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力の差

数ある物語から選んでいただきありがとうございます!

そして、いつも反応ありがとうございます(*´ω`*)


現在は敵パートに入っておりますのでドキドキハラハラしていただけたらと思います。

 




「まて!!」


 その叫び声に、柚月ははっと正気に戻る。

 意識が飛んでいた。魔の前にいるのは先ほど急に襲ってきた大男だった。

 あの弱弱しい声の主ではない。


 声のした方を振り返る男。

 そこには後から駆け付けた明治たちがいた。



(だめだ。自分たちでは相手にならない)


 柚月は何とか彼らを逃がそうと痛む体を押して叫ぶ。


「だめだ! 皆逃げろ!!」


「おいおい、せっかく向こうからやってきてくれるってのに、無粋なこと言うんじゃねーよ」


 男が柚月の腹を蹴りつける。


「がはっ」


 男は軽く足を動かしただけだというのに、トラックでもぶつかってきたかの衝撃だ。

 思わず前のめりに蹲る柚月。



「柚月!! まってろ、今助ける!」



 明治はそう叫ぶと、拳に炎を纏い駆け出した。

 彼だけではない。

 友里は結界を明治に纏わせているし、譲は式札を取り出し旋風の中に男を閉じ込め、悟も人型をいくつも投げ込み起爆させている。

 今日チームを組んだとは思えない連携技である。


 爆炎と風を縫うように明治が炎の拳を男に叩き込んだ。

 確かな手ごたえが明治の拳に伝わる。



「ははっ! いい動きしやがるじゃねーか」


 けれども煙が晴れたその先には、明治の渾身の一撃を掌で軽々と受ける男の姿が映し出された。


「嘘だろ!?」


 驚きの声を上げる明治に男はニヤついた顔を向ける。


「だが、まだまだ青二才よ」


 男は明治の拳を掴むと、そのまま地面にたたきつけた。


「がっ」


 ごっという鈍い音が辺りに響く。

 明治はぐったりとしたまま動かない。


「さあ、他の奴も俺を楽しませろ!」

「明治!!」

「くそっ」


 投げ倒した明治にはすでに興味を失ったかのように、男は他の3人を見ている。

 嫌な感じだ。このままでは全滅する。

 そんな確証が柚月にはあった。


 例え10人以上の束で取り囲もうとも、今の自分たちでは男を倒すことはできない。

 それほどまでに男と自分たちには力量差があったのだ。




 それは他の面々も感じているだろうが、逃げ出そうとするものはいなかった。

 いや、もし仮に逃げ出したとしても追いつかれてしまうだろう。

 先輩ですら赤子の手をひねるかのように吹き飛ばしてしまった男ならば、そのくらいのことはたやすくできる。


 もはや残されている選択肢は先生が来るまで持ちこたえるしか残っていない。

 だがそれもいつまで時間稼ぎができるか。


 状況は絶望的だ。

 それでもやるしかない。




 まず仕掛けたのは友里だった。

 明治に纏わせていた結界を、男を閉じ込めることに使おうとしたのだ。

 友里の緑色の結界が男の足元を固めていく。


 が、強引に結界を引きちぎった男が跳躍したことで失敗に終わる。


「なんて力なの!?」


 友里は愕然とし、一瞬のスキが生まれた。

 男は跳躍したついでに友里との距離を詰めると脇腹を殴りつけた。


「あ……がふ」


 ごぽっと口から鮮血があふれる。


「友里!!」

「女子にも容赦なしかよ!!」


 悟と譲は同時に人型を投げつけ注意を逸らさせる。

 今これ以上彼女にダメージを食らわせる訳にはいかない。


「譲、俺が潜り込むからサポートを!」

「分かった!!」


 まだ動ける2人で同時に攻撃をする。


 悟は左から起爆用の人型を地面に撒きながら、右からは譲が特大の風の塊を作りながら走ってくる。


「はっはっは!! もっとだ!!」


 男は興奮したように雄たけびを上げると、腕に力を込め体を捩じった。


 あの2人も他の皆のように叩きのめすつもりなのだろう。


「やめろ……やめてくれ!!」


 柚月の声に一瞬だけこちらを見た男は、けれども柚月の願い虚しくにやりと笑った。

 向かってくる2人に狙いを定め、体を元に戻す反動を加えてラリアットを打ち込む。

 あっという間に遠くへ飛ばされていく2人。



 この場に残ったのは倒れ伏す明治と友里、そして柚月のみとなってしまった。



 ――誰も、守れなかった



 それどころか皆自分を助けようとしてやられてしまったのだ。

 柚月は激しい怒りに襲われた。



 ちくしょう!! ちくしょうちくしょう!!!

 自分はいったい何をやっているんだ!!!

 守られて! 庇われて!!

 一太刀すら敵にくらわすこともできない!!




 彼は自分の無力さを憎んだ。

 強くなったつもりだった。強くなったと思っていた。

 それなのに全く手も足も出ない敵がいる。

 柚月は悔しくて握りしめた拳を地面に打ち付けた。




お読みいただきありがとうございます!


面白い・続きが気になる等思っていただけたら下の★★★★★機能での評価やブックマークをよろしくお願いいたします(*'ω'*)

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