穏やかな告白
クリスの話。
関係性の変化により、呼び方も変わってます。
ベルとの交流は穏やかに進み、緩やかながら確実に二人の距離を近づけていった。
色々な話をしたが、俺はまだ彼女に己の出自の話を切り出せていなかった。
「俺は臆病だな」
「全てを共有することだけが愛情ではありません。クリス様、貴方の心も大切にされるべきなのです。
焦る必要はございませんよ。お二人ともまだお若いのですから」
ガランドは静かにお茶を淹れながら、自室で呟いた俺の独り言にそう答えた。
「まだベル様と親しくなられたばかりではありませんか。きっとその時はちゃんと訪れますよ」
ガランドにはそう言ってもらったが、ベルに隠しごとをしている後ろめたさのようなものが心のどこかに引っ掛かっていた。
そのためか、つい機会をうかがうように彼女の様子を見ることが増えた。
するとその中で、俺はあることに気付いた。
ベルは不意に目が合うと、さっと視線を外すのだ。
最初は気のせいかと思ったが、それは何度となく続いた。
確認するためにあまりにもじっとベルを見すぎてしまったのか、ある日少し居心地が悪そうにした彼女にこう言われた。
「ねぇ、何でそんなこっち見てくるの?」
気付かれるほど見てしまっていたかと反省はしたが、理由は誤魔化すようなものではないと思ったので、俺はその問いに素直に答えた。
「ベルは不意に目が合うと、視線を逸らすだろ?それで気になって見てしまっていたんだ」
怒られるだろうか、と少し思っていたが、彼女の反応は予想外のものだった。
視線を下に落とし、顔を赤くしていたのだ。
その反応の意味が分からず黙っていた俺に、ベルは蚊のなくような声で理由を告白した。
「……だって、貴方かっこいいんだもん……」
顔を赤らめたまま、ベルは早口で続けた。
「自慢じゃないけど、私は勉強ばっかりでずっと恋人もいなかったのよ。こういうこと全然免疫がないの。だから不意に貴方のかっこいい顔を見ると、恥ずかしくてつい目を逸らしちゃうの!」
告白する間に涙目になりつつある彼女を前にこの反応は相応しくないと分かっていたが、こみ上がるものを抑えきれず俺は声を出して笑ってしまった。
まさか自分がこんな単純で、現金な人間だとは思わなかった。
「な、笑わなくったっていいじゃない!」
必死にそう言うベルの手を引き、俺は彼女を腕の中に引き寄せた。
まだ笑いで体を揺らす俺の背に、拗ねた顔をしつつもそっと手を添えてくれたベルに俺はこう伝えた。
「ありがとう。この顔も悪くないかもって、初めて思えたよ」
俺の言葉に、彼女は不思議そうにしながらこう尋ねてきた。
「そんな整った顔なのに?鏡見たことないの?」
「昔はあったよ。でも10年以上は見てないな。
ねぇベル。少し長くなるかもしれないけど俺の話を聞いてくれないか?」
まさかこんな穏やかな気持ちでこの話ができるとは思っていなかった。
最後にこんな気持ちにしてくれた彼女に改めて感謝を伝えたい。そう思いながら、俺は自分のことを話し始めた。
二人の話の後書きに書いた取りこぼしはこれです。
クリスに自分の顔も悪くないかもと少しぐらい思って欲しかったのです。
しかし見た目のとてもよい私の恋人は実は隣国の王族でしたってベルの方がそういう作品の主人公らしいかもしれません。