第100話 テスト期間終了
涼は今までないくらいに勉強していた。
奏との勝負があったからだ。
とは言っても、勝って何かいうことを聞かせたいとは思っていない。
とにかく勝ちたい一心で、勉強に取り組んだ。
一方、奏も必死に勉強していた。
こちらは何かに集中してないと、頭の中が涼のことでいっぱいになってしまい、自分がポンコツになるのが分かっているからだった。
とにかく2人とも、涼の家で、集まってする勉強の他に自分の時間も使って勉強した。
そうして、テスト週間がやってきた。
テスト期間中は、毎日2時間か3時間で終わるために早く帰る。
そして次の日のテスト対策をする。
という毎日を過ごしていた。
「涼君って、苦手な教科はないんだっけ?」
「うーん、特にないかな。奏は?」
「私も特にないな」
「まあ、奏の場合は当たり前か、学年主席だもんな」
「うん、今回も涼君から主席の座を守ってやるんだから」
「いーや、今回は俺が勝つぜ。首を洗って待ってろ」
奏がパシパシと叩いてくるので、涼も負けずにパシパシと叩くことにする。
「いやー君たち本当に仲良いね。ここで、みんながいっしょに勉強しているって忘れてるでしょ」
ありさの声に涼と奏がハッと周りを見ると、天音とまどかとありさがジト目で見ていた。
「えーと、天音は明日で期末終わりかな?」
「あからさまにごまかした……うん、終わりだよ、お兄ちゃん」
「そっか、天音がいっしょに勉強するのは今日までだな」
「うん、明日から部活始まるから」
「そっか、頑張れよ」
「うん、ありがとう」
そんな天音を見て、ありさが言う。
「天音ちゃんって、涼君に優しいよね」
「そうですか? あ、でも男子にそんなに優しくないかも。お兄ちゃんは特別ですからね」
「そうなんだ。君は気持ちをまっすぐに言えて、私には眩しいよ」
「そんな、ありささん、ちょっと年寄りくさいですよ」
「バリバリのJKを捕まえて、年寄りとは失敬な」
「ごめんなさーい。じゃあ、ありささんって好きな人いるんですか?」
「いや、今はいないなー」
「いいなとか言う人はいないんですか?」
「いいなって言う人は最近現れたよ。まあ、叶わないと思ってるけどね」
「えー、誰ですか?」
「あ、私も気になる」
まどかも興味津々だ。
いきなり始まってしまった恋バナに、涼はここにいていいのかどうか迷った。
奏は自分が振られないように息を潜めている。
「それは言えないな。万が一本人に知られてしまったら、せっかくの居場所を失ってしまうからね。
それに、私のは恋とは程遠い、憧れのようなものだから、あまり恋バナにはならないよ」
「そうなんですね」
「おーい、勉強に集中しようぜ」
「「「はーい」」」
ありさの気になる人が謎のまま、またみんなは勉強に集中していった。
そうして、過ごしたテスト期間も、最後のテストが終わり、ようやく解放された。
テスト最終日は部活が休みの部もあれば、大会を控えているため部活がある部もある。
そんな中、今日は部活がないクラスの中心人物の向井透が声を上げた。
「部活がないみんな、期末テストの打ち上げ行こうぜ」
「え? なになに? どこ行くの?」
「カラオケかな」
「いいね、行きたい」
「俺も行きたい」
そんな中、涼は自分とは関係ないとばかりに、帰る支度をしていた。
そんな涼に、3人組の女子が近づいてきた。
「羽山君、打ち上げ行く?」
「ん? 考えてなかったな」
「じゃあ、行こうよ」
「行こう行こう」
「楽しいよ」
「うーん」
考えたあと、奏の方を見る。
奏も多くのクラスメイトが集まっている。
(奏はどうするんだろう。行くなら俺も行かなきゃ)
他の男子と楽しく騒ぐ奏を想像したら、嫌な気分になった。
奏は奏で、どうしようか考えていた。
(涼君はどうするんだろう。涼君が行くなら、隣は私が確保しないと。
って言うか、すでに女子に囲まれてるし)
涼の周りの女子を見てヤキモキしていると、涼が近付いてきた。
「奏」
「何、涼君」
「打ち上げ行くか?」
「涼君はどうするの?」
「奏が行くなら行こうかと思ってな。行かないなら行かない」
奏はそれだけのことで、とても嬉しくなる。
満面の笑みで、答える。
「それじゃあ、いっしょに参加する?」
「ああ、分かった参加する。」
3人組が聞いてくる。
「え? 行くの」
「うん、行くよ」
「「「きゃー」」」
「よろしくね、羽山君」
「栗山さんもよろしくね」
「羽山君 栗山さん楽しみだね」
3人とも大喜びだった。
(この子達、涼君が私に聞いてから行くって決めたのに、ヤキモチとか妬かないのかしら?)
奏は、知らなかったがこの3人もしくは5人は半ば涼を推しているようになっていて、一緒の時間を共有できれば満足だった。
涼と奏の仲は認めている。
ちなみに、この3人もしくは5人は奏とまどか以外が涼に近づこうとすると、牽制して近づけないようにしている。
こうして、カラオケに行く人14名で向かったのだった。
「まどかもこれれば良かったのにな」
「まどかは大会が控えているからね」
「そうだな、まどかには悪いけど楽しませてもらおうか」
「うん、そうだね」
しかし、カラオケに着いて揉めることになった。
パーティールームが借りられなくて、メンバーを半分ずつに分けないといけなくなってしまった。
これには大いに揉めてしまった。
男子は奏と同じ部屋がいいし、女子は涼と同じ部屋がいい。
男子女子半々だから、このままだと、涼ひとりに女子6人 奏ひとりに男子6人の部屋ができそうだった。
もちろん、涼と奏狙いでない男子女子もいるが、少数派なので、あまり意見が聞かれない。
(悪いけど、わがままを通させてもらおうかな)
「この状況なら、俺は奏と一緒の部屋がいい」
そう言うと、奏も嬉しそうに続いた。
「私も涼君と同じ部屋がいい」
それに3人組も続いた。
「栗山さんと、羽山君は同じ部屋にして」
「そうそう、その方がいい」
「絶対そうして」
これで、部屋割りが決まった。涼と奏と向井ともう1人の男子。あと、ちゃっかり3人組もいっしょだった。
もうひとつの部屋の男子からは不満の声もあったが、奏がそうしたいと言っていたので、強くは言えなかった。
これで、涼と奏は楽しくカラオケをしたのだが、涼の歌は未来道具を使う猫のロボットの話に出てくるガキ大将並みに、上手だった。全員の目が点になったのは言うまでもない。
(ふふふ、歌の微妙な涼君かわいい)
涼のことならなんでもかわいいと思ってしまう奏だった。




