学食
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今回は飯テロ要素込みです!
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中間テストがやってきた。
葦の矢のテストは筆記試験と実技試験が行われる。
筆記は普通の学校と同じように座学の理解度を確認するためのもので、実技は訓練や学外実習でどのくらい自分の力を引き出せたかを確認するものだ。
戦闘職の学校ということもあって、実技の方が重要視されるようだが、だからと言って座学をおろそかにしてよいということでもない。
柚月は机にかじりつくようにして問題を解いていた。
テスト問題は習った範囲であるが、なにぶん入試でもそうであったようにところどころ霊視文字が使われるという引っ掛け問題が用意されていた。
もしかして、と思って確認してみたら案の定という形である。
霊視はすでに極めていた柚月でも、普通の問題を解きつつ霊視で見えた問題も解きつつだと時間配分が難しい。
ずっと霊視をしていればいいじゃないかとも思うが、霊視を常時使うのは目への負担が大きいため、実技を後に控えた今時点では得策ではない。
そのため、先に霊視文字で書かれたものを全て終わらせてから通常問題に挑む形となったのだ。
キーンコーンカーンコーン
「はい、やめ。後ろから集めろ~」
試験終了のチャイムが鳴り、答案用紙が回収されていく。
「うわぁ……もうマジ無理。先生たち性格悪くない? 難易度高すぎだって」
筆記テストが終わった瞬間、自然と出てきた言葉だった。
ぐったりと机に突っ伏す柚月に悟も同意の反応を示した。
「それなぁ。時間足らねーっつーの」
問題数は全部で120問程度。一問当り1分も使えない計算となる。
悟と柚月は口をとがらせながらお互いにぶつぶつ言いながら学食へと向かった。
実技は午後からだ。
昼の休憩のうちにコンディションを整えねばならない。学食に着くとメニューを確認する。
今日のランチはじっくり煮込んだビーフシチューがメインのAランチと、ハンバーグがメインのBランチのようだ。
柚月はBランチを頼み、食堂の給仕係へと券を渡す。
しばらくするとホカホカと湯気をあげたハンバーグと茄子の煮びたしの小鉢、それに具がゴロゴロと入った豚汁の乗せられたプレートが出てきた。
給水機から水を注ぎ、きょろきょろと席を探すとちょうど1テーブル空いていたのでそこに座る。
やがて悟もやってくる。
彼はAランチにしたようだ。
ホロホロと簡単に崩れる牛肉は見ているだけで食欲が爆発してしまう。ぐうっと腹の虫が鳴った。
「うまそ~」
「いただきます!」
ハンバーグを割ると、中から溢れんばかりに肉汁が出てくる。
表面がてらてらと輝いていてとても美味しそうだ。
パクリと一口大に切って放り込む。
ジュワーー
外はカリッとしていて、中は程よい柔らかさ。噛めば噛むほど肉の甘みが引き立つ。
頬が緩み上気しているのが自分でもわかる。今はデロンと溶けたチーズのような顔をしているだろう。
ここの学食は基本的にレベルが高い。
それが学生たちは基本的に無料で食べられるのだ。そりゃあ人気が高いのも頷ける。
実際、これ目当てで入学したものもいるのではないかと言われているくらいだ。
初めて食堂に来た時、柚月は痛く感動したのを覚えている。
追儺師養成学校最高。学食最高!と軽く踊った記憶は新しい。
「何にやけた顔してんのよ」
せっかく感慨にふけっていたのに、冷めた声で現実に戻される。
(このとげのある話し方は)
「譲」
「とあたしたちもいるよ~」
見上げると呆れた顔の譲と笑顔の友里、そして明治がいた。
いつものメンバーが意図せず揃う形となった。
「みんなも学食?」
「もっちろん! ここのごはん美味しぃし、何よりたくさん食べられるから!」
「それに栄養面のこともちゃんと考えられているみたいだしね」
「無料でこれが食えるんだったら毎日通うわな」
「ほんとうだよぉ」
ちょうど空いていた席に座る面々。
一気ににぎやかなテーブルとなってしまった。
「というか、友里のそれ、何?」
「これ? 焼肉定食!」
「いや、それは見ればわかる。じゃなくて量の話だよ」
目をやると皿に山盛りの肉が乗せられている。もはや皿は見えず、積み上げられた肉は米が下に埋もれているのではないかと思わせる程小高くなっていた。
「だって、この後実技でしょ? だったらたくさん食べて力付けないと!」
「いや、限度があるくない!?」
テーブルの高さは同じはずなのに、友里の顔が半分ほど肉で見えない。
というか、そんなオーダーあるのだろうか?
「いいでしょー! 特別にお願いしたんだぁ」
友里は意にも返していないようで、何枚か一緒に口に含み嬉しそうにもぐもぐと食べ続けている。
肉は瞬く間に減っていった。
本当に、あの細身のどこに入っていくのだろうか。
「ま、まあ確かに、しっかり食べないといけないよね」
悟がちょっと引き気味でそう言うと「でしょー!」と嬉しそうな声を上げている。
実際問題、午後からは体力勝負なところがある。
実技には、体育の延長線上として体術の試験と武術の試験がある。そして明日には1年だけで隠の現地討伐の試験が行われるのだ。
途中でへばらない為にも、しっかり食べておかなくてはならない。
「そういえば、明日の討伐試験ってグループ決まってるのかな?」
「あー、それな」
柚月はハンバーグの傍にあったポテトにデミグラスソースをつけながら聞いた。
向かいの席にいる悟も湯気で曇った眼鏡をはずしながら相槌を打っている。
何も1人で討伐するわけではなく、いつも通りグループを作っての討伐になるという話は聞いている。
だが、肝心のグループ分けがどうなっているのかが知らされていない。
「自由に組んで良いならこの5人で組みたいけどな」
柚月は本心をぽつりとつぶやいた。
「俺もー!」
「あたしも~!」
元気に返すのは悟と友里だ。
明治はやれやれという表情で同意の意を示し、譲は「ま、まあどうしてもっていうんだったら組んでやらなくもないわよ」と照れたように言った。
どうやら賛同してくれているらしい。
最近、譲の言い回しが少しずつ分かってきた。
こういう時はまんざらでもないのだ。
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