表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/87

白檀

数ある物語から選んでいただきありがとうございます!

評価・ブックマークや乾燥ありがとうございます(*'ω'*)

筆者は喜び勇んで踊っております笑


さて、ようやく物語の核心に触れてきています。

書いてて楽しいです!

 




 ――ガキン


 勢いよく振り下ろされた柚月の刃が男の首を両断しようとした、まさにその時。見覚えのある錫杖がそれを阻んだ。

 見上げると、これまた見覚えのある仮面を被った男がいる。


「やあ、この間ぶりだね」


 仮面のせいで表情は分からないが、その口ぶりからは微塵の焦りもなく、柚月の刀を受け止めている錫杖も切れることも、押し負けることもない。

 拮抗しているのだ。


「……何の真似だ?」


 柚月は低く唸るように声をかける。

 仮面の男はそれに怯えた様子もなく飄々とした口調で答えた。


「何って、君を止めにきたんだよ」

「なぜ止める」

「あれ? 自覚無し? 君呑まれかけてるんだけど……」




 呑まれるとは? 何のことだろうか。

 いや、そんなことよりも早くあの男を殺さないと。

 柚月は仮面の男の後ろで失神している男に視線を向ける。


「……ああ、ダメだよこいつは。聞きださなきゃいけないこともあるから、こっちに渡してくれないかな?」


 仮面の男が困ったというような声色になる。

 だが、到底受け入れることのできない要求だ。


「だめだ。排除する」


 なにしろ、こちらの仲間が大勢やられたのだ。

 男を見逃してやることなどできる訳がない。

 柚月はにべもなく断った。



「あー……やっぱりだめかあ」


 仮面の男は柚月の刃を受け止めたまま残念そうな声を上げた。


「でも、君には引いてもらわないとね。それがあのお方のご意志だから」


 けれども口元だけ出ている仮面の下で薄く笑った気配がした。



 ――ゾクリ



 瞬間に感じたのは激しい悪寒。

 このまま打ち合っていれば押し負けるという予感めいたものだった。

 反射的に距離を取る。



「あれ? 意外と理性残ってたりするのかな? まあいいや」


 仮面の男は錫杖を持ち直しながら意外そうな声を上げた。直後今までたっていた場所に竜巻が起こる。

 飛び退いていなければ、そのまま風に切り刻まれていたことだろう。




 たんと降り立つ柚月。けれども足が急にがくんと力を失ったように崩れる。


「?」


 何が起きたのか分からずに足を見るが、外傷はない。

 ただ、力が抜けたように全く動かせないのだ。


「あーほら。言わんこっちゃない。まだその体であの力を目覚めさせるのは早いんだって」


 仮面の男はおもむろに近づき、顔を覗き込まれる。

 なんのことだか、さっぱり分からない。



 ――ドクン



 動きが止まったことで脈が激しく動き出した。


「か……はっ」


 自分の力以上の得体のしれない力を使いすぎたのだろうか。全身が張り裂けそうほど痛みを主張する。

 限界まで身体能力を高めていたそれが消えたようで、残ったのは体への負荷のみだ。


 息をすることさえままならない。

 蹲り、はっはっと短い呼吸を繰り返す。



 ふと仮面の男が体の上に手を置いた感覚がすると、少しだけ息が楽になった。


「大丈夫……ではなさそうだけど、ちょっとはマシでしょ」


 男が何かをしたのだろうか。


「まあ、それだけ息が整えば会話くらいはできるでしょ? とりあえず、開きかけた扉を閉めないと」

「……っさっきから何の話だ。お前もあの大男の仲間か?」


 先ほどあの男を仮面の男は庇っている。

 奴の仲間だとしたら、相当やばい状態だ。

 この男の狙いが何なのかは皆目見当もつかないが、それだは確認しておかなくてはならない。

 柚月は痛む体を押さえながら仮面の男を睨む。


「? なわけないじゃん」


 男は心外だとばかりに口を引き結ぶ。

 あの男の仲間でないというのなら何なのだろうか。



「なら、あのお方とは誰だ」

「……それは言えないかな」

「なら、お前が言うあの力ってなんだ!?」


 先ほどから何も答えない、その態度に苛立ちが募る。


「答えられないんだよ。俺には」


 それを見越したように仮面の男は肩を下げた。


「そんな権限、俺には与えられてない」



「なんの話っ……」


 男が柚月の口に指を立てる。

 静かにしろとでも言いたげな動作だった。


「今はただ、眠りにつくと言い」


 そういわれた直後、額に指を立てられる。



いざないのこう 夢占ゆめうら白檀びゃくだん



 その言葉を聞いた後、意識が緩やかに落ちていった。

 仄かに甘い香りが鼻腔を擽る。


 春のうららかな日和の中に包まれているかのようだ。

 抗い様がないその衝動の中で最後に見たのは、仮面の男の優し気な微笑みだった。







お読みいただきありがとうございます!


どうか反応をお恵みくだせぇ……笑

面白かった、続きが気になる等思っていただけたら是非評価やブックマークをよろしくお願いいたします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] またしても錫杖の男が現れた!! 大男とはまた別の勢力……ですよね(;゜Д゜) 「あのお方」……とは!? いったい何がどうなってるんだろう……柚月くんが急に強くなったのもビックリだし、色々と…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ