縁の下の力持ち
数ある物語から選んでいただきありがとうございます!!
見ていただけてとてもうれしいです(^^♪
今回は柚月、頑張っています(笑)
「「うわあああああぁぁぁあ!」」
こんにちは、僕天見柚月! 絶賛岩に追いかけまわされてる最中だよ! よろしくね!
柚月は叫びながらそんなことを思った。
現実逃避だった。
そうでもしないと、とてもではないが今の状況を飲み込めないのだ。
時は少し遡る。
柚月は坤の棟の3階へと足を踏み入れていた。
1階は壁から攻撃が飛び出してくるタイプの迷路、2階は足場が丸太で宙に浮いているバランスタイプの迷路だった。
1階では攻撃をいなし、2階ではバランスがモノを言った。
もちろん多くの生徒がいっぺんに行っているため、同時に迷路を抜ける者もたくさんいたが、階を登っていく毎にその人数は減っていった。
それを潜り抜けたどり着いた3階は、階段の先にあったドアを開けたとたんガチャンという鈍い音を響かせて罠が起動してしまった。それがこの岩ということだ。
一緒に逃げているのは明治だ。
彼も3階に上がるタイミングが同じであったため巻き込んでしまった形となった。
「ちょおおおお!」
「むりむりむりむり! こんなん体術でどうこうできる訳なくない!? 」
2人でダッシュを決め込みながら叫ぶ。
いかんせん岩の回転が速い。
そんなに急な坂があるわけでもないはずなのに、螺旋階段となった坂を逆に上っていく岩に押しつぶされないように必死に走る。
1階上がるだけであるはずなのにやたら長いその階段にようやく終わりが見えた。
「はあ! 明治! あそこ!!」
「やっとか!!」
4階へと続く扉が見えた時、足元からゾクリとした感覚がこみあげた。
(!?)
それはちょうど初めて学外実習にいった時に炎に囲まれたときのそれだった。
何かが、くる。
そう直感が告げた。
とっさに明治を横に担ぎ霊力を込めて大きくジャンプをする。
「えっなに!?」
戸惑う明治だったが、気にしている暇もなくなった。
あったはずの螺旋階段がなくなったのだ。
ゴロゴロと登ってきていた岩も階下に落ちていく。
大きく上にジャンプしていた柚月達は落下は免れていたが、飛距離が足りなかった。
ドアのある場所へと手を伸ばすが届かない。
「うわああ! 明治何とかできない!?」
「ちょ、ちょっと待ってろ」
「無理無理もう落ち始めるって!」
「分かってる! しっかり持っとけよ!」
明治は手を斜め下へ向ける。
『爆炎よ、我が手に宿れ』
彼の手に炎が現れた。
「うおおお! 出力最大!」
そう叫ぶと炎がさらに威力を増し爆発が起こる。その反動で体が前に押し出された。
ドアのある部分に手がかかる。
片手で男二人分を支える状態となった。
「掴んだ! もうちょい! もうちょい!!」
「無理言うな、俺も霊力使いだから気を自在に操れるわけじゃねえって! 微調整なんざまだできねえよ!」
「じゃあ、僕の握力に掛かってるじゃん!」
「がんばれ!」
「がんばれじゃないよ!!」
まるで他人事のように言う明治に若干の苛立ちを覚える。
けれども時間がたてばたつほど握力がなくなっていく。
これはまずい。とにかくまず両手を使える様にならないと何もできない。
「明治、投げるよ!」
「は?おいおいおいまさかっ!」
「そいやっさあ!!!」
体に反動を付けて左腕で抱えていた明治を上へ投げる。
土属性の霊力持ちは基本的に力が強い。縁の下の力持ち(物理)タイプなのだ。
柚月も例外ではなく、明治を抱えている左腕に霊力を込めぶん投げた。
「うおおおお!!やりやがったな!」
上空に投げ出された明治は、けれども先ほどの技をもう一度打ち4階への足場へたどり着いた。
柚月はその間に両腕で体を支え、よいしょという掛け声とともに上っている。
2人は同時に4階へとたどり着いたのだ。
「おおおおお前なあ! やるんだったら言っとけって!」
「そんな暇なかったじゃん!」
言い合いながらも肩で息をして下の様子を見る。
3階があるはずなのに、そこには暗闇が広がるだけで何も見えなかった。
「「……」」
「とりあえず、何とかなったな」
「だね」
あのまま螺旋階段を上っていたら今頃二人とも暗闇のそこに落ちていただろう。
「柚月、助かった。礼を言う」
「いや、僕も明治がいてくれたから登れただけだよ」
息を整えお互いに手を握り合う。
固い握手だった。
なにはともあれあと2階、登りきらなくては。
柚月と明治は顔を見合わせてドアを開いたのだった。
お読みいただきありがとうございます!
次回は武術の試験です!
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