89:さらばバランドール~中編~(アルバード)
パーティが始まった。
ぶっちゃけて言うと、俺はこういう場は恐ろしく苦手だ。まぁ貴族のこういうのが性に合わなかったのもあって、冒険者やってたんだけどさ。まぁ今回は内々だけなんで、小規模だからまだマシなんだけどね。会場もちょっと密室になるっぽい会場を選んでるようだ。外側の窓にはカーテンは閉め切られていた。
アルバードもパーティ仕様の黒を基調とした、正装をしていた。
「アルバード卿」
ライル王子から声をかけられた。うん、今日は正装してるから、いつも以上に「ザ・王子様」って感じだな。
「この度はご助力いただき、本当にありがとうございました。」
ライル王子は恭しく礼をしたが、
「ダメですよ。こんなところで王族とも有ろう方が頭を下げてしまっては。」
「いえ、いいのです。本当にアルバード卿やイライザ殿が来てくださったからこそ、事件が解決したといっても過言ではありませんから。」
「・・・ランスロット王子はどうなるんですか?」
「兄上自身は何も関与していないとはいえ、他国の王女の暗殺未遂など、当然重罪ですからね。身内に、しかも母親ですから何も処分しない訳にはいきません。」
ま、言っていることはそうだろうなと思っていた。だが、ランスロット王子の場合は抜け道があるからな。
「もちろん、まだ当面は尋問ですので判決はまだですが、首謀者であるブリギッドとトリスタンは当然ですが、死罪となります。そして兄上は、流刑になるでしょう。」
「で、実際のところは?」
ライル王子は、ニヤリと笑い、
「勿論、今までどおり『ランベルク』としてギルドで活躍してもらいますよ。」
「でしょうね。」
俺も顔がほころんでしまった。ランスロット王子は実際何も加担していないし、むしろ事件解決の立役者の一人だ。
「・・・僕としては、政を兄上と一緒にしたかったんですけどね。」
そういうライル王子は少し寂し気な表情だった。
「ですが、兄上は兄上のやりたいことがありますから、今はその気持ちを尊重して応援したいと思っています。僕は僕の信念に基づいて。国づくりをしていきます。」
初対面時は、腹黒だと、思っていたが(今も多少は思ってるけどな!)中々どうして、ある意味いい意味で裏切られたな。
「ライル殿下、貴方ならできると思いますよ。無責任な言い方かもしれませんが。」
「いえ、アルバード卿にそう言ってもらえると、心強いです。」
俺達は、熱く握手を交わした。
「アルバード!」
見ると、ヴァイオレットやキースメガネっ子・・・じゃないな、今は眼鏡をしていなかった。お、なくても可愛いんじゃね。ヴァイオレットは、紫色のドレス、スカーレットは赤いドレスに身を包んでした。
「よぉ。」
「ふふ、やっぱり伊達に貴族じゃありませんのね。そういう恰好もとてもよく似合いますわ。」
「まー一応これでも貴族だしな。」
俺とヴァイオレットはお互い顔を見合わせて笑った。すると、何だかメガ・・・じゃない、スカーレットが不思議そうな顔して、
「え?アルバードさんって貴族なんですか?」
「あれ?言ってなかったけ?っていうか、まぁわざわざ公言もしてないからな。俺一応アルカディアでは侯爵家の跡取り息子なんだよ。それで、冒険者の活動はやめててね、もっか後継ぐ為のお貴族様の勉強中だったんだけど、まぁそこへシエラの呪いの案件と急遽婚約者になってしまったんだけどな。」
「あ!そうか、シエラ王女様の婚約者ですもんね!やだ、私ったらなんで気付かなかったのかしら!」
スカーレットは俺が貴族だということにえらく驚いていた。まぁ俺は黙ってたら
いかついし、出会った時も服装も冒険者仕様だったからわからなかったのは、無理もない。
「ご、ごめんなさい!、じゃなく、申し訳ございません。口のきき方がなってなかった‥」
スカーレットはがっくりと肩を落としたが、
「あーそういうのいいよ、面倒だし。」
「え?いいんですか?」
「そそ、ランベルクも言ってただろ?そもそもそんなの気にするような奴が冒険者なんざしてねぇし。」
俺はニヤっと顔を作ると、スカーレットは察したようで、
「あはは、確かにそうですね!」
「だろ?」
「そうですわ。それに私もアルバードに降嫁したら、王族ではなくなりますもの。」
そこにシエラの声がした。
「お、シエラ来た・・・」
俺はシエラを見て絶句してしまった。




