表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/96

1 プロローグ

新作です。よろしくお願いします。

 ――ダンジョンを運営せよ。


 いきなり言われたら誰だって困惑すると思う。ボクも困惑する。

 だけど誰かに口で命令されたのではなく、頭の中に情報を送り込まれたら困惑するよりも先に理解してしまう。

 ボクに拒否するなんて生易しい選択肢は用意されていないんだって。


 これまでの経緯を簡単に整理しよう。


 まずボクの『本当の名前』は……あれ、思い出せない?

 どうやら過去の記憶を消されてしまったみたいだ。

 覚えているのは常識的な知識と、日本に住む男子中学生だったことくらいか。


 例えばアニメという言葉や、色々なアニメの内容は思い出せるけど、それをボクがいつ、どこで、どうやって見たのかは思い出せない。

 それと家族がいたのか、友達や、ペットを飼っていたのか……そういったボク自身に関する記憶は覚えていないみたいだ。自分の顔すら思い出せない徹底っぷりには辟易しちゃうね。

 幸いだったのは、あまり悲しくないことかな。

 だって、なにも思い出せないんだから、最初から無いのと同じなんだもん。


 だから記憶の始まりは……暗くてじめじめした暗闇からだ。

 ごつごつした固い地面と壁で、ここが洞窟のような場所なんだと察するのに数秒かかったけど、恐怖や不安が押し寄せる前に知らないはずの情報がフラッシュバックして、すべてを理解してしまった。


 ボクはダンジョンを運営して、人間から恐怖を刈り取らなければならない。


 色々と首を傾げるところだけど、情報は与えられていた。

 まず『ダンジョン』とは世界中に点在する迷宮で、最深部にはモンスターを生み出したり、迷宮を拡張する『ダンジョンの主』が存在する。

 これを人間たちは命を懸けて攻略し、主を倒してダンジョンを消滅させることでモンスターの侵略を防いでいるようだ。

 つまり人間とダンジョンの主は敵対しているわけだね。


 そしてその主が、このボクというわけだよ。ふざけるな。


 与えられた知識にないけど、人が持つ知識を目当てに選ばれたんだと思う。

 ついでに言えばダンジョンなんて登場する辺りから察せるけど、ここは日本でも地球でもない。まったく異なる次元にあるファンタジー世界のようだ。

 ただ、誰がどうやってボクを誘拐して、ダンジョンの主に任命したのか、といった重要な部分も伏せられているのか、どれだけ頭を捻ってもわからない。

 もう情報は与えたから黙ってダンジョンで働け……そんなブラックな意志が伝わってくる。


 もちろん忘れているとはいえ人間としての常識を持っているのだから、この世界の人たちと争うつもりなんて微塵もないよ。

 だけど、残念ながらボクがダンジョンを放っておいても、この世界の人たちはダンジョンを放っておかないし、なによりボクが生きていくのにも制限がある。

 それはダンジョンが存在する理由にも関わる話だ。


 人間側は知らないみたいだけど、ダンジョンを攻略しようと侵入してきた人間たちが発する心の力……とりわけ強い『恐怖』という感情のエネルギーを糧としてボクたちダンジョンの主は生きている。


 というより、そもそもダンジョンの目的が人間たちの感情からエネルギーを得ることだから、まんまと策略に引っかかっているわけだね。

 そんなエネルギーをどんな悪巧みに使うのかは知らないけど、少なくとも今のボクにも必要なのは間違いない。

 まだ生きていたければ、ダンジョンを運営するしかないのだ。


 ……でも、ひとつ大きな問題……というか、どうしても文句が言いたい。

 それはボクの記憶が失われていることに加えて、ボクの体にも著しい変化があったことだ。元の体のままだと、エネルギーの関係で不都合があるからだと与えられた知識から理解はできるんだけど、ちょっと納得できない。


 身長は、たぶん低くなった。

 単純に若返ったのかと思ったけど、もう肉体そのものが別人になっている。

 特にわかりやすいのは髪の毛だ。黒色じゃなくて月の光みたいに綺麗な白色の髪が、お尻の辺りに届くほど伸びていた。

 ちなみに今、ボクは着る物もないためすっぽんぽんである。なので見下ろせば白くてすべすべした肌が露出しているのが確認できた。

 腕なんて枝のように細くて、筋肉がまるで付いてない。試しに腕立てしたら一回もできなかったよ。

 これでダンジョンの主として、人間と戦えって言うんだから冗談かと疑う。

 ……そして、なによりもボクが困っているのは僅かに膨らんだ胸と、記憶はないけど違和感のある下半身。


 はっきり言ってしまえば、ボクの体は……女の子になっていた。

 以前までの自分を思い出せないから、どれくらい変わってしまったのか正確には判断できないけど、少なくともボクが男だったのは間違いない。


 ……なんでこうなったの?


 あとボクの名前は『アルマ』と呼ぶのだとダンジョンの知識から知った。

 勝手に名前まで付けるとかやめて欲しい。

 元の名前を思い出せないから仕方なく使うけども……。


 つまり、ここまでの状況の整理するとボクは元の体には戻れないみたいだし、ダンジョンの主を辞めることもできない。

 完全に退路を塞がれてしまったボクに、もはや抗う術はなかった。

 謎のブラックな存在から押し付けられた役割、人類の敵として大人しくダンジョンを運営して、恐怖を刈り取るしかないのだろう――。






「……なんて諦めると思ったかぁーーー!!」


 どんな目的があるのかは知らない。

 もしかしたら神のような存在が裏に潜んでいるのかもわからない。


 だけど、同じ人間を苦しめたり、モンスターを使って殺したりするなんてボクは絶対にイヤだ! 絶対にお断りだ! 


 なにか、きっとどこかに抜け道があるはずだ。

 それでもダメなら、この世界の人間に助けを求めてやる!

 あらゆる手段を使って、ボクは何者かのブラックな意志に抗うぞ!


 ブラックな意志だと少し言い辛いからブラック……エイリアン?

 ひとまずブラリアンと命名しておこう。


 おのれブラリアン!

 許さないぞブラリアン!

 宇宙人か知らないけどブラリアン!


 ふー、気合も入ったところでボクにできることを確認しよう。

 ダンジョンの主なのだから、ダンジョンを大きくして、改造して、モンスターを生み出せるのは知識にもあるし、なんとなくわかる。

 そのために必要なエネルギーも恐怖から得るようだけど、初めからゼロだと抵抗できないまま攻略されるからか、ある程度の準備をするエネルギーが用意されていた。開店資金みたいだ。


 ただしエネルギーは数値じゃなくて、なんとなくの感覚で把握できる。

 たぶんダンジョンを地下一階から三階くらいまで広げたり、ボクがイメージできるトラップや施設を作り出せるみたいだ。

 でもモンスターに関しては少し勝手が違って、大きく二種類に区別される。


 ひとつは兵隊としてのモンスターだ。

 これは自我のない人形みたいなもので、一度でも生み出せばダンジョンに存在が登録されるため、ダンジョン内で死んでも復活させられる。

 その代わり復活にはエネルギーを使うし、あまり複雑な命令は受け付けない。


 もうひとつは魔界で暮らしている、魂を持つ魔族だ。

 こっちは生み出すのではなく、エネルギーを支払って雇用する形になる。

 支払う対価はモンスターと違って莫大だけど、ちゃんと自分で考えて動いてくれるから簡単な指示だけでいいし、ダンジョンが大きくなったらモンスターも増えて指示が行き届かなくなるので、指揮官に任命するのが基本らしい。

 単純に強いから頼りにもなるけど、復活できない点だけは注意とのこと。


 まあこれは人類と敵対する方法なので、ボクには無用だけどね。

 ボクが考えるべきは、どうやってダンジョンから解放されるか、あるいは違う手段でエネルギーを手に入れるのか……。


 ――ところで、別に『恐怖』って人を殺したりしなくてもいいよね?


 だって怖がらせればいいわけだから……うん、なんとかなりそうだ。

 とりあえず準備してみよう!

今日中に三話まで投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ