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90:さらばバランドール~後編~(アルバード)

 え?え?何これ??


 「わぁーお姫様みたい!じゃなくってごめんなさい!!元々お姫様でした!」


 スカーレットはあたふたしていた。 


 「ふふ、スカーレットさん誉め言葉として受け取っておくわ。」


シエラはコロコロと笑っていた。


 アルバードは固まっていた。シエラのあまりの美しさに凝視してしまい、言葉に詰まってしまったのだ。シエラはユーナに支度をしてもらい、いつもの可愛い系ではなく大人っぽく仕上げてもらっていた。髪はサイドをほんの少しだけ残して、あとは全てアップにし惜しみなく、シエラの項がさらされていた。薄い青色のドレスはシエラの瞳に合わせ、身体のラインがくっきりとでたマーメイドライン仕立てのドレスを着用していた。


 え?俺の嫁さんになるんだよな?え?いいのかな?ホントに?

 


 「遅くなってごめんなさい。アルバード、どうしたの?」


あまりにアルバードが固まっているので、シエラは一体何事かと思った。


 「シエラ殿下、アルバードはね、シエラ殿下があまりにもお美しいので、固まっているんですよ。」


 「まぁ、気持ちはわからなくもないんですけどね。」


 いたずらっぽくヴァイオレットは答え、キースも同感していた。


 「え?美しいって・・・」


 シエラはヴァイオレットからサラっとは言われたものの、恥ずかしくなり、


 「え、えと、アルバード私おかしくない?ユーナが頑張ってくれたの。」


 「お、おかしいどころか!綺麗だ!俺には勿体ないぐらい美人だし、えーとごめん、俺こういうの語彙力ないんだけど、とにかく見惚れるくらい綺麗だ・・・」


 「あ、ありがとう。」


 確かにアルバードに綺麗と言ってもらいたくてユーナに頑張ってもらったのだが、シエラは改めて言われると恥ずかしくなってしまった。


 「おぉお!シエラ王女、そのお姿は?!」


 「まぁー」


 バランドール王と王妃は元に戻っているシエラを見て驚いていた。


 「両陛下、黙っていて申し訳ありません。実は私、夜だけ元に戻れるのです。朝になればまた幼女に戻りますけどね。」


 「そうだったのか。ということは、呪いの解呪は進展があったってことだな?」


 「えぇ、実は私の片思いで夜だけ元に戻れるのです。」


 「「「「え?」」」」


 さすがにここにいるメンバーは解呪の条件を知っているから、解呪が中途半端ということは、ということでアルバードに一気に視線がいった。


 「えーと。」


 さすがに焦るアルバード。


 そうなるよなー。けど俺的にはシエラの事を思う気持ちは、これが恋なんじゃないかと思うんだけど、何せ初恋だし俺もよくわかってなくて、だけど結局解呪されてないから、やっぱり違うのかもとかも思うし、思いがもしや足りないとか、いろいろと考えを巡らせていたら、シエラは凛とした声で皆に聞こえるように話し出した。


 「見ていただいて、わかりますように、私はまだ解呪には至っておりません。ですが・・・実は元の姿に戻れている時間は少しずつですが、日に日に伸びているんですのよ。」


「!そうか、ということは、」


バランドール王は嬉しそうに、シエラとアルバードを交互に見た。


 「えぇ、一度にという訳ではありませんけれど、日々少しずつ育んでいっていると実感しておりますの。だから時間はかかるでしょうが、きっといずれは戻れますわ。」


 シエラはにっこりと微笑みを浮かべると、周りに歓声が上がった。


 「そうか、良かった!」「良かったわねぇ」


 両陛下も、嬉しそうにしていた。




 その様子を隅の方で見ていた二人はこんな会話を繰り広げていた。


 「イライザ、あれ本当なのか?」


 「まぁ確かにほんの少しずつだけど大人に戻れている時間は伸びてるわね。」


 「そうか、ならいいんだが。」


 「まぁ、ある時期を境にその心配もなくなるわよ。」


 「・・・なるほどな。で、結局イライザが解呪しないのか?」


 「うーん、そのつもりだったんだけどねぇ、気になることがあるから、様子見のほうがいいかなって思ってきたの。」


 「ふーん。まぁ、いい。後の楽しみにしておくかな。」


 ヤンは開いているのか開いていないかわからない目を、アルバード達のいる方向に向けていた。


 「ヤンはこれからどうするの?ここの依頼も終わったんでしょ?」


 「あぁ、ギルド長は今回の依頼で臨時だったからね。次の依頼も来てるから。俺も引継ぎだけしたら移動するよ。」


 「また、いつか・・・ね。まぁ私は寿命が長いからどこかで合えるでしょ♪」


 「そうだな、できれば敵対していないことを祈っておくよ」


 ヤンは忍者だ。依頼主の任務を遂行する為には、情には流されない。


 「そうね、もしその時には、私が気にいらない内容だったら、全力でお相手させていただくわね♪」


 イライザは妖艶に微笑んだ。


 「ふふっできれば、相手はしたくないけどね。黒の魔女様は怖いから。」


 「なによー私自分いうのなんだけど、フランクよ。」


 「そうだな、そして義理堅いってことも知ってるよ。」


 「え?」


 「いや、なんでもない。じゃ、俺は挨拶したらお暇するよ。またどこかで。」


 「えぇ、ヤン元気でね。幸あらんことを。」


 

 


 こうして、バランドール出立前夜のパーティは、和気藹々と夜も更けていくのであった。





港町、コーデル____


 シエラ一行は、帰路に着く船に乗り込むところだった。ただ行きと違ったのは、帰路にはヴァイオレットとキースが一緒だった。

ライル王子とランスロット改めランベルク、スカーレットが港に見送りに来ていた。


 「お耳汚しになるでしょうが、あの者たちの沙汰については、後日改めてご連絡させていただきます。」


 「それは致し方ありませんわ。お待ちしていますわね。」

 

 「帰路、道中お気をつけて。解呪については吉報をお待ちしております。お元気で」


 「えぇ、ライル王子も、お元気で。」


 ライル王子は、跪いてシエラの手の甲にキスをした。


 「シエラ王女アルバード卿、俺はアルバードさんを目標にきっとSランクになってみせますよ。」


 「ランス、じゃなくてランベルクさん貴方ならきっとなれますわ。」


 「えぇ、頑張ります!」


 「うん、その若さで既にAランクだしな、もう少し『剣気』を磨けばSランクも夢じゃない。待ってるよ。」


 「はい!」




 こうして、和やかな雰囲気で港を後にし、一行はアルカディアへ帰還したのであった。


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