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62:思わぬところで・・・(アルバード)

 イライザの部屋にて、アルバードは事件の新たに得た証言をイライザに話をしていた。シュナイダー公爵に呪いのアイテムあのオルゴールを渡した相手は、捜索はしているものの、まだ見つからなかった。

 何せ、情報が少なすぎたのだ。シュナイダー公爵の証言から、「フードをいつも被っていて、顔ははっきりとはよくわからない。だが一瞬だけだが目元を見たことがある。目の赤い男だったのはわかっている。」と、少ない情報ながらも特徴的なことは知りうることはできたのだ。

 

 俺が懸念していた、シエラ嬢に何か仕掛けてくるかも?というやつは、ライル王子の指示で、ヤンが対応してくれていたおかけで、シエラ嬢は事なきを得ていたのだが、実はシュナイダー公爵はそれには関与していないということがわかった。となると、その目の赤いフードの男がシエラ嬢を狙っていた、ということになるのだが・・・



 「ん~目が赤い男ねぇ・・・まさか・・うーん。いえ、その方がアレは納得・・かな?」


 ライザはブツブツと何かを言いながら、珍しく神妙な顔をしていた。


 「もしや、心当たりがあるのか?」


 「・・・あるのよ、それが。」


 「え、マジか?!」


 「マジなのよ~」


 そういうと、ライザは頬に手を当てて溜息をついた。


 「だ、誰なんだよ!」


 嘘だろ?!まさかこんな身近で犯人の身元がわかるなんて!


 「う~ん、一応知り合い?っていうのかしら?前の事なんだけどね、やたら私に絡んでくる『魔人』の男がいたのよ。まぁオルゴールを見た時に、使ってる古代文字に特徴があったから、もしやっていうのはあったんだけどね。だけど、違ったらアレだしねぇと思って、敢えて口には出していなかったんだけど・・・」


 「そういうことは先に言ってくれよ・・・」


 ライザ・・・たまにポンコツだよな。俺はガックリと項垂れてしまった。 


 この世界の住人は、人種によって身体的特徴がある。例えばドワーフ族なら小さいとか、エルフなら耳が尖っているとか、獣人なら頭に獣の耳があるとか、魔女も瞳が赤いなど、人種によっては一目見ただけでわかる特徴がある。この場合に至っては、男で赤眼というのは魔人がその特徴に当てはまり、また魔人も、魔女と同じく希少種なのだ。


 「確か・・・名前はトリスタンだったかしら?一時期は私の住処に凸してくることが多くてね。私も研究は邪魔されたくないじゃない?とにかく鬱陶しいくらい、やたら張り合ってきてね~。だからバランドールからアルカディアに住処を変えたんだけどねー。まぁアルカディアは私の研究にも欠かせない物があったから、ある意味一石二鳥だったのだけどね。」


 今ちらりと話しにでたが、アルカディアでしか取れない、ある特殊な鉱物が魔法を使う者にとっては希少で価値があるものなのだ。ちなみにその鉱物は貿易でバランドールと取引もしている。


 「あーそれで、ばあちゃんに会ったのか?」


 「そうよ、懐かしいわ~」


 ※魔女は長寿の人種です。


 「っておい!!呑気にこんな事言ってる場合じゃねぇ!」


 「あら、そうね?」


 そう言われても、やっぱりイライザは呑気に構えていた。


 「取り合えずライル王子に報告しないと!ライザ、そいつの住処とかわかるのか?」


 「えぇわかるわよ~でも今もそこにいるのかしら?」


 確かに、ライザがアルカディアに来たのは何十年も前だけど、だが手がかりが何もないよりは断然いいからな!

 

 「取り合えず、行くだけ行けばいいさ。何もしないよりはマシだからな!」


 「まぁ、確かにそうねぇ。」

 

 「善は急げだ。早速ライル王子に取次ぎ願おう。」





 行き詰まったかと思われた事件であったが、妙なところでイライザと縁があったと判明した。そして、蓋を開けてみれば、いろいろと思惑が交差していたことがわかったのだ。


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