44:魔獣の森~後編~(アルバード)
すみません、題名ですが、前後編に変えました(^_^;)
俺はわかった。まあ証拠はまだないんだけど、確信はあった。
最近できたばかりの不浄の地、そして大量に人が亡くなったことを示すアンデッドの発生、これらのモノが結びつくモノは、『禁呪』すなわち『呪い』だ。
怨念というところでは、まさにぴったりで、これらは呪詛返しの生贄にされたのなら、怨念が蓄積される不浄の地になってしまうのは、よくわかる。理不尽この上ない殺され方だからな。
普通は不浄の地になるには何十年とかかるからね、こんな数年でなる時は、大量に亡くなった時だけだ。
まだ証拠はないけれど、これだけの人が死ななければいけない理由は、シエラ嬢の呪いと隷属魔法のリンク魔法の『呪詛返し』しか考えられない。それに・・・
ヤンは恐らくどこからか、シエラ嬢の事を嗅ぎ付けたのだろう。まぁ箝口令は敷いてはいるが、拘束力はさほどないから、洩れてても不思議もないしな。
「なるほどな・・・」
「どうしましたの、アルバード?」
「いや、ちょっとまぁ腑に落ちたものでな。」
「?」
「そういや、浄化は?」
「あ、これからやりますわ。ってあれ?神官は?」
神官は森の中を走っていた。
本当は逃げる必要はなかったのだ。だが、もう足が勝手に動いてしまったのだ。
まさかあのアルバードが来るなんて!俺は先日奴とすれ違った。・・・まさかここに来るなんて!何故だ?あいつはもうここがアルカディア王女の件と繋がっていることをもう嗅ぎ付けたっていうのか?!あいつは、俺を見ていた!あそこでは、できるだけ関わらないようにしていたのに!
「おい。」
「ひっ!!」
「なーに、こっそり帰ろうとしてんの?こんなところで、一人で帰ったら危ないよ?一応ここ、魔獣の巣くう森だからね。」
俺は逃げていた神官の前に立ちふさがった。足には自信あるんだよねー
「あ、あ、・・・」
神官の男は震えていた。
「大方、雇い主に、言われてたんだろ?証拠があるようなら消してこいみたいなこととか邪魔しろ?みたいなこととか?」
「!!」
「だが、俺が来たから、逃げることにしたようだけどな。」
「ち、違う!逃げるつもりはなかった!、だ、だが足が勝手に・・・」
まぁ、罪の意識でいたたまれなくなったってところか。ま、こいつも可哀想というか、巻き込まれただけだろうからなー。
「俺、あんたのこと覚えてたんだよ。あんた魔法省ですれ違ったでしょ?俺見てコソコソしてた連中の一人だよね?」
「だから、俺を見てたのか?!あ、あの時、俺はあんたとは一言も話してないし、関わらないようにしていたんだぞ!」
「うーん、俺さ一度見たものは忘れないんだよねー」
「!!」
神官?は俺の前で膝をガックリと落とした。
「お、俺だって!こんなことやりたくなかったんだ!だけど、だけど、隷属魔法が・・・」
男は両手で顔を覆い、涙ながらに訴えた・・・ま、確かに隷属魔法のリンク魔法じゃなー。
「正直に言うとね、なんでAランクのパーティで俺までいるかなーって、これは何かあるんだろうなーとは、何となく思ってたんだよ。それであんたを見て確信したんだよ。あぁ繋がっていたんだなって。」
「!お・・俺のせいだと言いたいのか?!」
「気にすんな、お前だけじゃない。不浄の地が最近できたこと、アンデッド等の状況を確認した上でのことだから、お前だけのせいじゃないよ。」
アルバードは恋愛ごとには激ニブだが、仕事に関しては鋭かったようだ!
そうこうしているうちに、ヴァイオレット達が追いついた。
「アルバードどうしたの?!急に走り出すから!」
あとの3人も追ってきたようだ。
「神官の人・・・一体どうしちゃったんですか?」
俺の前で地面に膝ついて、嗚咽している神官を見てランベルクは言った。そりゃ何でこんなことになったのか、わからないよねー。
「それに・・・どうして、神官は逃げ出したんですか?」
キースも訳わかわからないって顔してる。
「でも、この方なんか、様子が変だったんですよね。はじめは聖女ヴァイオレットと一緒だから緊張でもしているのかと思ったけど・・・そうじゃなかったみたいですね。」
メガネっ子の魔導士は神官の様子がおかしい事に気付いていたようだ。なかなか洞察力がするどいな。
「あーごめん。とりま帰ったら説明するわ。浄化と昇天は終わってないよな?」
「まだですわ。だってアルバードが急に走り出すんですもの。」
「じゃ、もう一回戻るか。」
「おい、立てよ。せめてあんたも神官の資格あるんなら、さっきのアンデッドの昇天を手伝ってやんな。」
神官の男は泣きながらも、コックリと頷いた。
「ついでに何か見つかるといいなー」
「「「「??」」」」
4人は不思議そうな顔をしていた。まぁそりゃそーだろね。
さてと、今のところ状況証拠だけだから、俺としては物的証拠が欲しいんだけどな。まぁとはいえ、ライザの解呪ができたら、証人がボロボロ出てくるから、なくても大丈夫かな?
禁呪の呪詛返しの身代わりの件は、少なくともこの魔獣の森に死体を遺棄されていた、というのははっきりとしたのだ。
一方、その頃のシエラ_____
「あの・・・イライザさん?」
「なーに?お姫様?」
「問診なんですけど・・・好きな色とか、好きな食べ物とか、『祝福』に関係あるんですか?」
「・・・関係あるかもしれないし、ないかもしれないわね♪」
イライザさんはニコニコしてそう言ったけど、何だろう?有無を言わせない何かががあるのよぉおお!
「・・・わかりました。続けます。」
「うん、頑張って♪」
「お茶を入れなおしますね。」
アルバード編長かったw 次回はシエラのターンです!