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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第13話 初めての

 涼は奏と別れてから、自宅に着いた。

自宅は大きな一軒家。6LDKの家だ。

庭もバスケットコートがすっぽり収まるくらいの広さがあり、そこにトレーニングの器具を設置している。 

この広さに一人で暮らしている。

叔母には一緒に暮らそうと言われていて、自身寂しいと感じているので、それもいいかと思っているが、なかなか踏ん切りがつかないでいる。

やはり思い出が詰まった家なのだ。


「ただいま。って言っても誰もいないんだけどな」


 手洗いうがいを済ませてから、自室へ行って制服からトレーニングウェアに着替える。

リビングに降りて、コーヒーを淹れる。

帰宅後にトレーニングをしているのだが、30分前にコーヒーを飲むことによって、トレーニング効果が高まると聞いてから、始めたルーティンだ。


 コーヒーを飲みながら、今日のことを考える。


(栗山さん、告白されてたな。結構きつい返し方してたけど、男子にはあんな感じの対応なのかな)


 奏の毅然とした態度を思い出す。


(昨日のナンパの時は弱々しかったから、それから考えたらだいぶ回復したのかな)


 そう思いながら、コーヒーを飲み干す。


 それから動画サイトで、ラジオ体操を検索する。

以前は、トレーニング前には静的なストレッチを行なっていたのだが、最近ではあまり良くないと言われているらしい。

動的なストレッチならいいらしいので、1つずつ覚えようとしたが、少し面倒になって、すでに覚えているラジオ体操をすることにしている。


 ラジオ体操も真剣にやると割と汗が滲んでくるし、心拍数も上がる。気持ちもいいので最近のお気に入りだ。


 終わったら、トレーニングシューズを履いて、5キロのランニングに行く。

スマホアプリで記録しているので、走った距離や場所、タイムも記録できて便利だ。

自宅にもランニングマシンはあるのだが、やはり外を走った方が気持ちいい。


 以前から続けていたので、最近では余裕を持って走っても30分かからずに帰って来れる。


(ずいぶん余裕な感じがするけど、今度本気で走ってタイム測ってみようかな)


 ランニングが終わったら、呼吸を整えながら筋トレの準備に入る。


 昔父親が設置してくれた高鉄棒で、懸垂をする。

そのあとは足を九十度上げて下したり、上げた状態で左右に振ったりして腹筋を鍛える。

そのあと少しインターバルを入れて、マッスルアップ、フロントレバーなどをこなす。

高鉄棒はさまざまなトレーニングをできるので、自宅にあるのは本当に助かる。


 高鉄棒でさまざまなトレーニングをしたあとは、ヒンズースクワットで足をある程度動かした。

そのあとは限界の30リットルまで入れたウォーターバッグでスクワットなどをひとしきり行う。

 

 ロードワークからここまでで1時間半から2時間くらいかかる。


 庭には他にバスケットのハーフコート クライミングウォール バッティングネット(フロントトス付き)巻藁 格闘技用砂袋などさまざまな器具がある。

これもかつて父親が用意してくれたものだ。

父親曰く、『コーディネーション能力をつけておくのは大事』と言うことで、さまざまなスポーツをかじることでそれが達成できるらしい。


 これらを用意できるのは、羽山家が裕福だった証だろう。


 そう言ったものを使ってさらに1時間半ほど行うと、もう息が上がる。

これをほぼ毎日行っている。


 中学でも部活をしていなかったので、母が心配しないように欠かさずにこれらを使ってトレーニングをしていた。

母が亡くなってからも、いろいろやる気をなくしていたが、少しでも気が楽になったので、トレーニングだけはしていた。


 トレーニングが終わったあと、プロテインを飲む。


 ここまではとてもいいのだが、涼はこの後に重大な欠陥を抱えている。


「メシは……デリバリーのピザでいいか」


 食事に頓着しないのだ。

母が闘病中の時、食事は涼が必ず作っていたから、ヘルシーな料理も普通の料理も作ることができる。

しかし、自分一人だとやる気がしないのだ。

それに加えて、一人の食事が味気ないため、何食べても一緒だと思っている。


 涼は自分でも気づいていないくらい疲弊していた。

だから、自分のことはどうでもいいのだ。

そして、それを正してくれる人もここにはいない。

これでは、悪い方に向かって仕方ない。


 唯一の救いはトレーニングを欠かさないことで健康を維持していることだった。


(前向きに生きようって決めたんだけど、食事はやっぱり面倒だな。

別にサプリとか飲んでるし、大丈夫だよな)


 風呂から上がった頃にピザが届いた。

食べながら、思い出す。


(昨日、栗山さんと食べたステーキ美味かった気がするな)


あまり、美味しいとは思えないピザを食べ進める。


(以前、みんなで食べたピザは美味しかったもんな。

今の俺の心境のせいかな。やっぱり寂しいのか。

おばさんのところにお世話になることも考えた方がいいのかな)


そう考えているとスマホが揺れWIneの通知が表示される。


「栗山さん……」


奏からのチャットだった。


『こんばんは、羽山君』

『こんばんは栗山さん』

『今大丈夫?』

『大丈夫だよ。初めてのWineだね。何か用事?』

『特に用事はないんだけど、この時間になるとやっぱり寂しくなっちゃって』

『ああ、そうだよね』

『少し、チャット付き合ってくれる?』

『いいよ』

『栗山さん、その後はどう?』

『さっき言ったように寂しいけど、家族にも話したから、気を遣ってくれてるの』

『よかったね。大山とは幼馴染なんだよね』

『うん、そうだよ』

『ってことは、家族も大山のこと知ってるの?』

『うん、知ってる』

『じゃあ、家族も怒ってるでしょ』

『うん、妹なんか賢治お兄ちゃんって言ってたんだけど、もうお兄ちゃんって呼ばないって』

『そうなんだね。あ、妹いたんだ』

『うん、両親と私と妹で4人家族』

『そうなんだ。いいね』

『羽山君は?』

『ごめん、今のなし』

『デリカシーなかったよね。ごめんね』

『いいよ。気にしないで。同盟者でしょ。どっちみち話してるよ』

『うん』

『俺は元々一人っ子で、お父さんは中1の時に事故で亡くなってるんだ。

お母さんはこの間亡くなってるから、今一人暮らし。』

『はっきり言うと寂しいかな』

『そうだよね』

『特に一人で食事とかはね。別に食べなくていいかなって思っちゃう』

『ダメだよ食べないと』

『そうなんだけどね』

『今度一緒に食べてあげるね』

『あ、よかったらだけど』

『ありがとう、嬉しいかも』

『うん、それなら今度だね』

『明日、また一緒に帰る?』

『うん、明日カフェに寄らない?』

『いいよ。同盟会議だね』

『うん』

『わかった。あ、そろそろ勉強するよ』

『おお、真面目』

『栗山さんもするんでしょ』

『うん、そうだけどね』

『それじゃあ、また明日』

『うん、おやすみなさい』

『おやすみ』


 スマホをおいた涼はいつの間にか寂しさがなくなっていたのに気づいた。


 同時刻、スマホをおいた奏は、自分の少し大胆な行動に驚いた。


(賢治以外の男の子を誘うなんて初めて。それに寂しさもない)


 勉強しようと机に向かう奏は気づかないうちに微笑んでいた。

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