74：シエラの美しさとは（アルバード）
「「うそっ！！！」」
ヴァイオレットもキースもスカーレットも驚いている。ちなみに声を上げたのは女性陣だ。なぜかライザはシレっとしているが、ユーナさんはさすが、声を荒げるようなことはしなかった。
「あぁ～だからなのね～」
と、何故だか納得した様子。
「一体何のことだ？」
「皆が皆ではないのだけどね。たまにいるのよ、兄弟だと纏っているオーラが酷似している人が。似ているなあ～とは思っていたんだけど、兄弟なら納得ねーって。」
ライザそんなこともわかるのかよ！怖いわ！
「・・・そんな、ランベルクは私と同じ庶民だと思ってたのに・・・」
あれ？メガネっ子がなんだか妙にショックを受けている？
「スカーレット、ごめん。言わなくてもいいものなら黙っておきたかったんだけどね。」
ランベルク、もといランスロット王子はすまなさそうに、メガネっ子に謝っていた。
「ううん、そうせざるを得ない事情があったのなら、私が言う事じゃないわ。ってあぁ！ごめんなさい！平民の癖に口の利き方がなってなかったわ！」
スカーレットは慌てて口に手を当てて、あたふたしていた。
「いや、いつも通りで話してくれて構わないよ。逆に今更そういう扱いされても、俺も嫌だからさ。」
「・・・いいの？」
スカーレットは、ランスロット王子の様子を伺うように上目づかいで見た。
「うん、むしろその方向で頼む。あと他には言わないでほしい。内密にしてもらいたい。」
「わ、わかった。秘密ね。二人の・・・」
と、なぜかスカーレットはうつ向いて、頬を赤らめていた。
え？ちょっと待って。二人じゃないだろ、って突っ込みを入れようと思ったら、なぜか小声でライザに止められた。
「もーー野暮なことは言わないの！ほっときなさい！」
「え？いやなんか勘違いしてるっぽいからさ。」
「もー！とにかくいいから、ほっときなさいってば！」
よくわからないが、えらい剣幕だったので、そのまま流すことにしたけど、解せぬ！
「兄上、続きいいですか？」
「あぁ、頼む。」
「そういう訳で、兄上に離宮に行ってもらい、シエラ王女と接触していただき、連れ帰ってもらおうかと思います。それと同時に離宮の近くで数名の精鋭は待機しておきます。」
「シエラ王女は今は小さい女の子ですから、脱出時には、いざという時は抱きかかえる事ができますしね。その前に居所を見つけられるかの方が心配ですけど。」
ランベルク、もといランスロット王子は、見つけられるかの方が心配と言うが、実は正にその通りで・・・まずい。俺はライザに小声で話しかけた。
「な、アレ言っといたほうがよくないか？」
「そうよね。夜はお姫様大人の姿だし。幼女だと思って捜索されたら、見つけてもらえないものね・・・」
「ユーナさんも、いいかな？」
「はい、やむを得ない事態だと思いますので。仕方がないかと。」
「アルバード卿、何か？」
さすがに俺達がコソコソ話してるので、不信に思ったらしいライル王子が話してかけてきた。
「あ～実はちょっと話しておかないといけないことがありましてね。」
「「「？？」」」
「シエラ嬢は、夜は大人になるんです。つまり夜の間だけ元の姿になれるんですよ。」
「「「えーーーー」」」
「え？なんでそんな中途半端な解呪に？」
ヴァイオレットも驚いている。
そうなるよな。だがらといってシエラ嬢が俺に片思いだから、なんぞ彼女の名誉のためにもいう訳にはいかない！
「ほら、彼女『祝福』の加護があるからね、それでじゃないかしら？」
ライザ、ナイスフォローだ！
「ほ～～お？」
ヤンやめろ！意味あり気な言い方するんじゃない！
「なるほど、それはよくわかりました。そうだとすると、俺がシエラ嬢ってわかるかな？何か特徴みたいなものありませんか？流石に幼女のお姿しか見ていないので・・・」
確かに、シエラ嬢の成人した姿を知ってるのはここの中ではアルカディアから来た奴らとライル王子くらいだもんな。
「大丈夫よ！お姫様、あのまま大人になったって感じだし！可愛いわよぉ！」
「何言ってるんだ！更に美人度は増してるだろう！」
「まぁ、色彩とヘアスタイルは変わっていませんからね、流石にそのままというよりは、幼い時の面影は残っていますから、よく見ればわかると思いますよ。お美しさについては、実際巷でも噂になってるくらいですから、私が保証いたします。」
・・・・・うん、ユーナさんの意見が一番まともだった気がする。
「えーと、つまり金髪でウェーブかかった長い髪に青い瞳の年の頃は、確かライルの一つ下と伺ってますから、18歳くらいの美人さんを連れてくればいいってことですね？」
「はい、仰る通りでございます。」
ユーナさんが保証した！
「私も昔、『聖女の儀』の時にしか見たことはないけど、美しい人だったのは覚えているわ。幼女姿でもすごい美人さんだから、すぐにわかると思うのだけど。」
ヴァイオレットも褒めてる！あれ？なんか知らないけど俺ちょっと嬉しいかも。
「僕は・・・あの時（聖女の儀）ヴァイオレットしか見てなくて・・・」
うん、キース、お前はそういう奴だよ！
「まぁ、僕はシエラ王女の元の姿はがお美しいのはわかっていますが、やはり小さなお姿は、また格別というか・・・」
思い出したかのように、うっとりと話し始めたライル王子は論外だった。
ふと見ると、ヤンは笑いを堪えていた。ヴァイオレットとキースはは『何こいつ？』ばりにどん引きしてる。メガネっ子は・・・うんまださっきの続きででうっとりしているようだ。
「えーと皆さんのお話を伺ってわかりました。それなら監禁場所さえ突き止めれば、見つけられそうですね。」
ランスロット王子はいい笑顔で、上手く話をまとめた！
えーと、いかん話が脱線している！戻さないと。
「ということは、さっきライル王子がお話していた、第一王子にその気がないっていうのは、今まさにここにいる、ランベルク、いやランスロット王子がここにいるから、ということなんですね？」
でないと、王子がまさか冒険者やってるわけないからなー
「そうです。残念ですが、母上が勝手に突っ走ているところでもあります。俺は・・・別に王位になど興味はありませんからね。」
ランスロット王子は少し寂しそうな表情をしていた。
