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師匠は眉間をつつく

お選び下さりありがとうございます!!

いつも読んでいただいている皆さまに感謝です(*´ω`*)

本当にうれしいです!

 



 ほんの少しの思案の後、澪はその重い口を割った。


「……勘のいい人ならその可能性に気が付くかもしれないけれど、石を作ったのが『陰陽寮』なんじゃないかって疑っているのよね。私としては」

「はああ!? えっ、どういうこと!?」


 予想以上に重たい話がぶち込まれる。

 予想だにしていなかった柚月としては重たい右フックを受け身なしで打ち込まれたような感覚だ。


 というか、隠から市民を守り、隠を倒す思念の元で構成された組織とされている『陰陽寮』がどうしてそんなことをする可能性があるのだろうか。

 どれだけ考えようとも、理由が全く分からない。


「訳が分からない」


 それが柚月の率直な感想だった。

 だってそうであろう。

 澪が言うように隠を強化する呪詛を『陰陽寮』が作り出しているのだとしたら、組織の理念そのものが覆る一大事だ。



 東と西という違いはあれど、隠の脅威から民を守るという理念はきっと同じであるはず。

 それなのに隠の被害を助長するようなことなどあってよいわけがない。


 そもそも疑うことすら許されないような事案だが、それを口にするということはほぼ確信する何かがあるということだろう。

 流石にいくら澪と言えど、確証もないのに東西の関係を悪化させ得る話をするわけがない。


 柚月はそう考えると、大きく深呼吸をして落ち着きを取り戻す。



「……それを口にするってことは、何か証拠とか確証があって言っているんだよね?」

「ええ、流石に鋭いわね」


 澪は困ったように微笑むと近くにあった丸い椅子に腰を掛ける。


「そうよ。柚月が寝ている間に採取された石の鑑定が終わってね。ちょっと解析に手間取ったところもあったんだけど……」

「解析?」


「ええ。呪詛を作るなら元になる隠が必要になるからその解析よ。どこで生まれたのか、どんな感情を元にしたのか、そしてそれらに該当する事件がなかったか……。基本は柚月達が学校で学んでいるやり方と変わらないけれど」


 澪が言うには呪詛の元にされた噂は西にも東にも発生しているモノで、それだけでは特定などできるはずもないのだという。

 そして、レベルの差異がある隠の出現は東西に関係なく全国的に起こっているらしい。


「ただ呪詛を作ること自体、できる術師は限られているの。それらの人を全て洗ったけれどこれも該当者なし。で、行き詰っていた時に君たちを襲った大男の事件が飛び込んできたわけね」


『桃泉花』は石が観測され始めた時点からいろいろと探りを入れ始めていたらしい。

 そしてこのタイミングであの大男の襲撃があったことで西が怪しいと踏んだわけだ。



「そうだ! あの大男はどうなったの!?」


 そういえばあの時はそのまま意識がなくなってしまった。

 あの後どうなったのか、柚月は何も知らなかった。


「あの男は柚月達が襲われた後、数日間行方不明になっていたの」

「えっ!?」


 行方不明ということは結局何も分からないで逃げられたということではないか。


「じゃ、じゃあ結局襲撃の理由なんかも分かっていないってこと?」


 柚月は俄かに腰を浮かす。

 それを制するように澪は指で柚月の眉間を押した。


「えいっ!!」

「痛い!?」


 突然のことに柚月は動けない。

 目を白黒させながらただ澪を見つめる。


 澪はなおもぐりぐりと指を眉間にねじ込ませている。

 そのあまりにも執拗なぐりぐりにたまらず声を上げる。


「痛い痛い痛い!!! いや、痛いわ!!」


 ちゃぶ台があったらひっくり返していただろう。

 澪は柚月の動きを止める様にもう一度指を指す。


「えいっ!」

「だから痛いって!!」


 何をするんだ、という目線を例に向けると彼女はいたずらな笑みを向けてくる。

 張り倒したい、その笑顔。


「焦らないの。まずは話を聞きなさい」

「……」


 確かに焦っていた。

 あの大男の行方も分からない状態で、また襲撃されでもしたらと思うと、いてもたってもいられなかったのだ。


 だが、今焦ったところで解決することなど何もない。

 何より事件が起こってからすでに2週間という時間が経過しているのだ。

 男が襲撃をするのだとしたらもうとっくにされているだろう。


 そこまで考えると柚月は深呼吸を一つした。


「ごめん。焦っちゃった」


 素直に謝ると澪はよろしいと言いながら指を離す。


 場を仕切り直すように咳ばらいを打つ柚月。


「それで? 大男が行方不明になった後はどうなったの?」

「それがね、3日ほど行方が分からなくなっていたんだけど、ある日突然『桃泉花』の本部の前に変わり果てた状態でぽつんと座ってて」


「は?」

「いや、まあ「は?」だろうね。私たちもはじめその男が君達を襲った奴だなんて思わなかったもの。やせ細って生気という生気がない感じ? 聞いていた情報とは真逆でなんだか老人みたいになっていたのよ」

「老人?」


 襲ってきたのはそんな印象を持つことなどありえない生気に満ち満ちた大男だ。


「人違いとかじゃなくて?」


 信じられず、思わずと言った様子で訊ねるが、頭を横に振られる。


「その線は調べたよ。でもね、君たちが見たという大男の武器、大槍が傍に置いてあったのよ。友里ちゃんや日花さんたちの証言からほぼ男のもので間違いないと思うしね」

「槍……」


 柚月は記憶を手繰る。

 確かにあの男は大きなエネルギーを秘めた槍を持っていた。


 澪の話では、『桃泉花』で事件現場の捜査した結果、現場に残された霊力の粒子と、件のやせ細った男の霊力が一致したそうだ。

 一体どうしてそんなことになっているのか、柚月には分からなかった。

 実際に男の様子を見たわけではないが、あの男がやせ細っているところを想像できない。



(……無駄に考えるのはよそう)


 考えても分からないし、圧倒的に情報が少ない中で考えても仕方がないと割り切ることにした。

 続く澪の言葉を待つ。




お読みいただきありがとうございます!


どこかにきっとツボにはまる人はいると思うんです!!

きっと面白いと思ってくれる人はいると思うんです!!と強いメンタルでやっております笑

皆様、ぜひ反応してくださいね(*'ω'*)

泣いて喜びますので……

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