1.拝啓、僕の愚痴を聞いてください
こんにちは。
突然ですが今、僕は、魔王をやらせてもらっています。
元々の人間の僕が何故、魔王をやっているのかと言いますと、日本にはライトノベルという読み物がありますよね。読みやすくライトな文章の。
僕はとっても大好きですし、大多数の方は憧れますよね。
異世界に転生してみたり、ハーレムを築いてみたり。はたまた、超リア充主人公とか。
すんごく楽しそうですよね。僕もずっと憧れていました。
ーでも、この世界に来てみて全てが間違いだったことに気づかされました。
ある日、突然僕は死んでしまいました。
すると、自称神を名乗る者が現れてこう言うんです。
『あなたには私たちの守る世界を救っていただくために一度、死んでいただきました。あなたは英雄になるのです』
とか言い出すんですよ。
英雄になんて興味はないですし、そもそもそんな理由で僕は死んでしまったなんて意味がわかりませんよね。
文句の一つでも言えればよかったんですけど何故だか声を出すことが出来ず、言えなかったんです。
仕方がないと諦めて目の前にいる妙ちきりんな女、自称神とやらの話を聞くことにしたんです。
長々と説明されたことをザックリとまとめますと
1.とてつもない力があり、その力を使えば魔王を倒し、世界を救える
2.この世界は魔王によって危機に晒されています
3.世界を救った暁にはなんでも願いを一つ叶えましょう
こんな感じです。おかしいですよね。
まず、百歩譲って最初の文言は納得しましょう。問題はその後なんですよ。
こんなこと言ったら白状かもしれないですけど、魔王によって危機に晒された世界なんて僕には関係ないですし、僕が救う義理はないじゃないですか。
しかも救った暁には願いを叶えましょうと来ました。殺しておいて目標を達成しないと何にも僕にはいいことがないじゃないですか。
おかしくないですか?
でも、この目の前の女はそんな文句お構いなしに話を進めて、“それじゃあさよならー”とか言って僕は異世界に飛ばされてしまいました。
ここらへんで僕は、やっぱりライトノベルみたいな体験は傍観してるのが一番だなって改めて思わされました。
異世界に飛ばされた僕はとりあえず魔王討伐のために全力を尽くしました。
あれは確か転生から半年ほどで魔王を潰して英雄とやらになったのです。
願いを叶えましょうと言うのを叶えてもらう瞬間がやってきて僕は言ってやったんです。
魔王にしてくれ、と。
すると女は目を白黒させて仰天していましたが、なんでもと言った手前断れなかったようで、渋々僕を魔王にしました。でも、今度は僕を討伐するために勇者を送り込むと言われました。
こうして僕は魔王になって勇者を倒すことになったのです。
魔王になったと言っても悪さをしたりはせず、ただ普通に生活してます。
というか、不可侵?とかいうので人間界にちょっかいを出すのは禁止されてるんです。
だからただ普通に生活をしています。
でも、大変なことばっかりあるんですよね。
例えば、魔王城の維持費やら光熱費やら、部下たちのお給料のことだったり大変なんですよ。
お金を稼ぐために僕や部下で人間界に出稼ぎをしています。
飲食店だったり、野良魔獣の討伐や人々が対抗するために武器を下ろしたりしています。
しかし、それでも魔王っていうのは忌み嫌われる存在ではあるので、王城に攻めてきたりします。
城下町に入る前にそういう人間どもは排除するので、被害は少ないとは言え、怪我をした部下の保証をしてやったりしなきゃいけないので、やっぱりお金は足りないのです。
苦労は尽きません。
あ、ごめんなさい。愚痴ばっかりで。
でも、聞いていただいて少しだけスッキリしました。
ありがとうございます。
最後に一つだけ、ラノベのお決まりばかりなこの世界が嫌いなので転移してくる勇者をみんな叩きます。