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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第101話 カラオケの帰り

「いやー、羽山にあんな弱点があったとはねぇ」


 カラオケの帰り、向井が言う。

涼は苦笑いしている。


 それに対して3人組女子が言い返す。


「それでも堂々と歌っていたのはいいでしょ」

「積極的なのはポイント高いよ」

「味のある歌い方だったし」


 向井は、涼を貶めるつもりは全然なかったので、返答に困ってしまう。


「まあまあ、向井は話を盛り上げようとして言っただけだし」

「まあ、羽山くんが言うなら」

「いいけど、歌を笑うなんてよくないよ」

「一緒に遊べて楽しかったでしょ」

「ああ、悪かったよ。気をつける」

(3人組の名前がやっとわかった。山崎千尋 川本はすみ 神野寧々っていうらしいな。あと2人は柿沼もえ 滝橋友紀ね)


 これからはできるだけ、クラスメイトの名前を覚えようと思った。


 涼は、初めてのカラオケで、勝手が分からず、極めて音痴だった。

それを自分で認めた上で、果敢に歌った。

恥ずかしかったが、多分歌わない方が盛り下がると思ったからだ。

おかげで、同じ部屋のメンバーとは距離が縮まったような気がした。


 山崎千尋が奏に声をかける。


「ねえ、栗山さん、良かったら奏ちゃんって呼んでいい?」

「うん、いいよ」

「やった。私のことは千尋って呼んで」

「わかった、千尋ちゃん」

「私もいいかな。はすみって呼んで」

「はすみちゃんね」

「私は寧々って呼んで」

「うん、寧々ちゃん」


 3人組は嬉しそうにしている。

奏も満更ではなさそうだった。

3人はお互いの顔を見合わせ、意を結したようにして、山崎千尋が代表して奏に言う。


「奏ちゃん、もしいいって言われたらなんだけど、羽山くんのこと下の名前で呼んでもいいかな?」

「え? なんで私に聞くの?」

「奏ちゃんに話通すのが筋だと思ったの。私たち、羽山君を推してるんだ。だから、下の名前で呼べたらって思って」

「う、うん、私が許可するのも変かもだけど、涼君がいいって言うなら」

「ありがとう。早速羽山君に聞いてみるね」


 3人組は喜んで、涼のところに行った。


「羽山君、あの」

「何?」

「「「涼君って名前で呼んでいいですか?」」」

「いいよ」

「「「きゃー」」」

「わ、私のことは千尋って呼んで。呼び捨てでいいから」

「ああ、わかった千尋」

「私のことははすみって呼んで」

「ああ、はすみ」

「私のことは寧々で」

「わかった、寧々」


 3人組はキャッキャと喜んでいる。


 向井が羨むように言う。


「羽山、モテるな。歌下手でも」

「下手で悪かったな」

「今日は俺の方がかっこよかったのに」

「そうだな」


 そこに奏が来た。


「歌が下手でも堂々と歌う涼君はかっこかわいかったよ」

「羽山はそう捉えられるのかー」

「ありがとうな、奏」


 少し落ち込んだ向井が復活して、全員に向けて言う。


「これから、食事に行く人ー」


 ほぼ全員が手を挙げ、涼と奏も手をあげた。


 近くのイタリアンのファミレスで食事をした。


 涼にとっては、クラスメイトと行くカラオケもファミレスも初めての経験で、とても楽しかった。

また、こういうことをやりたいなと思った。



 その夜。

奏と天音は話していた。


「お姉ちゃん、明日はお兄ちゃんの従姉妹が来るんだよ。しかも妹キャラの」

「うん、そうだね」

「私はどうしよう」

「どうしようって言ってもね」

「キャラが被ってるから行かない方がいいかな?」

「あなた行く気でいたの?」

「え? もちろんだよ。お兄ちゃんのうちは私たちのライフスタイルでしょ。誰かが来たからって行かないのは変じゃない?」

「確かに、毎日の生活をするって言う意味では、行くのは当然ね」

「そうだよ」

「でも、よく考えると、あんまり入り浸るのはやっぱり迷惑になるわ」

「それを決めるのはお兄ちゃん。今の時点でお兄ちゃんはそう思っていないんだからいいの」

「そうかしら」

「そうよ」

「じゃあ、明日も早朝ランニングに行こうかしら」

「私も部活は午後からだから行く。朝ごはんよろしくね」

「分かったわ。ところで、涼君の誕プレ考えた?」

「『私』って言うのはどうかな」

「あなたね」

「冗談だよ。まだ決まってないんだ。テストもあったし」

「そうなのよね、知ったタイミングが悪かったわ」

「お兄ちゃん、欲しいものとか何かあるかな?」

「あの人、欲しいものは自分で買えちゃうからね」

「あ、私はマグカップにしようかな。いつもコーヒー飲んでるし」

「それいいじゃない」

「ついでにペアカップにしちゃおうかな」

「それは……」

「もう、やきもち妬かないでよ。お姉ちゃん差し置いて買わないよ」

「もう」

「でも、そうね。お姉ちゃんがペアマグカップを買ってあげれば喜ぶと思うよ」

「付き合ってもないのに、図々しいでしょ」

「いや、絶対に喜ぶから」

「いや、それはできないよ」

「じゃあ、もし私がマグカップを買ってあげて、そのあとお姉ちゃんが付き合いだしたら、ペアカップ買えなくなっちゃうじゃない」

「そ、それは」

「リーズナブルで、思い出になって、実用的。2人の距離も近くなる。理想的な誕プレじゃない?」

「そう言われると、そんな気がしてきた」

「そうでしょ」

「でも、重すぎないかな?」

「お姉ちゃん、信じて。お兄ちゃんは絶対に重いって思わない。お姉ちゃんが渡すならね」

「天音がそう言うなら、そうしてみようかな」

「うん、そうして」

「ありがとうね、天音」

「うん。……あ、私の誕プレはどうしよう」

「天音がマグカップって言いだしたんだもんね」

「私はスポーツグッズにしようかな。ヘッドバンドとかみたいなの」

「ああ、いいかもね。毎日使ってるし」

「ケーキとか当日必要なものも考えないとね」

「まどかとありささんも通話で話そうか」


 姉妹は涼の誕生日プレゼントやケーキなどを、まどかやありさまで巻き込んで、遅くなるまで話し合っていた。

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