魔改造
数ある物語から選んでいただきありがとうございます!!
今回は学校での雰囲気を感じていただけたらいいなと思って執筆しました。
楽しんでいただけると幸いです(^^♪
昼休みが終わり、いよいよ体術、武術の試験の時間がやってきた。
ジャージに着替えた生徒たちが校庭へと集まっている。
「諸君集まっているな。これから試験を始める。まずは体力テストだ。今から回す紙を1人1枚ずつ取って回して」
回ってきた紙には持久走や瞬発力などの基礎体力の項目と、組手、護身術などの項目、そして短刀や槍など、それぞれの武器を扱った時の項目がある。
今から全部を測るのかと思うとげんなりとした表情になってしまうのは仕方がないだろう。
まず、基礎体力などは世間一般の体力テストで行われる項目と同じだ。だがその方法はさまざまである。
例えば短距離走であれば、ある者は足に霊力を集中させて普通の人間より圧倒的な速さで走り終わったり、気で追い風を起こして早くしたりなど、普通の体力測定ではない。
自分の持てるすべての方法を取り入れて各項目の測定をしていくのだ。
そういう訳で、念入りのストレッチをして瞑想に入っている者も少なくない。
柚月もしっかりとストレッチをすると霊力の流れを落ち着けるために精神統一を行い、テストの開始を待った。
目の前では何人かが校庭を走っている。
柚月は今長距離走の最中であった。
校庭1周で500メートル、それを10周なので5㎞を走ってタイムを測定する。
戦闘職のため、体力は当然重要となってくるのでこの距離を走るのだという。
まあ、体育の事業の始めに必ず10周しているので今更きついとも思わないのだが、今回はそれにタイム加点が付く。
採点は何分~何分なら何点と決まっており、平均は10分だ。
平均を5点として、1分早くなるごとに1点加算されていく。
もちろん、霊力や気を使ってOKだ。
これは戦闘職の学校ならではのタイムだった。
戦闘職では、要請があった場所へいち早く赴くことが重要となる。
平均時間から見ても、この学校の優秀さが分かるだろう。
「はあ、はあ」
10周を終えた柚月は軽く上がった息を整える様にゴールの付近を歩いている。
柚月のタイムは6分57秒。
(土属性の霊力使いにしてはとても速い部類だよな)
もともと寺で体は作れていたので、あとは霊力の操作が上手くできればもっと速く走れるだろう。
それでも周囲は神子の弟子なら当然だというような態度であるため、柚月にとってはあまり喜ばしいことではない。
何でもかんでも神子の弟子だからと見られるのは、いい気分ではないのだ。
(ちぇ)
それでも柚月を柚月として見てくれる人がいないわけではない。
悟や譲、友里に明治、そして一番驚いたのは竹ノ内もその部類に入っていることだった。
だからこそ柚月は悔しく思ってもぐれはしなかったのだ。
とはいえ走るのに一番適しているのは木属性の気力使いたちだ。
彼らは追い風を起こしたり、風そのものに乗っていたり、とにかく素早く動ける。そしてその分体力も温存できるという利点もある。
まさに切り込み隊長的なタイプである。
スタートが隣だった侘助がまさにこのタイプで、彼は風を呼び込むとあっという間に先に行ってしまった。
「アデュ!!!」
「まって!? 侘助そんなキャラだっけ!!?」
笑顔で手を振りながら颯爽と走り去っていく侘助に若干の苛立ちを覚えてしまったが、仕方がないのである。
次いで木属性の霊力使い、その次に火属性の霊力・気力使いと続く。
やはり得手不得手はどうしようもない。
自分が得意な分野で点数を稼ぐことが一番である。
柚月の場合、それは武術だ。つまるところ、武具を用いた攻撃の素養を見るテストで本領を発揮するタイプである。
(ふっふっふ、早く武術のテストに移りたいぜ……)
柚月にはこう考える自信がある。
最近では霊力の込め方が少しずつ分かってきており、近い先手になじんでいる木刀になら霊力を流し込んで強化できるようになるのだ。
もし込められるようになれば、1年生の中ではトップクラスの戦闘力となるだろう。あくまで、現時点では、だが。
そうこうしているうちに体術のテストになった。
体術は主に近接戦の素養を確かめるためのもので、相手からの攻撃をどれだけいなせるかを見るテスト、つまりは防御面のテストでもある。
そのため武器は用いず、身一つでどこまでできるかを見る。
もちろん、気や霊力の使用は可能だ。
体力テストの測定を終えたものは、このテストの為に試験棟を魔改造して作られたフィールドへとやってきていた。
(えっ……なんで建物の中に土のフィールドが?)
柚月は見たものが信じられず、目を丸くした。
其処はまるで巨大な迷路だった。
「えー集まってきているな」
竹ノ内が拡声器を使って点呼を取っている。
集まった生徒たちは皆目を点にしていた。
「えーなにこれ、なにこれ~」
楽しそうに反応しているのは友里だ。
「坤の棟が魔改造されてる!」
後ろから入ってきた悟も驚いた表情をしていた。
「お前ら静かに! 説明を始めるぞ~」
こんな時まで気だるそうな竹ノ内は、けれども後ろの扉から新浪が入ってくると瞬時にキビっとした動きになった。
初めからそうしておけ、と心の中でツッコミを入れる。
「今からやってもらうのは体術の試験だが、見た通り試験会場は迷路となっている。今から配る紙に5階まである坤の棟の全階に行きスタンプを押して帰ってこい。それで合格だが、もちろん妨害があるからな。それを身一つでいなしていかねーとスタンプまでたどり着けねえから、そのつもりで掛かれよ」
竹ノ内は意味深にニヤつく。
その真意を知るのはこの後すぐであった。
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