた時に割り込んできたやつか。

それで、そんな奴が奏を家に引っ張り混んで何してたんだ」

「ちょっと賢治、変な言い方しないで」

「だって、奏はこいつと知り合ってまだそんなにたってないだろ。

それが家まで連れて行くなんて、下心しかないじゃないか」

「涼君はそんなことしない」

「もう下の名前で呼び合ってるのか」

「いけないの?」

「奏、俺以外の男を今まで下の名前で読んだことも呼ばせたこともないじゃないか」

「涼君とは仲良くなったから」

「早すぎるだろ」


 賢治は苛立ってきていた。


「早いとか関係ないよ。私が涼君にはそうしたいし、そうしてもらいたかっただけ」

「お前ら付き合ってるのか?」

「付き合ってないよ」

「だったら、奏が下の名前で呼び合うのなんておかしいだろ」

「なんで? 賢治のことだって下の名前でよんでるじゃない」

「俺たちは幼馴染だろ」

「幼馴染でも付き合ってないじゃない」

「この間まで付き合ってたじゃないか」


 賢治のイライラは加速する。

なぜこの幼馴染は今まではなんでも聞いてくれてたのに、こんなに反抗的なのかがわからないと言う気持ちでいっぱいなのだ。


「ええ、あなたが二股をした上に振ってきたわ」

「でも幼馴染ってことに変わり無いだろ。

俺たちは下の名前で呼び合ってもおかしくない」

「私にとっては涼君と下の名前呼びでもおかしくないよ」

「おかしいだろ」

(埒が開かないわ。話を変えようかしら)

「ところで、話しかけてきたって、何か用事?」

「奏が、男と歩いていたから心配で声かけたんだ」

「心配ありがとう。でも涼君は心配いらないわ。いつも私を助けてくれるから」


 賢治は思った。奏がこういう態度をしているのは涼のせいだと。

イライラが最高潮に達した。

自分が二股した上に振ったということは完全に棚上げしていた。


(こいつが、奏をたぶらかしてるんだな。奏は幼馴染の俺が守らないと)

「お前、奏に近づくんじゃねえよ」

「ちょっと、賢治!」

「なんで、お前にそんなこと言われないといけないんだ?」

「奏は、俺の幼馴染だ。俺が守らなきゃならないんだよ」

「いや、守るどころか傷つけたじゃないか」

「あれは、仕方ないだろ。ああするしかなかったんだ」

「何がああするしかだ。奏はどれだけお前に尽くした?

お前に二股された挙句振られて、今でも悲しんでるんだぞ。

そのくせに振ったお前が、奏の行動を縛ろうとしてくる。

一体、何様のつもりだ」


 賢治は言葉に詰まるが、何か言い返さないといけないと思い、

なんとか言葉を振り絞った。


「でも、俺たちは幼馴染だ」

 

 涼は心底呆れた。

幼馴染だからどうだというんだ。一方的に捨てた相手じゃないか。

それなのに、この男はどうして、奏に固執する?


「だからどうした? 幼馴染なんて、とどのつまり昔からの友達だろ。

友達同士が付き合い始めて、浮気した上に振った。

そんな奴がいつまでも友達でいる権利があるのか?」

「うっ、で、でも、俺は奏の母親の初音さんに奏を頼むって言われてるんだよ。

だから奏を守らないといけないんだよ。お前とは違う」


 涼は、呆れを通り越して侮蔑の表情を浮かべる。


「お前、奏のお母さんに奏を二股した上に振ったけど、これからも奏を守りますって、言えるのか?」

「そ、それは」

「お前すげえな。奏はそんなお前の態度で、現在進行形で傷ついてるぞ。

そんなことも気づかずに奏を縛るようなことをよくもまあ言えるよな。」

「……」

「奏は優しいし、お前に対してまだ情も残ってるから、あまり言えないけどな、お前が奏をこれ以上傷つけるなら俺が許さないぞ」

「涼君……」

「……」


賢治は何も言い返せなかった。

一方奏は、正直言って賢治と話すことが怖くなっていたので、涼が庇ってくれることに嬉しさを感じている。


「あと、お前そんなんでいいのかよ」

「な、何がだ」

「今の彼女が、元カノに付き纏ってるって知ったらどう思う?」

「る、瑠美はそんなこと思わない」

「すごいな、そう言えるなんてな。でも実際どうなのかな?

あんまりいい気しないと思うぞ」

「ふん、お前には関係ないだろ」

「なら、奏の交友関係のことも関係ないだろ」


 賢治は悔しそうに、地面の小石を蹴り顔を上げる。


「今日のところは引き下がってやるけどな。奏に近づくのは今回限りにしろよ」

(まだ、言うのかよ。)

「それに応える義務はないね。早くいけば?」

「ふん。奏、また一緒に遊ぼうな。じゃあな」

(メンタルつよ。この後に及んで奏にアプローチしてる)

「……」


 しかし、奏は下を向いて何も答えない。

賢治が見えなくなるまで、二人は無言だった。


「奏、ちょっと落ち着いてから家に帰らないか。そこで缶の紅茶でもどう?」

「うん、そうしたい。」

「奏は、缶の紅茶なら何が好き?」

「私はロイヤルミルクティーがいい」

「お、結構甘いの行くね」

「涼君は?」

「俺はブスブラック一択だな」

「そっか、そういえば今日は紅茶飲んでたけど、私に付き合ってくれてたんだよね」

「まあ、それもあるけど、たまには紅茶もいいと思ってさ」


 話しながら、自販機からロイヤルミルクティーと隣の自販機からブスブラックを買う。

涼は、もっとブスブラックが普及してくれればいいのにと思っている。


「どうしてブスブラック一択なの?」

「各社ブラックを出してるけど、香料が入っていないのはブスブラックともう2〜3社

だけみたいなんだ。しかも他の無香料の会社はマイナーな会社だから、どうしても味が落ちちゃうんだよね」

「香料が嫌いなの?」

「一度香料を意識してしまったんだけど、そうしたら気になって気になって。

香料入りを飲むと気持ち悪くなるようになってしまったんだ」

「そうなんだ」

「奏は香料を意識しないように気をつけてね。選択肢が減っちゃうから」

「そう言われると気にしちゃうよ」

「それもそうか。近いうちに俺の仲間になってしまうかもな」

「ふふ、涼君の仲間なら悪い気しないかも」


 奏は涼を見つめながら優しく笑った。


「っ! 口説いてるの?」

 

 涼は顔を赤くしながら、叫ぶ。

 奏はイタズラっぽく笑う。


「さあ、どうでしょう?」

「そ、そうきたか。まあ、奏が俺を口説く理由もないか」

「そうでもないかもよ。涼君は素敵だと思う」

「やっぱ。口説いてんの?」

「内緒」


 わざとらしく、奏がウインクしてくる。


(やば、奏がウインクすると可愛いすぎる)


 いつの間にか、こわばっていた奏の顔も緩んでいた。


「大丈夫だったか?」

「うん、涼君が庇ってくれたから」

「そっか」


 何が? と聞き返すことなく話が進むことに、通じ合っている気がして、涼の頬がわずかに緩む。


「庇ってくれてありがとうね。嬉しかった」

「それならよかった」

「本当だったら、私がもっと強く言ってしまえばよかったのに、どうしても言えなくて」

「今はまだしょうがないから、焦らないでいいよ」

「うん」

「しかし、大山は奏に固執しているな」

「うん、私もびっくりしちゃった。私のことなんかどうでもいいと思ってたのに」

「これからも付き纏ってくる可能性があるから、気をつけてくれよ」

「うん、わかった」

「あ、でも、大山が絡んでくるってことは、奏には嬉しいのかな?」


 涼が、探るようにいう。

 

「本当だったら、嬉しいはずなんだけど、今日の感じは嫌だった」

「そう感じたんだ」

「うん」

「うちの人は大山と別れたって知ってるんだっけ?」

「うん、この間話した。」

「なんだって」

「お母さんは何も言わなかったけど、多分怒ってる。妹なんてもっと怒っててね。

今まで賢治お兄ちゃんって言ってたのに、あの人呼ばわりになっていたよ」

「みんな奏の味方なんだな。よかったよ」

「うん。あ、そうだ。涼君今度うち来ない? お母さんが涼君にナンパから救ってくれたお礼をしたいんだって」

「そんな、お礼なんていらないよ」

「涼君はそう言うと思ったけど、お母さんも妹も涼君に会いたいのよ。だめかな」

「そうか、それなら今度行こうかな」

「じゃあ、明日は私は予定あるから、来週の土曜か日曜でどう?」

「うん、どっちも空いてるから、そっちで決めて」

「わかった」

「もう大丈夫そうだね」

「うん」

「じゃあ、行こうか」


そう言って、涼は奏を家にまで送り届けた。

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