2.はじめてのゆうしゃ
ある日、僕はこの世界に勇者が転生する感覚を感じました。
魔王になるとそういうのを感じれるようになるんですよね。お決まりです。
とまれ、この世界に置いてはじめての、というより、僕が魔王になってからはじめての勇者です。
まだまだそういう経験の少ない僕はとりあえず様子を伺いました。
まずは部下たちを玉座の元へ集めてそのことを報告し、対応を伝え、解散です。
はじめて玉座に座ってみたものの、あまり居心地は良くなかったということだけは言っておきます。
「みなのもの、気づいているものも少なからずはおるとは思うが」
出来るだけ威厳が出る風な言葉を選んで部下たちに報告をしていきます。
いつもは上下関係とかもあまり気にせず、言葉遣いも適当なのでとてもむず痒いです。
「我々の統べるこの世界に」
あぁ、顔から火が出るほど恥ずかしくなってきました。
勇者が現れたと部下に伝達した時にどのような反応が返ってくるのかも少し不安です。
泣かれたり、恐怖を与えてしまうことは僕としても嫌なので。
「勇者が現れた」
もしも、部下が危険な目に遭うようなのならば、僕は勇者を全力で叩き潰します。
それが為せるくらいには僕は強いので。
「「「よっしゃー!勇者だ!」」」
部下から帰ってきた反応は予想外のものだった。
皆一様に歓喜し、喜びで涙を浮かべる者もいるほどに。
「おいおい、そんなに嬉しいのか」
「あったりまえですよ!魔王様とはじめての勇者狩りなんですよ!」
そうだそうだ!と言った肯定を背に部下が叫ぶ。
どうやら杞憂が過ぎたようだ。
ならば、僕はこういうしかないであろう。
「そうか。ならば今回の勇者討伐は死者をなしに乗り切るぞ!」
「「「おー!」」」
みんなの心が一つになるのを感じながら僕は続けます。
「では、今日はこれからパーティを開こう。決起集会だ!」
と、こんな感じではじめての勇者を迎えることになりました。