97:あれから1年~後編~(アルバード・シエラ)
「んーまぁ本人がいいならいいけどさ。まさか今度は妹さんとライル王子が婚約とはねぇ。」
実はこの1年の間に、シエラの妹シャルロッテと、ライル王子の婚約が決まった。はじめは、シエラの妹シャルロッテはバランドールに対して憤りをもっていた。何せ姉をこんな目に合わせた国だということで、普段は大人しい滅多と怒らないシャルロッテでさえ憤慨していたのだ。
だが、ブリギット達の処遇を報告するため、誠意を見せたいとライル王子がアルカディアにやってきたのだ。そこで、シャルロッテは掌を返してしまった。
「お姉様、これは運命だったのですわ。私の王子様が現れました。」
ライル王子を見るなり、そんなことを言うシャルロッテ。
「え?」
シエラは妹は何を言ってるのだと思ったのだが、
「これは・・・なんと可憐な。もしよければ是非私の妃になっていただけませんか?」
何を思ったのか、ライル王子もシャルロッテに会うなりそんなことを口走ったのだ。
あれ?ロ〇コンだと思ってたけど、この年ならストライクゾーンなのかしら?とも思ったが、よくよく考えればシャルロッテは童顔ゆえ、実年齢よりは年下に見られがちだった。
「こ、光栄です・・・わ!」
と、まぁシャルロッテも乗り気だったことに、シエラは驚いた。というのもシャルロッテは少し引っ込み思案なところがある大人しい性格だったからだ。それがこんなに積極的にでたことから、何か思うところがあったのだろうと、シャルロッテの意思を尊重することにした。それにライル王子についても、以前より印象は良くなっていたからである。そういう訳で、双方が乗り気だったので、話はトントン拍子にまとまってしまった。
ただ、父親であるアルカディア王は、もう二人とも嫁に行ってしまうのか・・・と意気消沈していた。だが、シャルロッテはまだ年若いので、当面は婚約のままである。
シャルロッテの容姿はシエラとはまた趣が違う。姉のシエラは華やかで大輪の華というイメージだが、シャルロッテは、まさにライル王子が言うように、可憐という言葉がぴったりな、童顔ゆえの庇護欲をかきたてる可愛らしい容姿をしていたのだ。今思えば、シエラに対してライル王子が事務的な対応だったのも、自分がライル王子の好みではなかったのだろうなと、シエラは納得した。
今頃になるが、シエラは3弟妹だ。長女シエラ19歳、長男イザーク16歳、次女シャルロッテ13歳の3姉弟。長男イザークはもっか他国にて留学中であるが、結婚式には帰国予定である。実は預け先の国には以前にアルカディア王の妹が嫁いでいたことで、縁ができた国であった。イザークのとある癖があったため、わざと遠方の国に留学をさせられていると、アルバードには伝えられていた。
「私みたいになってはいけないから、シャルに魔力測定はしたのよ。そしたら普通に魔力はちゃんとあったから、あちらには受け入れやすいのではないかしら?」
「まぁ、魔力至上の思想は覆すってライル王子は張り切っていたけどな。」
「そうね、魔力はもちろん有ればこしたことはないけれど、それを鼻に掛けるのは良くないわね。それは他のことについても同じだけれど、差別のない国づくりをライル王子に期待しちゃうわね。」
「あぁ、ライル王子ならできると思うよ。あーそれでさ、何度も言って悪いんだけど・・・本当にいいのか?領地運営任せて、俺は冒険者を続けても。」
アルバードはシエラから申し出てくれたこととはいえ、かなり気にしていた。
「やだ!アルバードまだ言ってるの?気にしないでっていうか、協力しようって話あったでしょ。」
「ま、まぁそうなんだけど。」
「だけどね、一つだけ約束して。絶対に帰ってきて。私はアルバードの能力を信じてるわ。だから絶対に帰ってきてね。」
アルバードはSランクゆえ、危険な仕事を請け負う確率は圧倒的に他の冒険者もよりも高い。アルバードの能力が突出しているとは聞いてはいるものの、心配する気持ちには変わりはない。だけど、シエラにはアルバードにはやりたい事をしてもらいという気持ちが勝っていた。
「あぁ、絶対に俺はどこに行っても必ず帰ってくるから。」
「うん、絶対よ。だから、この話はもう終わり。次したら怒るわよ?」
「わかった。ありがとうシエラ。」
「ふふ、どういたしまして。」
シエラとアルバードはそういうと抱きしめ合い、深いキスをした。
そしてついにアルバードとシエラの結婚式の日になった。




