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70:娼婦シエラ?(シエラ)

 見つかってしまった!


 「ん~~?どこの間諜なんでしょうねぇ?」


 ・・・・・もしや、私って気付いてない?

 あ、今は元の姿だからだわ!とはいえ、この状況は、何もよろしくない!どうしよう~~

  

 「・・・・・」


 「ほほう、だんまりですか?ですが、それもいつまで続きますかなぁ?」


 トリスタンはまるで、獲物を見つけたかのように、残酷な笑みを浮かべていた。

 怖い!!


 「あぁ、良かった。そこに居たのか。」


 急に後ろから声がした。思わず振り向いてしまたのだけど・・・


 「?!」


 誰、この人?・・・んん?でも見たことあるかも?(さっきからこんなのばっかりだわ。)


 「『寝室に行け』とは言ったが、寝室違いだったな。さ、行こうか。」


 この人は、理由はわからないけれど、私を間違いなく助けてくれようとしている。ここは合わせないと!


 「は、はい、私、部屋を間違えてしまったみたいで・・・」


 「貴方はもしや・・・」


 あら、珍しく動揺してるわね、この男。


 「ん?もしかして、卿がトリスタンとかいう、母上のお抱えの魔導士か?」


 「えぇ、そうです。ランスロット様ですね?お初にお目にかかります。」


 あの感じの悪いトリスタンが恭しくお辞儀してる!この人は一体?


 「そうか。母上をよろしく頼む。すまぬが、その女は夜の為に、俺が連れてきた女でな・・・皆まで言わなくともわかるだろう?」


 夜!夜って、アレよね?!あ、だからさっきの寝室の話になるのね!


「・・・あぁ、そう言うことでしたか。ですが、ここでの話を聞かれたようですのねぇ。」


 トリスタンは私を逃したくないのか、引き留めようとしていた。


 「・・・何か聞かれては不味い事でもやっているのか?」


 うわ、直球で聞くのね、この人。


 「・・・いえ、そういう訳でもありませんが。」


 そりゃ、言えないわよね!


 「なら、この女は連れていく。」


 「ランスロット、珍しいわね。貴方が女なんて?さっきは会った時はそんなこと一言も言わなかったのに。」


 ブリギッド様の声も聞こえた。すると私は急に体を反転されて、ランスロット様に抱きかかえられた。!!アルバード以外に触られたくないけど、今はそんなこと言ってる場合じゃないし、私の顔を見られないようにしてくれているんだ!


 「えぇ、珍しくね。娼館で気に入った女を見つけたもので、囲うかと思い、連れて帰ってきたのですよ。それに・・・母親に情事のことなど、普通は言わないでしょ?」


 「・・・まぁそれもそうね。」


 「そうでしょ?野暮なことは言わないでいただきたい。」


 そういうと、ランスロットは私の頭に口づけをした。

 ちょ!そこまでしなくても~~~っては思うけれど、ここは娼婦らしく甘えないと!


 「早く、お部屋にいきたいですわぁ。」


 と、私も甘えた声を出してみた。我ながら鳥肌ものだわ!


 「・・・それくらいは別にいいけど、間違ってもそんな娼館の女を正妻とか、言わないでしょうね?」


 「母上、私はそれくらいのことが分別付かないほど、愚かではありませんよ?」


 「・・・そう、ならまぁいいわ。」


 「はい、では失礼します。ほら、行くぞ。」


 私は顔が見えないように、慌てて頭を下げ、この場を離れることができた。ひとまずは一安心なのかな?


 





 「とりあえず、防音魔法をっと。」


 部屋に着くなり、そういうとランスロットは、掌にちょこんと乗るくらいの宝珠を取り出して、防音魔法を展開させた。


 「先ほどは、大変失礼しました。とにかくあぁするしかなかったので。」


 ランスロットはバツが悪そうな申し訳なさそうな顔をしてけど、あの状況ではより信憑性も持たせるためにも仕方がなかったことだと思うしね。


 「い、いえ、状況的にはよくわかりますから。あの、さっきは助けてくださってありがとうございました。」


 私は、慌てて頭を下げた。


 「ずっと貴方を探していたんです。焦りましたよ?あんなところにいるなんて。」


 「ご、ごめんなさい。鍵が開いてると思ったから、逃げなきゃって・・・」


 「そうですね、俺が鍵を開けてそのままにしておいたのも悪かったですね。」


 助けていただいたのは、有難いのだけど正体がわからないのは不安だしね。だけど・・この人見たことあるのよね?


 「あ・・あの、助けてもらってなんですけど、貴方は一体?」


 私は思い出せるかもと、凝視していたんだけど・・あ、この人?!

 

 「あ~雰囲気が違うのでわからないかな?こうすればわかりますかね?」


 そう言うなり、オールバックにしていた髪をバサバサと手でばらけて、前髪を下したその姿は、私が先日会ったばかりの、プラチナブロンドに青い目の冒険者Aランクの剣士の姿だった。


 「え?ランベルクさん?!」 


 「改めまして。バランドール第一王子、ランスロット・フル・バランドールです。」


 彼は少し恥ずかしそうに、そう名乗った。 


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