呪詛の石
こんばんは~(*´ω`*)
選んでいただきありがとうございます!!
いつも反応いただいてとてもうれしく拝見させていただいてます♪
公募に向けた作品を書いているのでなかなか書き溜めができない( ;∀;)
いや、もっと頑張りますね!!
「それで? 頭の違和感とかどんな感じ?」
「ええと。事件のことは大体覚えているんだけど、仲間が蹴られて殺されるって思った後の記憶が靄がかかったみたいに不鮮明で……」
「ふむ。それでどうやって切り抜けたのか分からない、と」
「うん。とにかく必死っだったってことはなんとなく覚えているんだけどね」
澪は顎に手を持っていくと、考え込むように顎に手を置いている。
柚月はなんとなく気まずくなり努めて明るい声を上げた。
「ま、まあ。起きたばっかりだからさ。たぶん記憶の整理が付いていないだけだよ。痛みもないし、そんな気にしなくてもいいんじゃないかな」
「……柚月がそれでいいなら、良いのだけど」
澪はなんとなく納得はしていないという表情だったが、これ以上その話題を振ったところで何も分からないと思ったのだろう、追及はしてこなかった。
不思議なことに柚月はそれに少しだけほっとした。
(? なんでだろう?)
柚月はそのよくわからない安心感に首を傾げたが、気のせいだろと頭をふり澪を見上げる。
「それで? ここにはお見舞いだけで来たってわけでもないんでしょ?」
「あら。気が付いていたの?」
「そりゃあ気が付くよ。お見舞いだけなら奈留を部屋から出すわけない、でしょ?」
「あはは、さすがは私の弟子だなあ。よくわかってる」
先ほど澪は奈留を含め、全員を病室から自然に出ていくように誘導していた。
となれば考えられるのは、奈留に聞かれたくはないが柚月には知ってもらいたいことがあるということ。
それが奈留に関わることなのか、はたまた寺に関係するものか……。
柚月は澪を見上げる目に力を込めた。
「正解よ。……実はね、柚月とほぼ同じ時期に、聖が負傷したの」
「え!?」
兄弟子たる聖の強さは柚月ももちろん知っている。
その聖が負傷したという知らせは柚月に大きな衝撃を与えた。
「大事には至っていないからそこは安心して。ただ、聖ほどの気力使いがあれだけ負傷するのは珍しいこと。それに『桃泉花』でも調査している案件だけど、最近隠全体の動きが怪しい」
「どういうこと?」
「柚月も遭ったことがあるって報告を受けているけれど、レベルが『隠』だったはずの隠が調査に赴いてみたら『妖』だったということが頻発しているの」
「それって……」
柚月にも覚えのあることだった。
林で出会ったあの蟻のような妖――。
あれは間違いなく「隠」のレベルにも満たないはずだった噂でしかなかったはずなのだが、ふたを開けてみれば「妖」レベルの敵だった。
あの時は先輩たちの連携で事なきをえたが、一歩間違えば一年は全滅していてもおかしくない。
澪の話ではそんな危険を孕んだことがいたるところで起きているのだそうだ。
「で、警戒に当たっていた聖が多数の妖と遭遇して倒せはしたけど負傷したのね」
「そんなことが……」
「ええ。で、ここからが本題なんだけれど」
「え?」
柚月は驚きで声を上げる。
既に兄弟子が負傷したという知らせで驚いているというのに、まだ何かあるというのだろうか。
「えっじゃなくて。聖からの報告では、その『妖』たちを倒した後に不審な石を落としたのだそうよ」
「石……?」
「そう。隠が消滅した後にぽとりと落としたんだって。柚月は見なかったかしら?」
「……あ。そういえば確かに蟻が何か落として先生がそれを見ていた気がする」
皆が疲れ切って座っている間、竹ノ内は険しい表情でそれを見つめていたのが印象に残っている。
「やっぱり。たぶんそれが石ね。……で、ここからは極秘情報なんだけど」
「ちょっと待って!? そんなこと僕に話しちゃっていいの!?」
何でもないことを話すように穏やかな声で話を続けようとする澪に慌てる柚月。
だって極秘情報なんてこの場で口にしていいものではないだろう。
というか、柚月に話していいものでもない。
ところが当の澪は何に慌てているのか分からないとでもいう表情だ。
柚月が焦るのも仕方がないことであった。
「ああ、大丈夫よ。これは。だって『桃泉花』と『葦の矢』、そして……『陰陽寮』には開示している情報だもの。部外者には話しちゃいけないけど、君は『葦の矢』の生徒でしょう」
「そ、そうなんだ? というか今の間は何?」
「……ふふっ」
「?」
問い掛けに澪はあいまいな笑みを称えるだけだ。
というか、なんだその笑みは。
半分引きつったよな……苦笑いとも呼べるそれに引っかかりを覚える。
(……まさか)
柚月は嫌な予感に思わず頬をひきつらせた。
頼むからその先を話さないでほしいが、澪はそんな柚月を無視するように話を進める。
「開示されている情報は、石が恐らく人の念……とりわけ負の念を蓄えた、呪詛のようなものであったと推測できるっていうこと。で、それを低レベルの隠に取り込ませることで故意にレベルを上げた隠を生み出した可能性があるってことね」
「は、はあ!?」
到底享受できる情報ではないことに耳を疑う。
だって、隠を態と生み出しているということは、それを使役している者が人に害を為して益を出しているということになる。
当然だが、受け入れられるものではなかった。
驚く柚月を置き去りにして澪は続ける。
「それで開示してあるのは其処までなんだけれどここから先は柚月にも深くかかわるかもしれないから伝えておくわね」
「……聞きたくないなぁ」
「まあそう言わずに。知らないと身を守れないでしょう?」
澪は柚月の頭にポンと手を置くとゆっくり撫でた。
これは小さいころによくやられたあやし方であった。
こうされると何故かいつも不思議と落ち着くのだが、もう流石に成長してからは気恥ずかしさが勝る。
柚月は澪の腕をつかんで下ろさせるときっと目に力を入れて見上げた。
「もう、子ども扱いはしないでよ」
「ああ、ごめんごめん」
澪はつい、と言い手を下ろす。
お互いに昔の癖が抜けない2人であった。
やがて澪は話を戻すように咳ばらいをする。
「ごほん。……それでここからが本当に機密情報で、私を含めても知っているのは10人にも満たないことよ。当然だけど、誰かに話すことは禁じるわ。制約として、神子の前に誓ってほしい」
柚月はベッドの上で思わず正座をした。
ごくりと喉が鳴る。
「分かった。誰にも言わないから、教えてほしい」
「……いい面構えね」
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