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30:デート①~出発編~(シエラ)

すみません、デート編は前・中・後編の三部作の予定でしたが、想定よりも長くなってしまったので、番号に変えます(^_^;)ごめんなさい。

 「じゃ、私は、魔法省に行ってくるから、二人は素材をよろしくね~」


 そういって、イライザは魔法省行きの馬車に乗っていった。




 アルバードとシエラの二人は、王都の街中に行くので、平民に見える服装をしていた。だが、シエラは、平民用の余所行きの服装とはいえ、元々美少女なのも合わさって良家のお嬢さんという出で立ちになっている。アルバードはそんなに違和感はない。


 「さて・・と、じゃ俺達も行くか!」


 「うん!」


 「ユーナさん、それではシエラ嬢をお預かりしますね。」


 「はい、アルバード様、姫様をどうぞよろしくお願いします。」


 そしてアルバードが馬車の準備をしている隙に、ユーナはシエラに向かって、『頑張ってください!』と、声にしないで口を動かした。それを見たシエラは、赤面しながらも大きく頷いた。


 「「いってきます!」」


 二人は馬車から手をブンブン振っていた。


 「息は合ってますのにね~もどかしいわ。」


 引っ付きそうで引っ付かない二人にもどかしさを感じる、ユーナであった。  






 道中の馬車の中で、アルバードとシエラは雑談を交わしていた。


 「俺、バランドールの王都は久々なんだよな~」


 「前にも来たことあるの?」


 「あぁ、冒険者の頃はあちこち飛び交っていたからな。けど、ここはそんなに長居はしていなかったから、俺もそんなに詳しくはないけど。」


 「そうなのね。」


 「あ、ライザに頼まれている物がどこにあるかぐらいはわかってるから!あと、シエラ嬢、入りたいお店があったら遠慮なく言ってくれよ!俺、ぶっちゃけ女の子が好みそうなお店とか物とかよくわからないから、逆にはっきり言ってもらえる方が助かる。」


 「うん、わかったわ。」


 ホントだ、ユーナの言う通りかも!


 ユーナの指南は無駄ではなかったようだ!




 そして、馬車で数十分のところで、王宮から街中に着いた。王都の繁華街であるバランディアである。


 「わぁ~!!」


 シエラは留学するために来た当初は、バランディアを馬車で見学はしたが、実際自分の足で王都を見回ったことはなかったので、新鮮な気持であった。


 「前に一度来てるのに、何だか初めて来た感じだわ!」


 シエラは街のにぎやかな様子に、人の行き交う様をみて、目をキラキラさせていた。


 その様子を見ていたアルバードは、何かを思い付いた。


 「ふむ・・・」


 アルバードはシエラの目線までしゃがみこむと、


 「もっとよく見たくないか?」


 「え、勿論見たいわ!」


 「よし、じゃ俺に任せてくれな。」


 そういうと、アルバードはシエラを抱え上げると片腕で抱っこした。


 「!!」


 前の時にも思ったが、この抱っこはアルバーの顔が近すぎる!シエラはめちゃくちゃ恥ずかしかった。


 「この方がよく見えるだろ?」


 「そ、そうだけど!は、恥ずかしいわよ!」


 外見は幼女だが、中身は18歳の乙女だ、確かに恥ずかしいのは無理もない!


 「大丈夫だよ。それにせっかく来たんなら、よく見えた方がいいだろ?」


 「だけど重くない?」


 好きな人に抱っこされていることに、嬉しくない訳ではないが、気恥ずかしさの方が現時点では勝っていた!


 「全然!むしろシエラ嬢が元に戻っても、俺抱っこする自信あるもん。」


 アルバードは伊達にガチムチではないようだ!

 シエラは一瞬元の姿でアルバードに抱っこされている自分を想像したが、やはり恥ずかしすぎて、もたなかった。


 「ば、ばか!元の姿だったらしないわよ!」


 「ははは、なら今しかできないってことで、大人しく抱っこされときな。」


 「う、うん・・・」


 そうか、これが甘えるということなんだなと、シエラは納得した。




 「とりあえずさ、ライザの買い物を先に済ませてしまおう。あ、でも途中で何か入ってみたい店があったら遠慮なく言ってくれよな。」


 という、アルバードの意見にシエラも納得し、まずは目的のお店に向かうことにした。




 歩くこと(シエラは抱っこされているので歩いてはいない)20分ほど、


 「ん?」


  あれ、だいぶんと人通りが減ったよね??


 「どうした?」


 「さっきの場所に比べると寂しい場所に来たなって・・・」


 「あぁ、ライザの欲しい物はあまり目立たないところに店を構えてるところが多いからねー、繁華街からは少し離れてるんだ。」

 

 「そういうことなのね。」


そして何度目かの路地を曲がったところにそのお店はあった。あったけど・・・


私はアルバートに抱っこされていたのだが、肩にかけていた手に力が入ってしまった。

 

 「どうした?」 


 「アルバード、看板がないんだけど。」


 そのお店はあからさまに怪しい雰囲気で、看板もないし、見た目も言葉は悪いけど、かなりボロっちぃ作りだった。

 

 「あぁ、ここ所謂一見さん、お断りってお店だからね。紹介じゃないと入れないから、看板はわざと設けてないんだよ。」

 

 私は見るからに、怪訝そうな表情をしていたと思う。


 「でも、失礼ながら、このお店の店構えなら入りたがるお客さんなんていない気がする。」


 そういうと、アルバードはニカッと笑って


 「はは、シエラ嬢はまんまと策略に陥ってるな。」


 「え?どういう意味?」


 「入ればわかるよ。じゃ行こうか。」


 「??」


 アルバードの意味深な言葉の意味は、お店に入ってすぐに理解した。


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