忍び寄る足音
初めまして。香散見 羽弥と申します。
初投稿なので至らない点も多くありますが、楽しんでいってもらえると嬉しいです。
連載小説で自分の書きたいことをまったりと書いていきます。
隠……この世ならざるもの。物に隠れて形が顕れることを欲しないもの。死者に関する言葉。この世のよくわからないもの、不思議な物事を総じて隠と呼ぶ
「ねえ、隠って知ってる?」
「あの山の上にはガラクタの山があって、そこから夜な夜な声が聞こえてくるんだって」
「最近一気に隠が増えたから、あの山にもいるのかもしれないって」
「地元の人も怖がっちゃって近づけないらしいよ」
「なんでも隠が増えたのは忌子が現れたからなんじゃないかって」
「忌子?」
「私もよくは知らないんだけど、隠たちを率いて害を為す存在らしいよ」
「ふうん」
どこからともなく噂話が聞こえてくる。
その声はゴミの集まった山の中にまで、風に乗って届いた。
『――58年12月……、速報です。……権で――。異例と言える――忌……と称し――』
誰もいないはずのガラクタ山の中からふいに機械音が響く。
不法に投棄されたのかそれとも意図せず放り出されたのか、寄り集まったガラクタの山の中ではどこに音源があるのかはわからないが、静かな山の中に鈍い音を響かせていた。
『――は、対立を……新たにーーを設立……とのこと』
音は一つだけではなかった。ガラクタの山からはいくつもの鈍い音が聞こえて来る。
『――年、共同で……隠の対策を打ち出し……』
やがて山は共鳴するかのように震えはじめる。
あぁ、背負わされしものどもよ。忘れられしものどもよ。
願わくは――。
◇ ◇ ◇
辺り一面が闇に呑まれたような冷たい空気の中、何かが爆ぜる音が聞こえて来る。
音がした方角を見れば、一帯は轟々という音とともに火の手が上がり黒煙を吐き出していた。
音の中心は黒煙により見ることは叶わないが、周辺には原型の分からない金属片と薙ぎ倒された木々が確認でき、炎の明かりで照らされた背後に聳えているのは崖。
黒煙に包まれどのくらいの高さなのかは伺えない。
わかることは、その場所が森の中だということのみだった。
轟々と燃え盛る火は数十秒もしないうちに次々と周辺の木々に燃え移り、明るさを増していく。
――ジャリッ
炎が上がっていない暗闇から別の音が聞こえた。
闇から出てきたのは人間の様だが、けれども人間かは疑わしい。
轟々と燃え盛る炎などまるで見えないかの様に音の中心へと歩を進めると、探る様に残骸の周りをうろついている。
時間にして数分。
それは身をかがめ地面をなぞり、口角を上げた。
「見つけた」
よく言えば中性的、けれども無機質な声がぽつりと溢れたと思えば、同時にそう遠くない闇の中からずしりとした揺れと衝撃音が聞こえて来る。
「うーん、先手を取られたかな」
それは振り返るとポリポリと頬をかき、少し考える様に腕を頭の後ろで組むと炎の中を悠々と歩き出した。
不思議なことに炎はそれを避けているかの様に歩く道を開けていく。
「まあいいか。まだ時期尚早ってね」
そう言い残し再び闇の中に姿を消す。
残されたのは燃え盛る炎と黒煙、そして点々と木々の隙間へ続く血痕だけだった。
読んでいただきありがとうございます。
書き溜めた分を少しずつ上げていこうと思いますのでお時間のある時にぜひお読みください!
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