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ドッキング

数ある物語から選んでいただきありがとうございます!

反応いただいてとてもやる気になっています笑

お楽しみいただけたら幸いです。

 



 少しすると、他の店を調べていた面々が集まってくる。


「おう、どうだそっちは」

「どうもこうも、どこもかしこも臭いよ」

「こっちは異常なーし」

「こっちもないわ」


 どうやら皆が見ていた建物には残滓は残っていなかったようだ。


「僕の調べていたところは、地面から残滓が見て取れたからたぶん噂の元なんじゃないかって思うけど、隠の姿は確認できてないよ」



 誰そ彼時になる前に残りの他の建物も調査したが、どうやら初めに見ていた建物が一番怪しい。

 一行は初めの建物に戻ると、今度は全員で建物の中に入った。



「うわ、ここくっさい!」


 入った瞬間悟の鼻が異常を検知した。

 どうやら自分の見間違いという線が消えたようだ。

 柚月達は一番空気の淀んでいるキッチンへと向かう。

 誰そ彼時が近づいてきている影響か、地面から出てきている糸がよりはっきり見えてきた。



「……うん、やっぱりこの建物だ」

「だな、もうすぐ出てくるってとこか」



 警戒を強める一行。

 時計の針は4時手前。



 ――ボコリ



 何かがうごめく音がした。


 友里が結界を展開する。

 緑色の球体が5人を包み込んだ。

 その瞬間、地面から無数の手が生えて襲い掛かろうとしてくる。


「!!」


 間一髪難を逃れた一同が目にしたのは、薄く透けた腕に口が付いた異形だった。

 不気味さは言うまでもない。



 けれども2週間、多くの隠を見てきた柚月達が怯えるわけがなかった。


 悟が起爆の人型を投げ込むと、一瞬怯んだように腕が避けていく。

 柚月はその隙を逃さないように札を付けた木刀を構えた。

 既に戦闘態勢に入っていた明治の手には炎が宿り、譲は木気を宿した札をいくつも浮かべている。

 悟と友里も身構えていつでも攻撃に移れる体制だ。


「散開!」


 明治の指示が飛ぶと、各々が八方へと走り出した。

 柚月は霊力を木刀へと移すことを意識しながら腕の群れに飛び込む。



 一太刀、折り返してもう一太刀。

 数いる腕はその一本一本は防御力は無いようで、一太刀浴びせれば霧散して消えていく。

 が、数が多すぎる。

 そして打ち付けるたびに感じることが一つ。



 ――手ごたえがなさすぎるのだ。



 それは他の面々も感じていたようで、背中を預けるように集まると意見を交換する。


「これ、攻撃通ってない!?」

「それな」

「だからと言って放置するわけにもいかないわよ」


 譲が札の一枚を空へと放つと、そこから強い風が吹きすさんで腕を薙ぎ倒した。


「ねえ、これ、本体いるとか、そういう感じぃ?」

「わっかんねぇ。けどそう考えるのが妥当だろうな」


 向ってくる腕をそれぞれ切り倒し、殴り倒しながらも確実に奥へと進む。



 本体がいるのなら腕で守られている奥の部屋だろう。

 キッチンの奥には裏口に続く空間があるようで、そこから糸が濃く見える。


「たぶんあの奥だよ! 糸がそっちから見える!!」

「OK!! 皆時間作って! 俺が道を開く!」

「「了解!!」」



 指を重ねて印を結んだ悟は人型に霊力を流し込む。

 その間悟を囲むように円陣を組むと襲い来る腕を薙ぎ払う。



『清らかな流れよ、おりを押し出せ』



 その言葉が空に放たれると、空中の水分が渦を巻くように掻き乱れ腕を巻き込み流れ出した。


(嘘だろ!?)


 柚月は悟に先を越された衝撃で声を上げた。


「えええ!! いつの間にそんなことできるようになったの!?」

「へっへーん。先輩に教えてもらった!」

「ちょっとそれは後でいいから早く本体のところ行くわよ!」

「「「「了解!!!」」」」




 先へ進むとやはり狭いスペースがあり、食料を保存しておくような場所であった。


「うっわくっせぇ!!!! くっっっっっせぇ!!!」


 入った瞬間悟が叫ぶ。

 どうやら件の特異体質が発揮されたようだ。

 顔も若干青くなっている。

 柚月の目にも、いまだかつてないほど濃くしっかりとした糸が映っていた。



 糸の先には肉の塊のようなものに口だけがいくつも付いた異形がおり、特異体質でなくても匂ってくる肉の腐った異臭が鼻を刺す。


「うっ」


 突入した面々も思わず息を止めているようだ。

 とてもじゃないが、長時間この場にいる気など起こらない。

 早いところ隠を退治して外の空気が吸いたい。

 5人の心が一つになった瞬間だった。



「うぇ、譲、切り込み! 友里、補助! 柚月と悟は人型を飛ばせ! うぇ」


 軽くえずきながらも的確に指示を出す明治。

 その手には炎を纏ったままだ。

 狭い部屋では一斉に飛びかかることができず、近づくにも無数の手が邪魔をする。

 また、得物の長い柚月では切り込みにくいことを配慮された指示だった。



 一直線に走る譲に続く友里。

 そこに襲い掛かる腕を排除するのが残りの3人という格好になる。


「はああああ!!!」


 譲の札から風の圧が放たれた。

 風が鋭利な刃となり肉塊を抉る。


 あぎゃあややあああああああああ!!!! 


 叫び声ともつかない雑音のような声が部屋に響く。

 肉塊は飛び散りながら溶けていく。

 肌に着けば、一緒に自分も溶けてしまいそうだ。

 最前線にいた譲を守るように友里が結界を展開した。


 じゅっ、ジュワあああ


 肉塊が付いた結界が嫌な音を立てる。


「いやあああああ!! 気持ち悪いいい」


 友里が叫ぶ。

 その手には鳥肌が立っていた。

 隠と友里の叫び声のドッキングである。



 叫びたい気持ちも分からなくない。

 恐怖というよりは不快感が強い。

 端的に目の前でR18Gが繰り広げられていると思ってもらえばよいだろう。

 ゾンビ映画とかでこんな場面を見たことがあるような、そんな状態だった。






お読みいただきありがとうございます!!


面白い、キャラが好き、続きが気になる等思っていただけましたら、ぜひ下の★★★★★機能で評価やブックマークをよろしくお願いいたします(*´ω`*)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 皆で協力して、情報収集、調査、討伐……「チーム」って感じでいいですね!(*'ω'*) でも、スプラッタみたいなエグい戦いになっちゃうこともあるんだなぁ(;´∀`)
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