己の実力
お選びいただきありがとうございます!
貴重なお時間を頂いているので、ここからもっと楽しめる作品にしていきたいです!
3章後半では一気に物語が進んでいくきっかけが出てくる予定ですのでお楽しみに♪
今日は1日学外実習の総合試験だ。
一年生だけでフィールドワークと隠の討伐を行う。
もちろん安全面を考慮して1チームにつき2人上級生を付けられるが、基本的に手も口も出さないようだ。
上級生は1年質の行動を採点し、結果を先生方に届ける役割と、万が一の時のためについてくるだけである。
そうなればほぼすべてが1年生の判断で行われるのだ。
チーム分けはクラスごとで行われ、朝教室に行くと黒板に張り出されていた。
柚月は気合を入れて用紙を眺める。
(あ、あった)
柚月のチームはいつも一緒にいるメンバーで固められていた。
木:譲、火:明治、土:柚月、金:友里、そして水:悟である。
「やったー! 皆と一緒に討伐だ~!」
「いえーい!!」
ぱちんと手を叩き合う悟と友里。
楽しそうで何よりだ。
まあ自分もうれしいので人のことは言えないのだが。
「お前ら~席につけ。説明始めるぞ」
その竹ノ内の号令で各自の席に座る。
「えー分かってると思うが今日は1年だけでフィールドワークから隠の討伐までをやってもらう。端的に言えば、隠を討伐できればクリア、そうじゃなかった奴は追試だな」
いつも通り気だるげな様子で予定表を眺めている。
元からたれ目がちではあったそれは、気だるそうに下げられた。
「今から各班にリストを渡す。この中からお前らの自由に選んで調査開始だ。あ、どれ選んだかは随時上級生から連絡が入ってくるから報告は調査後でいいぞ」
ペシペシと紙の束が音を立てて机に打ち付けられる。
リストをそんな風に扱うなよと柚月は思った。
竹ノ内は一つだけ咳ばらいをして再びクラス全体を見回した。
「まあ、俺からいえることは一つだな。しっかり事前調査して自分たちが討伐できそうなやつを選べ。決して自分の力量を過信しすぎるなよ。……それじゃあ班に分かれて開始!」
何やら意味深な言葉を口にしていたが、もしかしてリストの中には自分たちでは勝てないと思われる隠なども入っているのだろうか。
柚月は一抹の不安を抱えながら班の元へと向かった。
「じゃあ、こことここ、どちらかに行きましょう」
チームに分かれた柚月達は、渡されたリストの中から隠がいる可能性の高いものをピックアップし、重要度順に並べていた。
リストの中には特別隠がいるとは思えない場所も含まれており、すべてのリスト情報を確認しなければいけなかった。
例えば、この時点で隠が出ない場所などを選ぼうものなら、クリア基準を満たしていない為問答無用で追試にされるだろう。
すでに試験は始まっているのだ。
柚月達はその中から、2か所ほど取り出した。
1つは高架下の旧飲み屋街、もう1つは山間部の廃トンネルだ。
高架下の方は、昔はにぎわっていた飲み屋街だったが、富士山噴火後は人口が減り、廃業するところが増えた結果ゴーストタウンと化した場所である。
飲み屋街という人の思念が集まりやすいという点では、すでに隠が活動している可能性が高い。ただし、集まる思念が負の感情ではなさそうという問題点がある。
飲み屋はどちらかと言えば良い思念が集まるのではないか、ということも念頭に置いておかなくてはなるまい。
もう1つの山間部の廃トンネルは、明らかに隠がいると思われる場所で、特に強い隠の可能性、もしかしたら妖レベルにまで至っているのではないかという可能性がある。
そうであるとしたら、1年だけで討伐などできる訳もない。
討伐できなくては試験は追試となるのだ。
相手が微弱な霊では討伐したとは言えないし、かといって相手が強ければ討伐どころではなくなる。
つまり、自分たちの力量に合う隠を討伐してこいというのが、この試験の本当の狙いなのだろう。
この場合、どちらにも問題点はあるが、妖である可能性の高い廃トンネルには上級生たちに向ってもらった方がいいと柚月は思った。
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