表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/87

シスコン発揮

明けましておめでとうございます!!

昨年は大変多くの方にお読みいただき幸せでございました(*´ω`*)


今年も頑張ってまいりますのでどうぞお付き合いいただきますよう、よろしくお願いいたします!!

 




 はっと意識が覚醒した柚月は思い切り体を起こす。

 はあはあと息が荒い。


 なんの、夢を見ていたんだったか。

 なにも思い出せない。

 ただひたすら頭ががんがんとした痛みを訴えて来ていた。



 辺りを見回すと、白を基調とした清潔な部屋にいた。


「どこだ、ここ」


 柚月には見覚えのない場所だ。


 と、がらりとドアが開いた。


「あっ! 起きてる!!」

「えっ! 本当!?」

「えらく寝坊助じゃあないか」

「根性が足りてないのよ」


 一気に賑やかしくなる部屋の中。

 ドアが開いて入ってきたのは班の皆だった。


「え? 皆、ど、どうしたの!?」


 柚月は入ってきた一同の様子に驚きを隠せなかった。

 皆頭や顔に包帯やガーゼを張ってあり、ぱっと見でけが人と分かる様だったのだ。



「どうしたのって、怪我したの」

「いや、それは見ればわかるよ。……じゃなくて!」

「ああ、2週間前の襲撃による傷だよ。けどもう俺らはほぼ治りかけだし、痛みもそんなにないから大丈夫だぜ?」


 明治があっけらかんと言ってのける。

 というか襲撃?



「あっ!!」


 そういえば、試験で隠を討伐した後に大男に襲われたんだっけ。

 目が覚めたばかりで何があったか思い出せていなかった。

 知らされれば一気に以前の出来事がよみがえる。


「だ、大丈夫なの!?」


 確か皆吹き飛ばされたり蹴られたり、殴られたりしていたはずだ。



「大丈夫も何も、あんくらいじゃくたばりはしないわよ」

「そう言っても譲ちゃんも目が覚めたのは1週間前だったくせに~」

「うるさいわよ友里」

「にしても柚月も気が付いてよかったよ」

「全くだ。全然目を覚まさないから心配しただろうが」



 皆思い思いにしゃべっている。

 その表情は一様にほっとしていた。

 最後の1人が目覚めたのだから、無理もない。




 そこにドアの後ろから近づいてくる足音が二つ。


「やあ、元気?」

「お兄ちゃん! 目が覚めたんだね」


 見知った顔が二つ、ひょこりと覗く。



「「きゃあああああ!!! 」」



 途端に甲高い悲鳴が起こった。


 澪と妹の奈留がお見舞いにやってきたのだ。

 神子である澪はことある毎に悲鳴を上げられる。

 今も友里と譲が手を取り合って飛び上がっていた。

 ちなみに悟はガッツポーズをして目を輝かせ、明治は鋭い眼光をさらに鋭くさせて棒立ちになっている。



「澪ちゃん、奈留。来てくれたんだね」

「奈留ちゃんが行きたい行きたいって珍しくごねたからね」

「だってお兄ちゃんが大怪我したって連絡着たらそりゃあ傍に居たいって思うのは仕方がないじゃない」


 柚月には今の言葉が胸に突き刺さる。

 シスコンの彼にはクリーンヒットだったようだ。


「うぐっ」


 胸を押さえて前のめりになる柚月に、それがとどめとなるとも知らずに奈留は心配したように駆け寄る。



(ああ!! 奈留が今日も可愛い!!)


 柚月にとっては約2か月振りとなる妹との再会である。

 そのため技(純粋に心配してくれているだけ)の効果は絶大だった。



「奈留~~~!!! 兄ちゃんは大丈夫だよ!!」



 感極まったように涙しながら妹を抱き寄せる。

 ズキンと肋骨が痛んだ気がしたが気のせいだろう。


「わあ、お兄ちゃん! ちょっと苦しいよ!」

「ああ、ごめんよ。でも本当によく来てくれたね!」

「あはは、相変わらずだね柚月は」


 いつの間にか近くに来ていた澪に笑われた。

 解せぬ。


(澪ちゃんだって奈留のことすごくかわいがっているくせに)



「え、うわ」

「柚月、お前」



 などと言った声が外野から上がってくる。

 奈留を軽く抱きしめつつちらりと見てみると、譲と悟が唖然としているのが目に入った。


 恐らく柚月のシスコン具合を見た面々が引いているのだろう。

 何とでも思うがいい。僕は変わらない。と柚月は心の中で決意した。



「どうやら傷はもういいみたいだね」


 慣れた様子の澪が口にする。

 柚月はその言葉に正気に戻った。

 奈留を名残惜しそうに解放しながら、澪に向き合う。



「おかげさまで、十分寝たし、今はもうほとんど痛みもないよ」

「そう。それはよかった。一時はどうなることやらと思ったけど、まあ私の弟子がそんな早々にリタイヤなんてしないよね」

「もちろん。でも僕どうやってあの時を切り抜けたかは分からないんだよね」

「? というと?」


 澪は首を傾げる。


 柚月は目を覚ましたばかりで、記憶があいまいになっているところもある。

 それを率直に伝えると澪は納得した表情になる。



「ああ、医者からは聞いているよ。頭にダメージを負った可能性もあるって。でもその時の記憶だけだったらよっぽど大丈夫じゃないかしら」

「ううむ、なんだか変な感じがするけど、そのうちなくなっていくのかな……」

「頭に違和感があるの?」


 奈留が心配そうに瞳を潤ませながら尋ねてくる。


「うっ」


 途端に胸を押さえて蹲る。


(ダメだやっぱり可愛い)


 柚月のこれ(シスコン)はもはや治ることはないだろう。

 重症である。


「はーい、奈留ちゃん。ちょっと移動しましょうね」

「あ、ごめんなさい」


 毎度この調子では話が進まないと、澪が柚月の症状を無視して奈留を引き離した。


「な、何をするだぁ!!」

「だってこうでもしないと話が進まないでしょ」

「……いや、まあそうだけど」



 流石に柚月の扱い方を心得ている澪だった。

 柚月はけれども不満そうな顔を隠すことなく全面に押し出していた。


「こら、そんな顔しないの」

「……はーい」

「あ、じゃあ私学校でのお兄ちゃんにも興味あるし、クラスメイト? の皆さんのお話を聞いてるね」

「お、おいでおいで」


 手招きしている悟に「変なこと教えるなよ」という気持ちを込めて目線を送る。

 悟は舌を横へと出しウインクをしている。

 ……絶対にろくな事考えていない顔だ、あれは。

 柚月は一抹の不安を覚えつつも部屋を出ていく彼らを見送った。





お読みいただきありがとうございます!!


新年一発目にシスコン発揮させてしまい、申し訳ありません(笑)

お楽しみいただけたら幸いです!

今年もどうか★★★★★機能からの評価やブックマークをお恵みくださいませ!笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ