1 気がついたら転生してました
ほぼ初めて投稿します。
初心者のくだらねー投稿だけど、悪役令嬢ものだし、一応見てやるか、と暖かく見守っていただけたら幸いです。ブックマークとか評価とかしていただけると励みになります。よろしくお願いします。
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何故か走馬灯のように記憶が映像化する。
私はわりと良い家に生まれて、お父さんとお母さんに可愛がられて、順調に小学校、中学校を卒業し、楽しい高校生活をおくっていた。友達にも恵まれて本当に楽しい毎日だった。
青春真っ只中の17歳の時、何故か大金持ちの御曹司からお見合いの話が舞い込んで、両親は舞い上がっていた。両親の猛プッシュに押されて会ってみたけど、25歳で17歳と結婚したがる男ってロリコンにしか思えず、綺麗な顔で微笑まれても余計に胡散臭くて堪らなかった。
で、断ったら、どうして?何が悪いの?と何度か問い合わせがあったので、年齢が違いすぎて話が合わないと嘘でも本当でもない理由を言っておいた。両親は心底残念がっていたけど、しばらくして私が嫌なら仕方ないと納得してくれたんだっけ。プツンと映像が途切れる。
それから、それから??首に何か??いや、何かから……落ちた、ような。滑って落ちて頭を打ったような気がする。階段、だったのかな??
「リンダ様!!」
突然の叫び声で目が覚める。天井にはシャンデリア。うちはそこそこ金持ちだったけど、はっきり言って小金持ちだ。家にシャンデリアなんて掃除が面倒でお母さんが発狂する。
ここどこ??なんだか、キラキラしたところだな。宮殿??
そう思っていると人がワラワラと寄ってくる。なんだか中世を思わせるような人達、いや、中世というかなんちゃって中世。そう、よくやっていた乙女ゲームでモブが着ていたような……
「マデリーン様!!こんなこと許されるとお思いですの?!」
背中を支えられてて上半身だけ起き上がると、階段の上には青くなって震えているこれまた中世もどきのドレスの令嬢がいる。
そうそう、彼女はマデリーン嬢。伯爵家の御令嬢だけど、庶子でほとんど平民として育ってたんだよね。
でも、綺麗で心優しくて、魔法が発現したことにより15歳で王立魔法学校への入学が許されたのよ。そこから、素敵な王子様達や貴族の御令息、未来の騎士達、研究者、大商人とのルートがあって、メインルートが皇太子ジオル様とのルート。でも、ジオル様には公爵令嬢の婚約者リンダ様がいて……
「リンダ!」
はーい。リンダさん呼ばれてますよ。
「リンダ!!お前はこんな事をしてまで、マデリーンを苦しめるのか?!」
はい?怖い顔の金髪イケメンがガクガクしてくるんですけど、いや、私階段から落ちたばかりで頭が回らないんですよ。揺すらないでよ!!痛いわ!!
「え?リンダ様の自作自演??」
「ま、まあ、ここまでなさるなんて……」
集まってた人が後退りながら離れて行く。ガクガクしていたイケメンも手を離したかと思えば、汚いものでも見るような顔で去って行く。私は残ってくれた侍女らしき何人かに支えられてふらふらと客用の寝室に連れて行かれた。とにかく頭が痛い。
「皇太子様が婚約破棄を決定されました。また、嫉妬によりマデリーン嬢を無実の罪に落とさんとした事により、謹慎を命じるとのことです。しばらくは公爵家内で過ごされますように」
ふらふらしながら、家に帰って来れば、ジオルの使者がいた。偉そうにジオルの命令を告げた後、お父様の顔をチラッと見て、若干ビビりながら去って行く。
「こんなこと!こんなことって有りませんわ!!」
お母様が怒りながら泣いている。お父様も怒り心頭という様子。
私はというとまだ、ぼんやりしているけど、大体状況が飲み込めてきた。
私はリンダ・アディード公爵令嬢で、さっきまでこの国のジオル皇太子の婚約者、つまり未来の王妃様だったが、マデリーン・スミス伯爵令嬢に惚れ込んだジオルの策略で、マデリーンいじめをでっち上げられ婚約破棄に追い込まれたのだ。
……って、納得しちゃってるけど、私、ゲームの世界に転生したの?それともただの妄想??
ほっぺたをぎゅうぎゅうしてみるが、やはり痛い。訳のわからない状況は、妄想の可能性が高すぎるくらい高いが、痛みや今まで見た部屋や人々の様子は現実感がある。とりあえず、これが現実でも夢でも後で後悔しないよう全力で頑張ることにしよう。
実は、だんだんとこの世界のリンダ記憶も蘇ってきたので、もしかしたら、女子高生だったのが夢なのかもしれない。その線も濃厚だなあ。うーん。でも、それはそれで複雑だなあ。私の認識としては、日本人の秋月 桜って言う高校生なんだよね。幼馴染の悪ガキには狂い咲きと呼ばれていた。どうでも良いけど。
「お父様、お母様、私はマデリーン嬢を追い落とすためにあんな事は致しません。靴が絨毯に引っかかってしまっただけですの。きっとすぐに謹慎は解けますし、あんなに気の短い方の婚約者でなくなって晴れ晴れしておりますわ。」
私が笑顔でそう言うとお父様とお母様は目を見張った。
「リンダ。貴方、そんな。ああ、無理をさせているのね。でも、でも、貴方の言う通り、あんな男に貴方を嫁がせなくて良かったわ。」
お母様は私を優しく抱きしめてくれる。それを見てお父様は咽び泣く。
でも、実の所、私は嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。このゲーム、マルチエンドというか、進み方でキャラの性格や行動が結構変わるのだ。ジオルが優しく優秀な王子様の時、私はマデリーンをさんざんいじめ、彼女を追い落とそうと自作自演して、この階段事故で死亡する。皇太子とヒロインが断罪する必要もない便利な悪役令嬢だ。でも今回私は生きている!!
(一番の破滅フラグを、もう叩き折ってた!!)
お母様に抱きしめられながら私は心の中で万歳三唱をしていた。
私のいる世界はジオルを攻略するメインルートではなく、その弟、第3王子アルス攻略ルートだ。
弟として兄を支えるため励んできたアルスはジオルと仲の良い兄弟なんだけど、最近の兄の素行を見て、この人を王にして良いのか?と思うようになる。そこに現れるのがジオルに言い寄られて困っているマデリーンなのよね。
私、このルートが一番好き。兄への想いと、マデリーンへの恋心で揺れるアルス様がとっても素敵なの。金髪のジオルに比べて干し草色の髪とわざと目立たないように生きてきたせいで正当に認められてこなかったアルスだけど、本当はとっても優秀。強いし、賢いし、優しいし。それに、ジオルと同じサファイヤのような瞳が、髪の色が控えめなせいでアップになるとすっごく綺麗なのよ!
切なげな熱い瞳に見つめられてヒロインもクラクラしちゃうのよね。
青い、蒼い海の色。ああ、私は吸い込まれてしまうってセリフを見た時は一日中ときめいていたわ。そのまま、キスされて気絶しちゃったり!ああ、素敵!!ああ、あれをこんなにも現実感のある世界で生で見られるなんて!私、すごく幸せかも……
そうなのよ。私の推しはアルスとマデリーンのカップル!!このままアルスとマデリーンをくっ付けて、ジオルには退場いただいて、私もハッピー公爵令嬢エンドを目指すのよ。
お読みいただきありがとうございます。続きも早めに投降しますので、よろしくお願いします。