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悟の体質

数ある物語から選んでいただきありがとうございます!

いよいよ試験の隠退治へ向かいます!


いつも反応ありがとうございます!

とっても励みになっております(^^♪

 




 1時間後、様々な情報を集めた面々は再び教室に集まっていた。



「僕が最後だったんだ」


 資料を抱えて入ってきた柚月は、辺りを見回すとすでに集合していたメンバーと合流する。


「じゃあ揃ったことだし、それぞれの集めってきた情報を照らし合わせましょう」


 譲は手に持っていた資料を机に置き指示を出す。

 てきぱきと必要そうな情報をリストアップしていく様はさすが副代表と言ったところだ。

 明治はその間に重要と思われる点をさらに掘り下げて調べている。



 今回特に隠に関係しそうな情報は2点あった。

 1つは高架下の飲食店でかつて白骨死体が発見されたことがあること、そしてもう一つはそれが原因で飲み屋街が閉鎖になったことだ。


 事件の概要は5年前のことで、とある飲み屋の地下から白骨死体が発見されたことから始まり、その事件以降気味悪がられ周辺の飲み屋も店を閉じざるを得なくなった。

 その後時間がたち事件の噂を聞きつけた若者たちが肝試しに行き始めたことで思念が刺激され隠へと変化したと思われる。ということだ。



「……なるほど、その白骨の身元は判明しているの?」

「いや、身元ははっきりしなかったみたい。そもそも店が経つ前から埋まっていたみたいだし」

「へえ、店が建つ前は何があったか分かった?」

「残念ながら、警察じゃないからそこまでは調べられなかった。けど、骨は恐らく50年前の富士山の噴火の時期の物じゃないかって」



「……なるほど。そうなると白骨の人を依代にしているとは考えにくいわね。もしそれが依代なら妖以上になってても全然おかしくないし。おそらくその事件と掛け合わせて噂が広まったことで隠が生まれたって考える方が辻褄は合うわ」



 もしも50年以上この世に留まり続けているのなら、それこそ物の怪レベルになっていてもおかしくないが、調べても最近の噂しか出てこない。

 昔からそういう噂があったのならいざ知らず、最近まで隠の噂は出てこないとなると、白骨を依代と考えるよりは漂っていた思念体が寄り集まって噂に触発された隠となっていると考えたほうが良い。


「そうだね。隠の噂が出始めたのが最近だし、時期的にそう考えるのが妥当だと思う」


 皆が納得した表情となった。



「それじゃあ次現在の噂の広まり具合はどうだ?」


 明治が空気を換える様に聞く。


「えっとねぇ、初めの資料でもあった通り、噛みつかれそうになったとか、食われそうになったとか、そういう話が多かったよ」

「それと地面から手が出てるのを見たとか、そういう話もあったな」


 友里と悟がそれぞれ調べたことを伝える。


「なるほど、それだといきなり足を捕まれることもあるかもな。一応足元に注意するようにしよう」

「地面からくるなら土属性かな?」

「可能性はあるが、決めつけはよくないからな」

「分かってるよー」


 友里が両腕を机に伸ばす。


 その表情はすでに調べ事に飽きたようだった。

 気持ちは分からなくはない。

 柚月も調べ事はこのくらいにして、早く体を動かしたくて仕方がない。

 自分は好戦的ではない方だと思っていたのだが、どうやらそれは勘違いだったようだ。



 これで試験に必要な情報はすべて調べた。後は誰そ彼時まで現地調査を行い隠を討伐するだけだ。





 お昼ご飯を済ませた一行は、噂の元である高架下の飲み屋街に来ていた。

 付き添いには日花と水無月が来ている。

 今まで一緒の班だった分気心が知れているので、柚月にとっては嬉しい組み分けだった。

 今回は先輩たちが手を出すことはないのだが。



「じゃあ誰そ彼時までに周辺の立地と地形の確認、それとよどみやけがれの集中していそうな場所に目星をつけよう」


 明治の号令で現場の確認を始める。

 2週間先輩たちについてやってきたことと同様だ。試験だからと言って緊張することはない。

 柚月は腰に下げた木刀と服の中に入れてある人型を確認して歩き出した。




 高架下はまだ日も高いというのにうす暗く、負の念が集まるにはちょうど良い場所であった。

 肌に纏わりつくような湿気をはらんだ空気が不快感を掻き立てる。


 恐らく夜に訪れた人たちはそれだけでここには幽霊がいると感じてしまうだろう。

 今回はそれが人に害を為す隠になっている可能性が高いため、被害者を出す前に退治する必要がある。


 かつて飲み屋だった建物はシャッターが閉め切られており、今ではその面影をうっすらと残す看板などが残っているだけで、人が寄り付かなくなれば建物はすぐに傷むというのは本当のようだ。


 柚月はところどころ朽ち果てたという言葉が似合う建物の中を見回す。

 雑多に物があふれかえっていた。

 ここは厨房だろうか、取り残された蛇口からはぽとりと水が垂れている。

 ……まだ水が通っているのだろうか。


 ―ぴちょん


 水の垂れる音が廃屋に響く。


(……)


 瘴気しょうきという言葉が似合う、淀んだ空気だった。

 どうにも、いやな感じがする建物だ。

 柚月は霊視を強めてみると、傷んだ床の下から黄色の糸が微かに漂ってきた。


(そういえば地面から手が出ていたって言ってたっけ)


 そうすると、この建物が件の建物だろうか。

 だが糸はこの建物以外からも出ていて噂の元がここかは分からない。


(仕方がない。一度みんなと合流しよう)



 柚月は一度建物から出ると、隣の建物から出てきた悟と情報を共有する。


「そっちはどうだった?」

「こっちは異常なし。……ただ、この辺り一帯嫌な空気が充満してるよな」


 悟は顔を顰め、服で口と鼻を覆う。



 どうやら彼は穢れを嗅覚で嗅ぎ分けられる様だ。

 ちょうど柚月の霊視が糸でつながって見える様に、悟の霊視(嗅覚だから霊嗅か?)では強い隠程匂いがきつくなるのだという。


 もちろん霊視もできるので、特異体質とでも言えば良いだろう。

 陽の気が強いところだと顔が赤くなり、陰の気が強いと青くなるらしい。

 初対面の入試の際に赤くなっていたのはそれが理由なのだそうだ。


 ……暑かったわけではないらしい。





お読みいただきありがとうございます!


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