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60:だが、断る!~前編~(アルバード)

 まだ、呪いの発信元はわからないとはいえ、一応の一段落した直後、俺はシエラ嬢から話しがあると、部屋に呼び出された。 


 「ユーナ、申し訳ないけどあなたも席を外してくれる?」


 「え?私もですか?・・・かしこまりました。」


 ユーナさんは多少不服そうではあったけど、言われたとおり、部屋から出ていった。


 ・・・・なんだろう?嫌な予感しかしない。自慢じゃないがこういう時の俺の勘はよく当たる。などと思っていたら、シエラ嬢が切り出した。


 「アルバード、お願いがあるの。」


 「ん?なんだい?」


 「もし、幼女について、私の呪いについてイライザさんでも、解呪ができないようなら・・・


 「・・・・・・」



 「その時は、私と婚約を解消してください。」


 「!」


 俺が驚くのと同時に部屋のドアが開いて、ライザとユーナさんが現れた。・・・ドアに聞き耳立てていたな。


 「姫様?!」


 「お姫様、何言ってるの?!」


 「え・・・どうして・・・?」


 シエラ嬢もまさか、ライザとユーナさんが出てくるとは思わなかったみたいで、驚いてるな。


 「ユーナさんから、お姫様が何か良からぬことを考えてるって、相談受けてたのよ!だからドアに張り付いてたわ!やっぱり当たってたわね!」


 お~さすがユーナさん、シエラ嬢を知り尽くしてる!俺は先ほどのシエラ嬢の言葉に、理由を聞いてみた。まぁ粗方想像はついてるけどな。


 「理由を聞いても?」


 「何度も言うけど、私アルバードの事が好きなのよ。」


 「・・・・・」


 「勿論当面は、宣言通り頑張るつもりよ。」


 俺はそれを聞いてちょっとホッとした。


 「だけど、好きな人を私の呪いのせいで縛り続ける真似はしたくないの。政略結婚って割り切れなくなってるのよ!」


 「だから、もし解呪できないようなら、別れると?」


 「ええ。やっぱり好きな人には幸せになってもらいたいものなのよ。だから・・・「嫌だ!」」


 シエラ嬢は俺を説得しようと思ったんだろうが、俺はあえて言葉遮った。あれ?そういや前にこういう似たようなことがあった気が?


 ※はい、ヴァイオレットとキースの時です。


 「嫌だ!俺は婚約をなかったことになんか、絶対にしないからな!」


 自分でも驚いた。俺・・・かなりイラついてる。


 「なんでだよ、俺に惚れさせてみせる、って言ってだろ?!」


 だけど、その後はなんだか悲しい気持ちにもなった。なんなんだ、怒ったり悲しくなったり!俺は自分の感情を持て余していた。


 「言ったけど・・・こればっかりは気持ちの問題だし・・・」

 

シエラ嬢は悲しそう顔を伏せた。


 「なら、諦めんなよ!てか、諦めてほしくない!」


 あぁ、そうなんだ。虫のいい話なんだけど、俺がまだシエラ嬢の事が好きかどうかよくわかっていないのにシエラ嬢には俺の事諦めて欲しくないって思ってる。


 「そうよ!私もまだ解呪を諦めた訳じゃないんだから!お姫様、そんなこと言わないで!!」


 「そうですよ、姫様!そんなの・・・姫様らしいところもありますが、姫様らしくありません!」


ユーナさんどっちなんだよ!


 「・・・考えたのよ。私は降嫁したら、アルバードのお嫁さんということは侯爵夫人になるわ。だけど、・・・このままだと、アルバードの子供産んであげられないもの!せめて・・・せめて、呪いがちゃんと解けたら、世継ぎを生んであげられる。だけどこのままだと・・・アルバードは養子を取らざるを得なくなる。だってアーベンライン侯爵は、わざわざ冒険者をしていたアルバードを家に戻したくらいだもの。なのに、結局養子を迎えることになるなんて・・・本当に申し訳なくて・・・」


 声を少し荒げながら、泣きそうになりながらも、涙をこらえシエラ嬢は気持ちを吐露してくれた。そうか・・・シエラ嬢は負い目があったんだな・・・


 「シエラ嬢。」


 俺はシエラ嬢の目線までしゃがんで名前を呼んだ。彼女は俺が間近にきたのをわかっていなかったらしく、身体がビクッとしていた。


 「シエラ嬢、俺の事を考えて言ってくれたんだよな?」


 彼女は無言で頷いた。うん、俺の今後の事を思って、そういう考えに至った訳だよな。優しいよな。シエラ嬢のそういうところ好きだよ。だけどそれを俺は受け入れる訳にはいかないんだよ。


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