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6 いえすおあです

ここで一区切りです。

また、書き溜めて投降しますので、よろしくお願いします。


初めての投稿でこんなに見てくださって感謝です。ブクマや評価ももらえてウハウハしてます。


ありがとうございます。


6

今日はベルゼに会いにきたわけですよ。ジオルを廃嫡するだけで、殺さないで欲しいなと頼みに。優しい人格者であろうベルゼ様に……


「ああ!なんて美しい!!」


 挨拶もしないうちに、ベルゼは感極まった声を出した。あれ?もしかしてベルゼルート?と思ったのも束の間、ベルゼは私の手をガシッと握り手に口付けた。


「貴方こそ我が運命の人!!」


 こいつ大丈夫か?


「ベルゼ兄上も、運命の人を見つけたんですね。私がマデリーンを見つけたように。」


 隣で、アルスがマデリーンといちゃつき始める。


 ベルゼは跪いたまま、夢見るように私を見る。黒い髪と黒い瞳、肌は白くて、引き締まった腕が羽織ったマントから出ている。


「リンダ、私と結婚しておくれ。私は君を裏切った男を引き裂いて君に捧げよう。もちろん、私の愛と王妃の座も……」


 いや、会ったばかりで、そんなこと言われても。それに、その人の命乞いに来たんですけど……


「素晴らしいですね。裏切り者がどうなるかの見せしめにもなります。」


「あ、アルス様?」


 マデリーンも面食らっている。兄弟大好きな優しいアルスのセリフとは思えない。


「あれ?何がおかしいこと言ったかな?リンダ嬢、どうか未来の王に色良いお返事を」


 にたーっと言う擬音が似合う笑顔。私の好きなアルス様じゃない!!マデリーンも顔を引き攣らせる。何か、何かが間違ってる。いや、でも、とりあえずあの気の毒なジオルを助けてやりたい。何の義理でと言われても、あんなの放って置けないでしょ。


「あ、あの、婚約のお話は父と相談させていただいてお返事を申し上げたく存じます。それと、あの、ジオル様をお助けくださいませ。私はもう恨んではおりませんし、ベルゼ様の道をご兄弟の血で汚して欲しくないのです。」


 身体が震える。なんだか、とんでもなく恐ろしいものの前にいる気がしてきた。


「わ、私もですわ。ジオル様のご様子では、血を流す必要はございませんわ。穏便にしていただきたく存じます。」


 マデリーンも震えながら援護射撃をくれる。


「なぜ?なぜあの男の命乞いをするの??君を裏切った男だよ。君より年上だし、話しが合わないでしょう?私は君と同い年だよ。」


ん?


「君が好きな世界をわざわざ再現してあげたんだよ。また、断るの?あの男が好きなの??ああ、やっぱりさっさと八つ裂きにしておけば良かった。」


んん?


「あの男は来ないよ。今度は来れないように縛らせておいたからね。前は油断してて、邪魔されてしまって、君に少し苦痛を与えてしまったけど……」


「え?あの、貴方はもしかして、山上様?」


 前世?のお見合い相手の名前を呼んでみる。


「違う。年上過ぎると断られたから、今度は君と同い年のベルゼになったんだよ!王子が好きなんだろ?君が好きなゲームの世界を一から作ったんだよ。そして君が好きなキャラクターと友達にしたんだ。あとは、私と結婚して末永くこの国を統治しよう。どうしてそんなに冷たいんだ。何回やり直したと思っている?思い出させてあげようか。いい加減反省しておくれ。私は愛する人に拒まれて何度も何度も傷ついているんだ。」


 まるで、こっちが悪いように言って、頭に手をかざしてきた。その途端蘇る記憶、記憶、記憶。何回私は転生したんだろう。ほぼ全てで、17歳の頃こいつに殺されている。呆れるほど、プロポーズされては断って殺されての繰り返し。


「愛してるんだ!!」


 叫ばれても……


 呼び起こされた記憶のいくつかにこいつの正体が見つかった。

 悪魔、それも魔王の一人。名前はベールゼブブ。アニメやゲームにもよく出てくるメジャーどころで、一説によると魔界No.2だ。もちろん人間は敵いません。


「困りましたね。また、やり直しですか?」


 アルスは大して困っていないような顔で平然と言う。やり直しって多分、私死ぬ。この世界も下手したら潰される。私たちは魔王の手の上だ。


「あ、あのアルス様?」


「ふふ。」


 愛するはずのマデリーンの問いかけにもアルスはただただ笑っている。


「もう良い。お前の言う通りにしても彼女は手に入らなかった。消えろ!」


 ベルゼ改め悪魔さんは、キレ気味にアルスを睨む。


「まあまあ、そう仰らないで。私としてはベールゼブブ閣下と幾久しい同盟関係をお願いしたいのです。それに、閣下は決断が早過ぎるんですよ。まだ、お断りにはなっていませんよ。ねえ?リンダ様?」


 アルスはニタニタ笑いながらこちらに話を振ってきた。これ、断ったら私死ぬ。世界も多分終わる。私は羽付きバッタのように頷いた。


 途端に悪魔さんは蕩けるような笑顔になった。


「リンダ……ああ、ああ、そうか、あの男を生かしておけば良いのだね。そうしたら私と結婚してくれるんだね。」


 もうヤケだ。羽付きバッタ再びで私は首をバクバク縦に振った。


「そうか、君は血が流れるのが嫌だったんだね。ああ、それに今まで私が早すぎたのかな?君は私に何度かプロポーズして欲しかったのかい?随分すれ違ってしまったね。ごめんね。今生こそ、幸せになろう。」


 甘い声音に蕩ける瞳は恋する少年だ。この閣下は、何故私をこんなに気に入ってるんだろう?甦った記憶の中にも答えがない。


「あの、婚約はその、父の赦しを得ていただきたいのですが……」


 悪あがきです。このままでは九割型このまま寝室に連れ込まれる。少しでも1分でも一秒でも、悪魔とそう言う関係になるのは遅らせたい。


「ああ、そうだったね。君は私の最愛の人。君が望むなら、もちろん正式な手続きを踏むよ。ああ、でも、婚約前だからって、あの男との浮気はダメだよ。君の望みだから生かしてはおくけれど、本当は前世君に惚れて私との仲を邪魔した奴だから、今生で屈辱まみれにして殺してやるつもりだったんだよ。」


 か、彼方だ!私が首絞められてるのを助けにきてくれて、多分一緒に殺されたんだ……。


「良かった。良かった。これで千年の恋も叶いましたね。いやあ、めでたしめでたし。」


 可哀想に、マデリーンは真っ青だ。私も同じくらい真っ青だと思うけど。


 こうして、私とマデリーンの、多分人間じゃ無い奴と婚約時代が始まった。

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