空模様
数ある物語から選んでいただきありがとうございます(*´ω`*)
これで3章完結になります!!いえーーーい!!!
楽しんでいただけたら幸いです♪
「すみません、あたし泣いちゃって」
「いい、気にするな」
「……はい」
竹ノ内は軽く手を上げいつもの調子でおどけて見せる。
友里はクスリと笑った。
「落ち着いたか?」
「はい!」
「そうか。それならいい。……それでその男について何かわかることはないか?」
「ええっと…」
友里は記憶を辿るように視線を上へ向け、腕を組んだ。
男が何かを言っていた。それを思い出さないといけない。
「……あ」
「ん?」
そういえば、男は常に笑っていたがその途中で何か東がどうのとか言っていた気がする。
友里はそれを伝えると、竹ノ内の顔が一段と曇る。
「……そうか」
「はい。……あの、東って東都のことでしょうか?」
「……その可能性は高いだろうな」
「なら、あの男は西の人間ってこと?」
「……」
竹ノ内は考え込んでしまった。
「あの?」
「ああ、悪い。それで、ほかに気が付いたことはないか?」
竹ノ内は友里の声にはっとしたように顔を上げた。
彼がここまで深く考え込むのは珍しい。
まあ今回の事件には謎が多すぎるのでいろいろと思うところがあっても仕方がないだろう。
友里は深くは追及しないことにした。
「ええと、そうだ。少し後に、大男の他に仮面をつけた変な男も出てきました」
「仮面?」
「はい。鳥のような黒い仮面で、赤で隈取みたいな模様が付いていました」
「ほう……」
「で、その仮面の男が大男と柚月君の間に入って、そのあとすぐに柚月君が倒れたのを見たら、あたしも意識を失ってしまって……。気が付いたら救護班に運ばれているところでした」
友里は擦りむいた腕をさする。
こういう細かい傷は通常の処置しかされない為、地味に浸みて痛みが走る。
「話は分かった。その仮面の男についても調べる必要がありそうだな」
「あ……。すみません。仮面の男については何も分からないんです」
友里は不安げに眉を下げた。
少なくともこちらを害したわけではないのだが、味方とも思えない。
けれども情報と言えるものはほとんど覚えていない。友里は外見の特徴しか思い出せなかった。
「ああ、悪い。お前を攻めている訳じゃないんだ。そんな顔をするな」
竹ノ内は垂れ目がちな目を優しく細めると再び友里の頭をわしわしと撫でた。
友里は嬉しそうにきゃっきゃと声を上げる。
その様子は無邪気な子供のようで竹ノ内は目を細めた。
「よし、じゃあお前ももう部屋に帰ってゆっくり休め」
友里たちの班には、療養期間として2週間ほど休みが与えられた。
友里はその間にみんなが目覚めてくれたらいいな、と思いながら部屋へと戻っていった。
その後ろ姿を、竹ノ内は険しい表情で見つめていた。
部屋の窓からは分厚い雲が立ち込めており、一雨きそうな空模様がうかがえる。
それはこの先の生徒たちの行く末を暗示しているかのようだった。
お読みいただきありがとうございます!
~お知らせです~
今後はしばらくの間投稿を水・日の週2にして書き溜めおよび改良をしようかと思っています。
ですが、反応が多ければ更新頻度を上げるかもしれません(笑)
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