楽天的
数ある物語の中からお選びくださりありがとうございます!!
お楽しみいただければ幸いです(*'ω'*)
翌日、早朝。
早くに起きた柚月はかれこれ1時間校庭を走っていた。
エネルギーが体の底からあふれてきて、体を動かしていないと何かが爆発してしまうような気がしたからだ。
どうにか発散しないと、体がぐずぐずに崩れてしまうような感覚に見舞われる。
こんなことは今まで無かった。
大男との闘いから目が覚めた後から体の底からエネルギーが湧き出てくる感覚はあったのが、ここまでくるとどうにもおかしい。
“柚月”という器に強大な別の何かが入れられたような、今まで蓋をしていた何かが開かれたような、とにかく不思議な感覚なのだ。
それだけで済めばよいが、ここ2,3日はじっとしていると体が痛くなってくる。
内側から出てくるエネルギーに体が付いていけていないのだ。
少しでも発散しなければ、体は痛みを主張し始める。
あれから定期的に救護棟で検診は受けているのだが、異常は検知されていない。
理由は謎のままだ。
今日は幸いにも1学期の最期の日。
寺に戻ったら澪にでも相談しようと柚月は走りながら決めたのだった。
「なあなあ!! 休みに入ったら一緒に訓練しねえ?」
ホームルーム前の自由時間、教室に入るとすぐさま悟に声を掛けられた。
そんな悟は眼鏡の奥で瞳を爛々と輝かせている。
「急だね?」
「いやだってよ~。昨日冊子の内容見てたんだけど、俺一人だとやりきれる気がしねーんだよな」
「あ! それあたしも思ってたぁ!」
其処にいつものメンバーが集まってくる。
中でも友里の食いつきはよかった。
悟と友里。この二人は似ているところがある。
見た所、課題とかは休みの最終日に終わらせようとするタイプだ。
「あんた達は一人じゃ課題終わらせられなさそうよね」
「譲、ご名答だ。こいつは今まで一人で課題を終わらせたことはねえ」
「やっぱり」
譲と明治はもはや保護者のような目線で会話を続ける。
(譲が悟の保護者、明治が友里の保護者かな……)
柚月はそんなことを思いながら会話を聞いていた。
「そこで、だ!! 皆でやればすぐに終わるだろうし、一人でやるよりも刺激があっていいんじゃないかって思ったんだよね!」
悟はズイっと体を乗り出してくる。
距離が近い。
柚月は上体を反らせながら考える。
悟の言うことにも一理あるな、と。
だって課題の量が量だ。
それに普通の長期休暇に比べたら日数も少ない。
どう考えても一人でやるよりもみんなでやった方が効率よくできるだろう。
柚月もできるだけ楽に課題を終わらせたかったのだ。
「いいんじゃないかな」
「おっ!! 乗ってくれる?」
「だって冊子というか辞書の厚さだし、修行もしながらだと終わる気がしないんだよね」
「さすがマブ!! よくわかってんじゃん」
悟が横から肩を抱いてきて、上機嫌に揺れている。
柚月はされるがままになっていた。
「いいなぁ。あたしも一緒にやりたい~」
友里はそれを物欲しそうに見つめている。
「おいでよ友里ちゃん! 一緒にやろーぜ!!」
「わ~い!」
友里はどーんとぶつかって肩を組んできた。
満足そうな笑顔である。
「そこからやるんだ?」
「うん! 楽しそうだったから~」
「そうそう! 楽しければいいの良いの!」
悟は随分と楽天的な考え方だ。
まあ、彼らしいと言えばそうだが。
「明治も譲ちゃんもやろうよぉ! 楽しいよぉ?」
「遠慮しておくわ」
「俺もいいや」
「もう~! 冷めてるなぁ二人とも」
随分と残念がる友里に見つめられ、二人はぐっと詰まった顔になった。
友里はどこか幼さが残っているというか、甘え上手な末っ子気質というか。
とにかくおねだりが上手いのだ。
恐らくは意図せず、自然体だが。
そんな彼女に残念そうに見つめられては、大抵の人間は折れるだろう。
譲も明治も例外ではないのだ。
結局ジイっと物欲しそうな目で見つめられた2人も肩を組んで円陣の様になってしまった。
「なにこれ……」
「あはは~。わかんない~」
「ウケる! 楽しいしいいけど」
「……はあ」
「いや分かるよ、譲。俺も同じ気持ちだから」
徐々に登校しだしたクラスメイト達に変なモノを見る目で見られている。
だが一度は立ち止まるが、皆すぐに何事もなかったような顔で過ぎ去っていく。
もはや“このグループは頭がおかしい”と思われていそうだ。
それほどまでに奇行をした覚えは柚月にはなかったが。
お読みいただきありがとうございました!
面白い・続きが気になる等思っていただけたら是非ご反応の程よろしくお願いいたします♪




