玉響
数ある物語から選んでいただきありがとうございます!!
4章始まりました!!
お楽しみいただけたら幸いです(*´ω`*)
――ここはどこだろう?
柚月は暗闇の中で一人ぽつねんと浮いていた。
地面を踏んでいる感覚はなく、本当に浮いているという感覚がしっくりくる。
ふと後ろを振り返ると薄ぼんやりと光るものがあった。
「?」
柚月は何だろうと思い近づいてみる。
白い玉の欠片のようだ。
それ自体が薄く発光しており、周囲を仄明るく照らしていた。
柚月はその玉の欠片を拾い上げる。
掌に収まるくらいの大きさだったであろう玉は、白く発光しつつもその中は透明で、まるで水晶のようだ。
だが今あるのはその四分の一も満たない欠片だった。
無理に割ったかのような割れ目の断面はところどころ亀裂が走り、持ち上げた衝撃ですらぽろぽろと崩れている。とても繊細なモノであった。
「きれい……」
玉の欠片は柚月が拾い上げて少しするとまばゆい光を放ちどこかの情景を闇に映し出した。
「!!」
柚月はあまりのまぶしさにきつく目を瞑り、光が収まるのを待つ。
やがて瞼を閉じていても見えていた光が収まると、彼はゆっくりと目を開いた。
目の前には映画の上映でもするかのように映像が流れている。
映像は柚月たちを襲った大男との戦闘の場面であった。
(自分がもっと上手く立ち回れていたら)
柚月はぎゅっと掌をきつく結んだ。
起こってしまったことは覆せない。重要なのは、その経験を活かすか殺すかだ。
そう考えた柚月はじっと自らの戦いを見つめた。
場面は移り変わり、激しい怒りに襲われた場面となる。
今だからわかるが、あの時柚月は確かに怒りに呑まれ倫理の枠から外れた存在となっていた。
いくら敵とは言え、人間である相手を排除すること……つまりは殺すことに対して何の衒いもなかったのだ。
恐らく怒りに呑まれあのまま大男を殺していたら、自分はきっと元の生活には戻れなかっただろう。
(止めてくれたあの仮面の男に感謝しないとな)
どういう目的で柚月に近づいてきたのかは分からないが、あの時柚月を止めてくれたのは間違いなくあの男だ。
彼のおかげで柚月は一線を越えずに済んだ。
それはまごうことなき事実である。
もしかしたら、あの仮面の男は自分の味方なのではないか、と柚月は思った。
確信があるわけではないが、気を失う時に見た彼の顔は敵対する者の顔ではなかった。
慈愛と、寂しさを漂わせるような、そんな何とも形容しがたい雰囲気だったのだ。
(……)
いくら考えても分からない。
彼の目的はいったい何なのだ?
仮面の男が口にしたあのお方とは誰なのだ?
何故自分を助ける?
そんな疑問が次々に浮かぶけれど、誰も答えてくれる者はいなかった。
ふと、暗闇に映し出される映像が途切れる。
見上げると夜空に星々が無数に煌めく野原が映し出されていた。
見渡すと住居と思われる葦の屋根の家が目に入る。
時代劇に出てくるよりもだいぶ前のものと思われるそれには、明かりがともっていない。
それを照らすのは星々の光と青白い月の光だけである。
――ああ、懐かしいな
柚月からはそんな言葉が漏れ出た。
見たことのない景色であるのに、まるで自分が知っているかのような感想に柚月は困惑した。
何故、懐かしいなどと思ったのだろうか。
柚月は首を傾げつつも、映像に目を奪われたままだった。
見た所、歴史の授業で習ったような竪穴式住居のようである。
そこから出てきたのはやはり古風な服を身に着けた一人の女性。
柚月はその人から目が離せなくなっていた。
簡素な生成りの服に長い髪を後ろに束ね、首には勾玉の飾りを変えている女性は穏やかに微笑みながら草の束と鈴をもってくるくると回っている。
神楽のようなそれは、不思議なことに月の光を浴びて舞ったところに光の筋ができていた。
――自分は彼女を知っている。
柚月は直感的にそう感じた。
彼女の元に駆け寄り、そのまま抱きしめたい衝動に駆られる。
恐らく、自分はずっと待っていたのだ。
彼女と再び相まみえることを。
彼女が舞い終わり、消えていく。
――待ってくれ
柚月は手を必死に伸ばし引き留めようとするが、とどきはしない。
足元の闇が崩れ始めた。
意識が覚醒しかけているのが分かる。
そうか、ここは自分の精神世界だったのか。
柚月は崩れ行く世界へと必死に手を伸ばし続ける。
「君は、だれ――」
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