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怨霊の呪殺

     ………………


 重吾たちは暗い通路をしばらく進み、次なるホールの淡い輪郭を認めていた。三本が感知によってホール内で待ち構える様々な悪霊たちの存在を悟る。


 「コブラのような頭の人型3体……人型の……女のような化け物が2体」


 三本の発言と共に後衛組が流れるように魔術を用意、前衛組は闇の中で蠢く蛇と異形の女たちの輪郭を捉える。三本の電撃が三体の蛇に飛ぶがにひらりと避けられる。そして悪霊たちは暗がりから前衛たちに真っ直ぐ向かっていく。

 全員冷静にステータスを参照。


 ナーガ HP1500/1500

 ・|戦闘点《BATTLE POINT》:620

 ・|知力点《INTELLIGENCE POINT》:630

 ・|感知点《SENSE POINT》:600

 ・|予知点《PRECOGNITION POINT》:650

 ・|技能点《TECHNIC POINT》:990

 『炎魔術』『毒牙』『毒液』『呪い』を使用する。


チュレル HP4000/4000

 ・|戦闘点《BATTLE POINT》:330

 ・|知力点《INTELLIGENCE POINT》:800

 ・|感知点《SENSE POINT》:400

 ・|予知点《PRECOGNITION POINT》:300

 ・|技能点《TECHNIC POINT》:580

 『呪い』『呪詛』『呪殺』を使用する。


 ステータスから靖穂は反転回復魔術を行いつつ分析を行う。

 ――チュレル……。あの膨れた腹を持つ足が逆についた……中東系の顔立ちの女性の『悪霊』は『呪殺』を使う……? 体力も多いし知力も高い……!

 靖穂はチュレルに向け魔術を放つ。ヨタヨタとぎこちなく動くチュレルの一体は為す術なく270のダメージを受ける。

 ――威力はいまいちだけど……チュレルは魔術で倒すべき!


 「前衛組はナーガへ集中、後衛組は前衛組との距離を近く保ちつつチュレルに集中攻撃!」


 指示を受け、重吾たちは真っ直ぐ向かってくるナーガたちへ戦闘準備を開始。

 同時に國山先生が反転回復術をチュレルに精確に当て320のダメージを与える。続いて三本の電撃がヨタヨタと足を引きずるようにうごめくチュレル二体を襲いそれぞれ630と550のダメージを与える。

 順調にダメージを稼ぐ中、重吾たち前衛組も機敏に動くコブラの頭を持ち、人間の身体を持つナーガたちにそれぞれ攻撃を行う。

 金田はバットで向かってくるナーガを殴りつけるが、すんでで避けられ、そのコブラの頭から繰り出される噛みつきに襲われる。


 『ガキィイン!』


 大きく開かれた口と鋭く、毒液に塗れた牙がバットで防がれる。だが、金田の顔に数滴の毒液が降りかかり、金田は10のダメージを受けた。

 ――なんて毒だ……直撃はマズい!

 

 重吾は得意の弱点突きを蛇の長い首のある一点に向け放つが、機敏な動きにより避急所を外される。だが、重吾はそれでもお構いなしにナーガの身体に突きを乱打。三発の攻撃によって計550ダメージを削り取る。

 ナーガは予知による急所突きのズラし対応に追われ、防戦一方。重吾は更なる削りを狙いナーガの胸に拳を向ける。が。


 『ブシュウウウッ!』


 ナーガの突然の毒液噴射に重吾は思わずそれを避ける。その隙を敵は見逃さない。


 『ガッ!』


 ナーガの拳が重吾の腹に入る。21のダメージ、更に何らかの言語の呟きが重吾の耳に入る。重吾は怯みかけた自分の身体を無理矢理動かし、後方へ飛び退く。だが、相手のナーガはそれを見越していたかのように、詠唱を完了。『呪い』を重吾の着地予測地点に置き、難なく重吾を捉えた。

 ――予知が高い……! 数も……HPはもうすぐ削れるのに……!


 稲葉さんはナーガに対しスピードによる翻弄を画策。ステップを挟みつつ左右から変則的な蹴りを繰り出しナーガの鱗に覆われた首や膝、足首などに的確に攻撃を行う。ナーガはその速度を前に防御姿勢をとり、全ての攻撃を受け続けて計210ダメージを受ける。

 ――何か……奇妙な感覚……完全に防御の姿勢に入っている。何故? でも詠唱の声は……。

 稲葉さんはその気づきにより冷静にナーガの全身を見る。そして、発見する。そのナーガの手、防護姿勢をとり、頭部を守るように前に出された腕、その先にある手は幾つかの印相を連続で示していた。

 そこから、魔術結合が発生。稲葉さんの元へ飛ぶ。

 

 『ゴォオオオオオオ……!』


 その魔術は『炎』稲葉さんは炎に巻かれ、毎秒2ダメージを受けることとなる。


 『バチバチバチィイイッ!』


 三本の電撃がゆっくりと近づいて来るチュレルたちにほとばしる。既にどちらのチュレルも靖穂の反転回復魔術と電撃魔術によりそれぞれ1800と1920までHPを削られていたが、前衛組のナーガへの苦戦を鑑みて、靖穂は方針を転換。


 「三本先輩だけチュレルに集中してください、私と先生は前衛を……」


 その言葉を聞く前から國山先生は金田のナーガに拘束魔術を行い、足止めを行いつつ、重吾の呪いを解除に回っていた。靖穂はすぐに稲葉さんの解呪に向かう。だが、三本と國山先生はそのとき『チュレル』が強力な魔力を帯び始めたのを察知し、危機を感じた。三本は電撃魔術を急いで用意する。

 ――何か来る……!


 「キィイイイイイイエエエエエエエエエエ!!」

 

 突如、二体のチュレルが金切り声を上げる、解呪された重吾はお構いなしにナーガに攻撃を加え310のダメージを与える。だが、他の面々はその突然の響きに驚愕し、そして、危機を察知して後退し始めていた。


 その響きの一瞬後、チュレルの一体は重吾に、もう一体は稲葉さんに『呪い』を繋ぐ。それぞれの解呪を担当していた國山先生と靖穂はその結合を見たとたんに察する。

 『すぐに解呪できない!』


 そしてその結合の解呪を二人が取り掛かり始めたその瞬間、チュレル二体の『呪殺』が発動する。

 重吾と稲葉さんは、強力な魔力が『呪い』に注がれるのを感知する。そして次の瞬間、意識を失い、二人とも同時に『死亡状態』となった。放課後ダンジョンクラブは前衛の二人を失い、圧倒的な不利の状況へと陥ったのだ。


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