明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。-03
まるでゲームの発売後におけるバランス崩壊みたいな会話が入ってしまったので、咳払いの後に本題へ戻る。
「とにかく、今後盗聴器などの犯罪行為は慎みなさい。犯罪に抵触さえしなければ私も大目に見るし、健全な付き合いであれば相沢もここまで悩むことも無いだろう」
「いやそれでも悩むんだけどさぁ……」
『武君は何に悩んでいるのです? ……もしかして、私と付き合う事が、そんなに不満ですか?』
「いや、そこは何度も言うけど不満じゃないんだよ! ……倫理的に二人の女子と同時に付き合う事が問題だとしてるだけで」
『倫理を捨てたら何だか私も無敵になれた気がします。もうそんな物捨てちゃいましょう』
「お前ホントにあの源だよな!?」
『というか武君、私は名前で呼んでますし、ここらで私の事も由美奈って呼んで下さい。……こ、ここ、恋人、でしょう……?』
「そんだけぶっ壊れてるくせに恋人って名乗る事に恥ずかしさを感じるなよ!」
『べ、別にいいでしょう!? 私だって初めて恋人が二人も出来て舞い上がってるんですっ! はい、私の名前は!?』
「ゆ……由美奈……?」
『そうです! 今後は由美奈と呼んでください! もしくはハニィでも姫でも、お好きな呼び方でおえっ』
「今オレにハニィとか姫って呼ばれた所を想像して吐き気催さなかった!? お前本当にオレの事好きなの!?」
『き、気のせいです……でも自分も呼ばれたいと思いませんので、名前でお願いしますです……』
「また話がズレてるので本題に戻すが、犯罪行為は慎みなさい。わかったら相沢へ謝罪をする事」
『申し訳ありません』
「いや、分かってくれるならいいんだ……」
『所で先ほどの同棲計画についてですが、先生ご一考お願いしますね』
「うーん……宜しい、考えておこう」
「いやそこは否定して!?」
相沢の言葉を最後に私と源は電話を切った。
息を吐き、私は顎に手を当てて「同棲計画か」と一度考える。
「真剣に考えるなよ……」
「生徒にご一考願うと頼まれたので、一応考えるだけだ。勿論NOだがな」
「NOの理由は?」
「ご両親から許可が出ないだろう?」
「そういう問題じゃないんだけどね!?」
と、そんな話をしていたらお腹が空いてきた。私は立ち上がって相沢へ提案をする。
「駅前のファーストフードでも行かないか? 奢るぞ」
「え、いいの?」
「生徒の悩み相談を受けている身だ。この位はな」
「じゃあ、お言葉に甘えよっかなぁ。ごちそうになります」
家を出て駅前まで歩く私達。そしてファーストフード店で適当なセットを二つ頼んで、並びでカウンター席に並んでいると――
ドサッと、買い物袋を落とした音が。
「亜理紗?」
「中村、こんな所で会うとは奇遇だな」
件の中村亜理紗がファーストフード店に入店して、お持ち帰り用の袋を落とした音だった。店員が何事かを確認しようとしたが、私が応対し問題ない事を伝える。
「どうした、買い物した食品を落とすなど」
袋を拾ってそれを渡すと、亜理紗はボロボロと涙を流しながら、相沢へ抱き着いた。
「武君付き合って一週間で浮気ぃ!? 先生もハーレムに加えたいなら言ってくれれば良かったのにぃっ!!」
「何でお前も由美奈もそっち方面へ話題をずらすの!?」
「というかそんな事を大声で叫ぶな中村!」
急遽店員に袋を貰った私が今食べようとしていたセットを乱雑に放り込んだ後に退店し、近くのベンチに亜理紗を座らせた。
「いいか、亜理紗」
「うん……」
グズグズと泣き続けている中村へ、相沢が落ち着かせるような優しい口調で語り掛ける。
「オレは、杉崎と、浮気なんか、してない」
「どういう会話だコレ」
「オレが知りたい」
だいぶ落ち着いてきた中村へ、事の顛末を話す。
ハーレムという倫理上問題がありそうな事に悩んだ相沢が、私に相談を持ち掛けて来たという事を述べると、彼女も納得した上で、買い物をしたハンバーガーを横並びで食べる事にした。
「でもさぁ、武君はそんなにハーレムがイヤ?」
「そりゃ、男の夢ではあるけど、現実で一番やっちゃダメな事筆頭じゃねぇかな?」
「私はそこまで悪とは思わんな。勿論内緒で二股や三股、浮気という事はやめた方が好ましい。だが全員を平等に愛し、皆もそれに納得しているという事ならば、ハーレムというモノもまた一興だ」
「そうだよぉ、私も由美奈ちゃんも付き合って、私も武君も付き合って、武君も由美奈ちゃんと付き合う。これ以上の解決策他に無いじゃん」
「誰の心も傷つかない方法とは言え、オレの胃と頭は締め付けられていくんだよなぁ……」
「良い胃薬を紹介しようか?」
「良い鎮痛剤も知ってるよ?」
「頭痛薬なら最近常用してるぜ!」
「常用はやめなさい相沢。胃が痛いのはそれが原因かもしれんぞ」
「え、マジで?」
「頭痛薬等の鎮痛剤は主にエヌセイズで、これは胃腸障害などの主な原因になる」
「でも色んな事悩むと頭痛くて……」
「そこまで悩み詰めているのか、私も反省がいるな」
「うん、やっぱコレは私と由美奈ちゃんの二人できっちり癒してあげないとっ! 確かおっぱいには癒しの効果が」
「それ嬉しいけど悩みの一つなんだよなぁ……」




