祓え
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「いやー!! ここから先が柚月が育った寺の敷地なんだな!」
悟の元気のよい声が辺りに響く。
きょろきょろと辺りを見回す様子は初めての場所に来た時の幼子のようだった。
「ちょっと、あんた。うるさいわよ」
当然ながら譲に怒られる悟。
そうは言いつつも譲も好奇心を抑えきれないという顔だ。
「何だよ。お前だってワクワクしてるくせに」
「し、してないわよ!!」
思わぬ反撃にたじろぐ譲。
いつも大人ぶっている譲でも、そういうところは年相応だった。
柚月はそのやり取りを見て苦笑いをこぼしていた。
今、いつものメンバーがいるのは柚月が育った寺の敷地への入口。
バス停へと降り立つと冒頭のやり取りを始めたのである。
というのも僧正との電話から3日後、何とか敷地での宿泊許可が下りたと連絡がきた。
そこで皆へ連絡するとすぐに集まって今に至る。
「それじゃ、山登るからついてきて。道入り組んでるからはぐれないようにね」
寺は山の中腹にある為、行くには最寄りのバス停から30分ほど山を登らなくてはならない。
参拝者が来る場所であればなだらかな道を10分程度歩くだけだが、柚月達が向かうのは一般人が立ち入れない奥の院。
参拝者用の舗装された道などなく、一行が進むのは獣道然とした細い小道であった。
「こんな道通るなんて、本当に山登りだねぇ!」
友里がワクワクとした表情で声を上げた。
「一般開放してないところだからね。きつくない?」
「だいじょうぶ~!!」
ちらりと後ろを振り返って顔色を伺うが、皆疲れた様子はない。
むしろ非常に楽しそうについてきている。
葦の矢で鍛えられた者達にとってはこのくらいの道など準備運動のようなものだ。
皆明るい口調で話しながら道を進んでいく。
柚月に案内された一行はさして息も上がらずに目的の奥の院までやってきた。
其処には大きな門があり、門前で見慣れたシルエットが待っていた。
「やあ、おかえり」
「え、澪ちゃん? なんで門前で?」
なんと仕事で戻っていないと言っていた澪本人が出迎えたのだ。
柚月の視界の端では友人たちが目を丸くして体を縮こませている。
ぴたりとくっついてお団子みたいだ。
其処からは短い悲鳴が上がった。
「「「「きゃああああ」」」」
若干2名、野太い声も含まれている。
柚月にとってはこのパターンももうだいぶ慣れてきた。
「ちょっと男子ぃーうるさいよ」
柚月は振り返りジト目で皆を見る。
お道化た調子でそういえば、団子になっていた彼らはおずおずと近寄ってきた。
「もういい加減慣れてほしいんだけどー」
「柚月お前な、無理なこと言わないでほしいんだが!!」
「そうだぞ! 俺だってびっくりしたらこうなるっての!」
軽くどつき合って笑う。
こういう付き合い方がいかにも思春期男子だった。
対する女子組は手を取り合って澪にくぎ付けになっている。
「おやおや、君達はこの間病室でもあっているだろうに、そんなに驚かれるとこっちまで驚いてしまうよ」
当の澪はのほほんと笑いながら出迎えた。
その手元には昼間なのに提灯が掲げられている。
「さあ、いつまでもここにいる訳にはいかないからね。案内しようじゃない。……と、そうだ。入る前に穢れを落としておこうか」
そういうと澪は袖の中から人型を取り出し皆に配る。
「それに息を吹きかけて額にくっつけてくれる? ……そうそんな感じで」
素直に従う面々だったが、その顔は疑問を浮かべていた。
柚月も前面に疑問を押し出している。
その疑問を感じ取った澪はなにかを言われる前に説明しだした。
「一応、この先は神聖な場所とされていてね。入るには現世の不浄を払わなくちゃいけないのよ」
「え!? そんなの初めて聞いたけど!?」
柚月は麓の中学校に通っていたが、出入りするときにお祓いとかしたためしがなかった。
「柚月は祓の札を持っていたでしょ? あれがその役割なのよ」
「そうなの!?」
驚きの事実である。
いつの間にか穢れを払っていたのか……。
「さ、それはさておき。皆じっとしていてね」
そう言って提灯を掲げると、中に入っていた灯が浮き上がり五つに分裂する。
そしてそのまま柚月達の人型へと燃え移った。
「!!」
「大丈夫だからじっとしていて」
炎は完全に人型を燃やしているというのに、全く熱さを感じない。
それに炎の色は赤やオレンジではなく青色だった。
不自然に人型が燃え上がり、やがて燃えカスが宙に舞い消えた。
「さて、これでお祓い完了! どうぞ上がって」
澪はそのまま中へ入っていったので一行も戸惑いながら後に続いた。
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