1章 4 初日の終わり
「え?俺のステータスもしかして雑魚?」
「……」
「…泣いていい?」
場面は少し前へと戻る。
狩りを終え街に戻り…元々何が目的で街を出たのか忘れてしまったが,とにかく街の中心のどデカい木の所へ戻ってこれから何をしようか考えていると
フォン…
見慣れまくった顔のやつが俺の眼前に一瞬にして現れた。
「!おっす!喬太!ここスッゲェな!」
そうやつの名は翔太だ。
「もしかして俺のこと待ってくれた感じ?やっぱり俺とお前は心で通じ合ってんだよね。」
「たわけ」
「ワハハ!」
あ、そうだ。こいつに剣がとても安く買えることを教えてやらんとな。
「そーいやお前このゲーム魔物いるの知ってるか?」
「おん。チュートリアルで言ってたじゃねぇか」
「……い…いや、ただの確認だよ…それで武器は何にすんの?」
「あー武器なー…何にしよっかなー」
「剣なんてどうだ?俺すげー安いとこ見つけてさ…」
「あの50Gのとこだろ?」
「え」
「?…剣かぁ…剣はお前持ってるし俺は…弓かなぁ」
「へ…へぇ…」
りんごより安いの?え?
もしかしてあのリンゴが高いの?
ふ、ふーん?いんや?知ってましたけど?
そ…そうだ!ステータス、思い出した!ステータスって能力値のことか、微かに頭の隅にあったわ。
思い出して、機嫌が治った俺はまた新しい地雷に足を踏み込んでいくことになる。
「翔太、お前のステータス値いくつよ?」
「えーっとちょっと待ってな。確かこうやって…」
翔太は左手のひらを見ると親指をしまい、手に2、3度力を断続的に与えた。
「おっ出たでた」
どうやら他人のステータス板を見ることはできならしい。あいつは今ステータス板が出ているらしいが俺にはまるで見えない。
「[HP]が2744」
!?
「[MP]が500、[SP]734、[G]が1000…これって強いのか?…ちょっお前のも教えてくれよ」
「………[HP]557……」
「は?え?」
「[MP]36、[SP]824…だよ…」
「………」
「え?俺のステータスもしかして雑魚?」
「………」
「泣いていい?」
そして今に至るというわけだ。
「ま…まぁまぁ、SPは喬太が勝ってるから…さ!そこ…!武器にしてこーぜ!」
「…もう疲れた…帰る」
「そ…そうだな!ゆっくり休んでくれ」
「…どーやって帰んの?」
もう何も頭がまわらんし、そもそも知らん。
「確かステータス画面の右上にログアウトボタンがあるからそっからかな。」
「…うん…ありがとう…」
スッスッスッと無駄のない動きでログアウトボタンまで辿り着くことができた。
人間疲れてる時こそ動きが効率化されてるんよなぁ
「じゃあ…おやすみ…」
「おう、またな」
ログアウトボタンを押すと明るい世界から一転、世界はたちまち暗くなっていき…次第に何も感じなくなって行った。
『データを記録中……終了しました。[佐々木 喬太郎]様、またのお越しをお待ちしています。』
意識がだんだんと鮮明になってく…
パッと目を開けるとそこには機械的に光る電球があり、満点の青空は広がっていなかった。
そして感覚は、頭全体に少し違和感…そーいやゲームしてた。
「電気消してなかったか…」
そうポツリと呟き体を起こし、
無意識に時計を確認すると
「もうそんな時間か…」
時刻は深夜1時を超えていた。
どうやら俺は3時間もやっていたようだ。
ゲーム中は、ゲーム開始から何分立ったかしか書かれていないのは少し不便に思う、がそれ以外は素晴らしいというほかなかった。
こんな時間からゲームを始めるあのバカは放っておいて今日は寝よう。
その日から俺はすっかりIIOの虜となったみたいで、ゲームの基本用語を頑張って覚えることを心に決め、
入社初日を終えた。