c2.おっちゃんとカブ
一人称と三人称が頻繁に小刻みに入り交じる1.5人称です。
ふざけ具合を減らすと文字数が稼げなくて、コンパクトになりました。
c2.おっちゃんとカブ
大将からの説明をフムフムと聞く。
聞きながら『USBはバッテリー直結らしいから、変圧部の待機電流は必至だな』と電気・通信系工学部出身のおっちゃんは、仮想の配線図を浮かべる。だから容易に充電できる充電器の注文も併せておこなっていた。
一通りの説明を聞き支払いも済ませておっちゃんは受け取ったスマートキーのキーマークを押して|緑点滅(アクティブ化)を確認してからボディバッグへと仕舞った。
メインスタンドを外す。
さてと、跨がろうと右脚を上げかけたが、荷台にバッグを取り付けてもらっていたので充分な高度を保てないと断念した。
それではと、シート前のあの凹に・・・あと5センチ低かったらなぁ。コンと乾いた音を立ててやっと跨がる。ちょっとフラついたけど立ちごけしないように必死で踏ん張ったからセーフだよな。と、自分を慰める。
チビデブハゲメガネのおっちゃんは自分で思っている以上に足腰も衰えていた。
すーはー。
呼吸を整え脳へ酸素を送る。ふっふっふ、糖質は常に高濃度で躰を巡っているのだよ。
それはさておき。
一度ハンドルを持った右手を下げてこの旗艦モデルの特徴なこれ見よがしのダイヤルを時計回りに四十度ほど捻る。大きい見た目はグローブをしていても不都合にならない思想かな。スマートキーのボタンが大きいのもその流だろう。
内部表示が左から右へグイーンと振り切れ元に戻ったコンソールにニュートラルを示す緑のランプが点っているのを見、ハンドルに戻した右手の親指でセルスイッチを押す。
セルモーターの回転の後、レシプロエンジン特有の小気味よい音と継続する振動を感じて口角が上がるのはやむなし。
重心を少し右へと移動し、左脚を上げステップに一度土踏まずでタッチしてから前へとずらして親指手前の膨らんだトコで一段踏み込むとコンソールの緑ランプが消え、中央のナナセグ数字が”1”になる。
回転数を上げバイク屋の駐車場から安全確認の後公道へ出る。すぐに赤信号の交差点だからローギアのままで引っ張っていく。20キロ毎時も出ていなかっただろう。
加速やらトルク感やらまだ慣れてないし百メートルの直進がないままで自宅へ到着。二速までは上げたけど三速にまで上げるタイミングのないままの到着だった。
停止してからニュートラルにし、エンジンを切り『うんしょ』と二輪ガレージへと収納した。
まだご近所とごく短距離の走行だけなので、次話はもう少しだけ遠くへ走ってからにします。