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明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。-02

「三つ目……」


「もう想像も難しいが、聞こう」


「この間、家に帰ったら」


「ああ」


「母ちゃんが源と亜理紗の事で詰め寄ってきて、関係の説明を求められた……」


「……母君は、中村の事を知っている筈だ。源の事は?」


「一応去年同じクラスだったし、名前と姿は知ってた……けど、所謂ハーレムって所が引っかかったらしくて……」


「それは、まぁ……そうだろうなぁ……」



 相沢武の母である相沢静さんの事は、私も知っている。


 勿論お子さんの担当教師という事もあるが、単純に一度学外でお茶をして、その時に色々とお話をしたのだ。あの時は拗れた。



「どう説明したのだ?」


「何て説明すれば良いのか分かんなくて、二股じゃないって事だけ強調した……」


「そもそも何で母君は二人とお前の関係を知っているんだ? お前が自分から話したわけでもなかろう?」


「この間、源が家に来たらしい」


「……な、なにをしに?」


「分かんない……けど、オレにプレゼントって、コレをくれたらしいんだけど……」



 相沢がカバンの中から一個のプラモデルを取り出した。組み立て済みのプラモデルは、有名な機動戦士だ。



「ほう、素組だが良い完成度じゃないか」


「あ、それはオレも感心した。ランナー跡の処理とか上手いなぁって、翌日やり方教えてくれってお願いしたレベル」


「だが何か」



 持ち上げた瞬間、中から小さな音がした。


私はイヤな予感がよぎり、急ぎ自身の部屋にあるデザインナイフを持ってきて、相沢と作成したはずの源に「すまない」とだけ謝罪をした後、プラモデルの胴体にある繋目にデザインナイフを入れた。


 組み立て後のプラモデルを再びパーツへ戻す際は、何か鋭利なモノでこじ開けるしかない。


 傷がつかないように慎重を心掛け、そっと分解すると――


中には、小さな機械が入っていた。



「……杉崎、ナニコレ」


「恐らく……小型盗聴器だ」


「何それ怖い」


「しかも給電式ではなく充電式を選んでいる所から、度々お前の家に出入りする気満々だぞこれは……」



 盗聴器には有線式と無線式が存在する他、所謂録音形式と傍受形式の二つも存在する。


 今回の場合は小型の無線式かつ傍受形式を採用しているが、電池はリチウムイオン電池による充電式だ。


 例えば電源タップに盗聴器を仕掛けて給電等も同時に行うタイプも存在するが、電源が急に増えている事による発見などもあり得るから、仕掛けやすく発見もされにくい小型を選択したのかも知れない。



「あー、源。聞こえていたら担任・杉崎の携帯電話へ連絡しなさい。流石にこれは犯罪だ」



 それだけ言葉を吹き込んだ後に、私は小型盗聴器とPCをUSB接続し、音声データの録音が無いかどうかだけを確認する。


 どうやら小型ゆえにメモリは無いらしく、あくまで音声を通信するだけのシステムだ。


 電源を切り、一度バラしたプラモデルを再度組み立て、相沢に返却する。


 機動戦士に盗聴器仕掛けるとか、相沢の趣味に付け込んだ手法な上、母君に挨拶をして話題をプレゼントからゴタゴタに移行させ、発見させにくくする手法でもあるな、コレ。周到過ぎる。



「相沢、すまない。源の暴走は正直に言えば、私の想像力不足だ」


「いや、謝んないでくれ……こんなの想像できる方がおかしいし」



 と、そこで私のスマホに電話が。生徒の連絡先も一応知り得ているし、源もスマホを持っているので、彼女からの連絡という事がすぐに分かった。



「もしもし」


『何で武君が先生の家にいるんですか?』


「お前たちの事で相談があるとな」


『ねぇ武君聞こえていますよね? どうして私や亜理紗さんじゃなくて先生に相談するんです? そう、もしかして武君は先生の事も好きで、ハーレムに先生を加えようとしているんです? そうならそうと言ってくれればいいのに。私も少々独占欲が強い女ですが、武君が認めた女性ならそうと分かれば』


「ひえ……っ」


「魅力的な提案だが、今日はそうではない。相沢が怯えるから少し熱を下げろ。そもそもこの電話はお前を叱る為の物だ」



 一応、電話番号同士の通話ではなくパケット通信を用いたネット通話であることを確認する。生徒の通話代金が高くなる要因は出来るだけ避けたい。



「源、お前がどれだけの愛を相沢へ語るのも、私は良いと思っている。けれどこう言う変化球みたいな愛情を向けるのはやめなさい」


『盗聴器の事です?』


「その通り。というかどこで仕入れたこんな物」


『この間亜理紗さんとデートした時に電気街へ行きまして』


「ほう」


『亜理紗さんと「武君って自宅でどんな独り言するのかな?」「気になりますね」という話になりまして』


「どういう独り言をしていた?」


『ここ二日ほどは「あー」とか「うー」とか唸っている声しか聞こえませんでした。体調でも悪いのでしょうか?』


「九割近くお前たちの事で悩んでいるんだと思うが」


「その通り……」


『うう、でもこうしないと武君の事をよく知れないというか……もういっその事同棲でもできればいいのですが……あ、先生の家って大きかったですよね? もう私達四人でハーレム同棲しませんか?』


「ヤバいな相沢、源ってここまでぶっ壊れ性能のキャラだっけ?」


「真面目な奴のタガが外れると一番怖いって実感させられるよなぁ……」

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